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ストーリー

大自然の神秘 氷山の謎に迫る! 前編 氷山の誕生

 海洋を移動する氷山は、大きいもので重さ200億トン、高さは数十階建てビルほどにも及ぶ。こうした巨大な氷山は、どのようにして生まれ、消滅していくのか。その謎に挑む前編・後編。
前編は、巨大氷山が誕生する仕組みを解明する。氷河学者や物理学者、水中カメラマンなどの専門家が集まった調査チームが、北半球の氷山の95%を作り出すというグリーンランドに赴き、大規模な「ストア氷河」を観測。この氷河がどのように氷山となるのかを明らかにするため、彼らは氷河の流れる速さを測定し、湖から流れ出る水の動きを追う。いつ崩れるともわからない不安定な氷の崖や洞窟での作業は命懸けだ。しかし科学者たちは、最新の機器や新たな方法を使い、これまで詳しく知られていなかった氷山誕生のメカニズムを説き明かしていく。

氷山はどのようにして生まれるのか? その謎を解明するため、氷河学者や物理学者、水中カメラマンなどさまざまな分野の専門家で構成された調査チームは、グリーンランドの「ストア氷河」に向かった。北半球に浮かぶ氷山の95%は、グリーンランドでつくられる。中でも大規模な「ストア氷河」は、その河口が幅8kmもの氷の崖になっている。その崖から巨大な氷の塊が海に崩れ落ち、氷山が生まれるのだ。調査チームはその様子を観察できる場所にベースキャンプを張った。氷河学者のアラン・ハバード博士は、まず氷河がどれくらいの速さで動いているのかを測定するため、ヘリコプターで氷河の先端に降り立ち、計器とカメラを設置する。
ストア氷河は40億トンもの巨大な氷の塊。それがなぜ動くのであろうか? 春になると、氷河の上流では溶けた氷によって青い湖ができる。物理学者のヘレン・チェアスキ博士は、その湖の水が氷の下に流れ出し氷河を動かしていると考えている。それを検証するため、湖の中にカメラを設置した。
調査チームが氷の崖の大きさを測定すると、水面下には、海上に出ている部分の4倍もの氷の壁があることがわかった。その下部はえぐれている。観測の結果、青い湖の水量は、オリンピックプールの2000個分あり、この水が、巨大なストア氷河を動かしていることも明らかになった。また、氷河の移動速度は、1日25m。水面下の氷河がえぐれているのは、その周辺の海水温度が比較的温かいためである。
青い湖の溶けた水が潤滑剤(じゅんかつざい)となって氷河を動かし、温かい海水が氷の崖の水面下を削る。その崖が崩れる原因はそれだけではなかった。調査チームは、青い湖で巨大な横穴を発見。水の一部は水平に移動し、氷の崖を解かして海へ流れ出ていた。こうして崖は崩れ、巨大な氷の塊が海に落ち、氷山となるのだ。 最終日、チームは、滞在期間で最大の氷の崩壊を観測。巨大な氷山が生まれる瞬間を見た。