世界の名画 ~美の殿堂への招待~

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ストーリー

歴史に翻弄された幻のコレクション モネ・ロダン 国立西洋美術館

番組名

印象派の巨匠モネが秘蔵していた、自信作の数々。近代彫刻の父ロダンの代表作が揃う、充実した作品群。海外でもなかなか観ることのできない質の高い作品を、いつでも鑑賞できる場所が日本にあります。東京、上野の国立西洋美術館です。
この美術館の礎を築いたのは、川崎造船所(現川崎重工業)初代社長の松方幸次郎。明治の元勲、松方正義の三男です。
美術とは無縁の道を歩いてきた松方幸次郎は、第一次世界大戦中、商用で赴いたロンドンで突然美術品の収集を始めます。それは自分自身のためではなく、日本で西洋美術を学ぶ若者達を思ってのことでした。当時の日本では、技術を学ぶことはできても、本場ヨーロッパで描かれた油絵を鑑る機会はほとんど皆無で。留学したくてもできない貧しい若者達のために、松方は美術品を買い集めて持ち帰ろうとしたのです。
松方の絵画収集の舞台となったのは、主にロンドンとパリです。時には画廊に飾られていた絵をまとめて購入するなど、その豪快な買いっぷりで瞬く間に画商達の注目を浴びる存在になりました。またパリでは、当時、開館に向けて準備を進めていたロダン美術館と接触。資金面での支援と引き換えに、ロダンの代表的なブロンズ作品をコレクションに加えます。さらに、80歳を越えてなお制作活動を続けていた巨匠モネを訪問。画家から直接、作品を譲ってもらうことに成功するのです。こうして加わった近代美術を代表する二大巨匠ロダンとモネの作品群は、コレクションの大きな魅力となります。
松方が作品を収拾したのは、1916年から1926年頃にかけての10年間。しかしその短い間に購入した西洋美術の作品は、およそ2千点も上りました。当時としては世界最大級の規模です。
しかし二十世紀初頭という激動の時代が、松方の夢を阻みます。歴史に翻弄され、松方コレクションは数奇な運命を辿ることになるのです。
国立西洋美術館を舞台に、開館に至る物語と、その後の歩みを見つめます。