ストーリー

7月6日(水)放送  第1回:「嘘と女」

建設中の東京スカイツリーがそびえる下町。
隅田川署を定年退職したばかりの元刑事・猪瀬直也(60)(柴田恭兵)の自宅一軒家には、地元ヤクザの組長・大場義成(山田明郷)が直也の退職祝いのあいさつに訪れている。
「在任中はなにかとお世話になり、大場はどんなに感謝しても足りねえと思っておりやす」
巨大な鯛を土産において帰っていった大場を、妻・早季子(54)(浅田美代子)は苦々しい表情で見送った。
「警察やめたんだから、もう、あんな人とはつき合わないでよ」
定年後の再就職先が見つからないのは彼らとつき合ったからだ、と不満をあらわにする早季子に、直也は「バカ署長がおれを嫌ったからだ」と早季子ではなく娘の真紀(田丸麻紀)に向かって話す。
「お母さんに言いなさいよ」と真紀は夫婦の会話がほとんどないことを指摘。刑事時代の直也は仕事に没頭して家庭を顧みてこなかった。今更ながら、家の中に居場所がないことを感じる直也。そんな中、早季子はフラダンスのレッスンをするためさっさと外出してしまう。
「私、このうちでお母さんと二人で育ってきた気がする」という娘の言葉が直也の心に突き刺さった。真紀も一人暮らしのアパートへと帰っていく。

一人残された直也が物干し台でバットを振っていると、玄関で女性の声がする。
四十過ぎの女・今西素子(かたせ梨乃)。かつて何度も警察を訪れては「放火をした」「盗みをはたらいた」と、してもいない罪を告白する嘘つき女である。顔を見たとたん居間にUターンする直也だが、すでに手遅れ。「お話があるんです、刑事さん」と上がり込んでくる素子。「直也の常連客」だった素子に、警察署のだれかが直也の自宅を教えたのだろう。「俺に押しつけやがって」と苦虫をかみつぶす直也。
今回は「夫を殺した」と告白する素子。しかし直也はまともに相手にしない。その時、玄関から「いるか!」という男の声。元同僚の多田野刑事(58)(金田明夫)と新人刑事・佐伯(27)(中林大樹)の二人だ。勝手知ったる他人の家とばかりに上がり込んでくる多田野は、新人刑事の指導官をさせられたこと、妻に逃げられて妻のありがたみがわかったことなどを一方的に話すが、素子の顔をみると佐伯を残し帰ってしまう。佐伯は「夫をバットで殴り殺した」と言う素子にドギマギするが、「男とモメるたびに気持ちを持て余してウソをつきにくる"常連客"だ」と解説されてほっとする。

素子は直也に取り調べをしてくれと要求。仕方なく調書を取り始める直也。素子の話は夫に対する愚痴の数々だった。子供が不良同士のケンカで命を落とした時も夫は何もしてくれなかった。夫は自分や子供からどんどん逃げて行くのが許せなかった。素子は夫への憎しみをあらわにした。素子の取り乱した様を見た直也は、もしかしたら今度は本当に殺したのかもしれないと思い始め、佐伯に「ひょっとしたらホンボシかもしれない」とささやく。
そんな折、「祝いの酒を渡すのを忘れていた」と、暴力団組長の大場が子分の李(春川恭亮)とともに再びやってくる。ちらっと素子の顔を見た李は、素子が向かいのアパートに住んでいて、最近夫の姿が見えないことや夜遅くに素子が車で出かけていることなどを直也に話す。直也は佐伯に素子のアパートを突き止めろと指示する。

直也が素子の"取り調べ"を続けていると、早季子が戻ってくる。「人を殺したって言っているんだ」という直也に、「まだ捜査ゴッコやっているの」とあきれる早季子。その時直也の携帯に多田野から電話が入る。素子が深夜に大きな旅行カバンを車に乗せるのが目撃されていること、また昨日の深夜にバラバラにした遺体のようなものを川に投げ入れた女がいたこと、を伝える多田野。
直也が電話に出ている間、リビングで二人きりになった早季子と素子。夫婦生活について話し始めた素子が突然切れて「私はあいつを殺したのよ」と暴れだした。
さらに、女が川に何かを捨てたのと同じ時刻に、別の場所でカップルに食ってかかった女がいたこともわかる。どちらも素子に似た女だが、カップルを襲った女の方ならば、素子の疑いは薄まることになる。

依然として「夫を殺した」と言い続ける素子を前に、直也は早季子を巻き込んで"ある芝居"を打つことにする-。

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