文化遺産の旅
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京都・山科編



今回の訪問地は、京都。晩秋の空気に包まれた、山科の文化を紹介する。
山科は、滋賀県と京都市街の間に位置する町だ。琵琶湖から水を運ぶ水路も、トンネルを抜けて流れていく。明治時代に拓かれた琵琶湖疏水は、今なお健在。日本初の鉄筋コンクリート橋も残っている。文化財に指定された水路沿いは、自然公園のよう。心地よい散策路となっていた。
声の旅人・寺田農が向かったのは、山科神社。この辺りは、忠臣蔵で有名な大石内蔵助が身を潜めていた土地だ。赤穂城明け渡しから、吉良邸討ち入りまでのおよそ1年半。内蔵助は何を思って、山科の地で過ごしたのだろうか。
住いのあった岩屋寺や、大石神社へ。声の旅人は、内蔵助ゆかりの史跡を巡る。感じ取ったのは、人々の暖かい眼差しだ。忠臣蔵と大石内蔵助は、今も日本人の心の中に生き続けている、と寺田は受け止めた。
旅の後半は、勧修寺から始まる。美しい庭園も素晴らしいが、文化財の書院も見逃せない。
旅人は続いて、花山稲荷の火焚祭へ。地元の人々が集う素朴な火祭りだが、何とも言えない古都の風情に満ちている。静かに流れる時間と、荘厳な炎の対比が眩しい。山から吹き下ろす風は、冬の気配。京都山科の文化は、平安の昔から暦を繰り返しながら、現代へと続いていた。