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ストーリー

レオナルド・ダ・ビンチ よみがえる幻の名画

イタリア・ルネサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ビンチがキリストを描いた油絵「サルバトール・ムンディ(救世主)」。作品は長らく行方不明になっていたが、2011年にニューヨークで発見され、ロンドンのナショナルギャラリーでの展示が話題を呼んだ。
ダ・ビンチの絵画が新たに発見されたのは、20世紀初頭以来。100年に1度の大事件だ。その作品価値は、およそ160億円にのぼるという。
番組では、ダ・ビンチの生涯をたどりながら、「モナ・リザ」や「最後の晩餐」など、彼の代表作をわかりやすく解説。多くの作品が未完に終わった理由や、創作の秘密を探っていく。そして、長い間、贋作(がんさく)として個人のコレクションに埋もれていた「サルバトール・ムンディ」が、どのようにして本物のダ・ビンチの作品と鑑定されるまでに至ったのか、その謎に迫る。
神秘のベールに包まれたルネサンス期最大の巨匠の素顔が、今、解き明かされる。

2011年、ニューヨークでダ・ビンチの幻の絵画が発見された。長い間、行方不明とされていた「サルバトール・ムンディ(救世主)」。右手で天を指さし、左手に水晶玉を持つキリスト像だ。果たして絵は本物なのか? ダ・ビンチの作品の中に隠された手がかりを探るため、番組では世界各地を巡りながら、彼の足跡をたどっていく。
まず訪れたのは、イタリアのフィレンツェ。初期の宗教画「東方三博士の礼拝」は生命力に満ちた野心作だが、未完で終わっている。若い頃からダ・ビンチは作品を途中で投げ出すことで有名だったのだ。
ポーランドにある「白貂(しろてん)を抱く貴婦人」は肖像画の傑作。描かれた手の皮膚の下には骨や筋肉や腱までもが表現されており、ダ・ビンチが人体の構造を科学的に捉えていたことがうかがえる。
彼がミラノで描いた巨大壁画「最後の晩餐」は劣化が激しく、オリジナルの20パーセントしか残っていない。壁画は通常、壁のしっくいが乾かないうちに素早く描かなければならないが、ダ・ビンチは乾いたしっくいの上に油絵の具で描いたためだ。
ダ・ビンチは仕事がゆっくりで作品をなかなか完成させなかった。その理由を、ロンドンのナショナルギャラリーで「岩窟の聖母」の修復作業を行った修復家はこう語る。「ダ・ビンチは常に表現の可能性を探っていたため、彼の絵にはあちこちに修正の跡が見て取れる。」
パリのルーブル美術館にある「モナ・リザ」のミステリアスな微笑みは、ダ・ビンチの優れた技術が生み出したもの。色を薄く塗り重ねていく手法により幻想的な光を表現しているのだ。
これらダ・ビンチ特有の筆遣いは、ニューヨークで発見された「サルバトール・ムンディ」に共通するものだった。さらに赤外線を使った鑑定で、下絵に試行錯誤の跡が見つかり、作品が本物である可能性は決定づけられた。こうしてダ・ビンチ幻の名画がよみがえることとなったのだ。