バックナンバー

#113

桂歌丸/初代林家三平

激動の昭和を生き抜き、日本が誇る伝統芸能を継承してきた落語家、桂歌丸と初代林家三平。2人の芸が輝いた裏には、筆舌に尽くせぬ努力と苦悩、さらに落語家生命を脅かす病魔との闘いがあった。歌丸、三平の生きざま、そして、その後一門を統率した林家こん平ら弟子の姿を通し、落語家の人生の神髄に迫る。
 
●落語家を志した少年(桂歌丸)
3歳で父を亡くし、母とも別れた歌丸は、遊郭を営む祖母と2人暮らしの幼少時代を送る。ラジオから流れてくる落語に救われ、15歳で落語家の道へ。
 
●父の死(林家三平)
父である七代目林家正蔵の他界により20代の半ば頃、三平は人生の岐路に立たされる。周りからは大きく期待されながら、三平は落語の高座で登場人物の名前を忘れたり、絶句するなど、失敗の連続だった。名門に生まれながらも後ろ盾の父が亡くなり、三平の落語家としての芸は…。
 
●落語家廃業(桂歌丸)
21歳の時、当時協会が抱えていた問題や師匠との芸風の違いから破門されてしまう。妻子を抱えた歌丸は、アルバイトや内職、化粧品の営業で糊口をしのぐ日々を送る。
 
●病と貧困にもがいた時代(林家三平)
結婚して程なく病に倒れ、1カ月入院。三平は入院費を捻出するために家や土地を売ることに…。内職をして夫を支えた妻・海老名香葉子は、まさしく落語一家の女将。内助の功で復帰した三平はお客を爆笑させようと新しい形を模索する。そして、常識を覆す芸で人気を爆発させていく。また、三平と妻・香葉子は、歌手デビュー前の藤圭子と、育ての親であった作詞家・石坂まさをなどとも親交を持っていた。三平夫婦の応援も得て、藤圭子と石坂まさをは、『新宿の女』『命預けます』などのヒット曲を連発する。そのほかにも広い知己で、妻・香葉子は、落語界のみならず多くの人々から信頼を得る女将のかがみとして一門の中心であり続けている。
 
●最後の挑戦(桂歌丸)
師匠に破門された後、仲間の後押しで復帰し、人気落語家へと成長した歌丸。しかし病魔が歌丸を襲う。晩年、病を押して挑んだのが、江戸時代に活躍した三遊亭圓朝の落語だった。優れたはなしながら複雑な作りに敬遠するはなし家が多い中、後世に残そうと最後の力を振り絞った。
 
●病魔からの復活(林家三平)
落語家として脂が乗る50代の半ば、脳出血で倒れ、左半身まひと言語障害に苦しむが、昭和の爆笑王は懸命のリハビリで奇跡の復活を果たす。しかし翌年に逝去。残された家族と、林家こん平ら弟子たちには落語界との過酷な戦いが待っていた。
 
病に倒れてもなお、命を削って高座に上がった桂歌丸と初代林家三平。最期まで笑いに賭け、落語家として生き抜いた歌丸と三平の生きざま、そして2人を支え続けた妻や家族、弟子の姿を通し、落語家の人生の神髄に迫る。