世界の名画 ~美の殿堂への招待~

  • トップページ
  • バックナンバー

ストーリー

早熟の天才 エゴン・シーレ ウィーン・レオポルト美術館

番組名

20世紀初頭、オーストリアの首都ウィーンは建築ラッシュに湧いた世紀末が過ぎ去り、閉塞感に覆われていました。そんな中、ひとりの天才少年が現われます。エゴン・シーレ。やがて二十世紀最高のデッサン力を持つ画家と評されることになる実力派です。
そんな彼が描いていったのは、極端なまでに肉体をデフォルメした自画像や扇情的な裸婦像、死や背徳などをテーマにした過激な絵画の数々です。時には観るものの心を逆撫でするそれらの作品は、一方では共感や懐かしさを呼び起こします。何故でしょうか?
エゴン・シーレは1906年、名門ウィーン美術アカデミーに史上最年少の16歳で合格します。アカデミーでは教授陣と対立し散々な成績を残しますが、世紀末ウィーンの巨匠クリムトに才能を認められ、その支援のもと、19歳の若さで画家として歩み始めます。
最初シーレはクリムトに強く影響された作品を制作します。しかし二人の作品には根本的な違いがありました。クリムトが官能的な絵画で生を礼賛したのに対して、シーレの作品は死の影に覆われていたのです。それに気が付いたシーレは、クリムトを尊敬しつつも、独自の絵画を追求していくことになります。21歳の時、シーレは制作に専念するためにウィーンを出ます。チェスキー・クルムロフ、ノイエンバッハと小さく美しい町を巡るその脇には、ヴァリーという17歳になるモデルの姿がありました。ウィーンでなら問題にならなかったはずの二人の同棲生活は、保守的な田舎町では大スキャンダルに発展します。やがてシーレの逮捕・投獄という思わぬ事態を招くことになるのです。
番組では、エゴン・シーレ最大のコレクションを持つウィーンのレオポルト美術館、生まれ故郷トゥルン、制作の舞台となった世界遺産の町チェスキー・クルムロフなど、シーレゆかりの地を紹介。わずか28歳で夭逝した早熟の天才の軌跡をたどります。