ヨーロッパ路地裏紀行

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 [ ベルギー ]  ジャン・ヴォルデール通り ブリュッセル






ブリュッセルの中心の程近く、かつて旧市街を囲んでいた城壁の名残 ポルト・ドゥ・アルの目と鼻の先にある「ジャン・ヴォルデール通り」。 突き当りにあるこの地区を守る聖人をまつった教会が、通りのシンボルだ。 実はこの辺りは、120以上もの国の人々が行き交う、文化の交差点。 教会前広場の青空市場で買い物する人々を見ても、その顔触れは様々だ。 広場にはオープンカフェもたくさんあるから、ブリュッセル子にとって 太陽のもとで友達とおしゃべりができる、今話題の隠れ家になっている。

*ブラッセリ―経営、バート・レメンスさん(50歳)

教会前広場の片隅にあるバートのブラッセリ―。簡単な食事とビールやコーヒーなどの飲み物を出す店だが、彼の人柄とリーズナブルで美味しい料理が、たくさんの客を呼んでいる。看板メニューはラザニア。イタリア料理だが、ちょっとクリームがかかっているのがベルギー風。ベルギー映画に出ている俳優も、このラザニアを求めて毎日やって来る。バートがこの通りに店を構えたのは17年前のことだ。実はその頃、ここは今のようににぎやかな場所ではなかった。移民ばかりが住む、少し雰囲気の悪いところだったからだ。けれど、バートをはじめ、通りの住人の努力が実り、今のようなにぎやかな通りになった。この場所に店があったからこそ、今の自分はある…。バートは通りの変遷を知る、証人だ。

*元銀行員 ジョセフ・アラールさん(82歳)

通りのみんなからはジョー、と呼ばれている元銀行員。仕事はとっくの昔に引退して、自由になる時間はたっぷりあるから、通りの誰かが困っていれば、自分から声をかけて手伝うのは、いつものことだ。何せ、通りの若者とのおしゃべりが、一日の一番の楽しみだ。今はこの通りで、毎日楽しく暮らすジョー。でも、戦争が日常だった時代はいろいろあった。10歳のころにナチスドイツが運営するキャンプで5年間、ナチスの教育を受けていたのだ。終戦後には収容所で過ごしたり、後ろ指を指されることもあった。でも、それにもめげず、いい生活を送りたいと努力したからこそ、楽しく暮らせる今がある。