パナソニック スペシャル 次世代への羅針盤 伊藤元重の経済×未来研究所

第20回放送テーマ
8月28日(土) 夜8:00~8:55

「観光立国ニッポン ~世界に誇るエリア戦略~」

「人が動けばお金が動く」観光産業の発展によって、観光地の安定的な集客が確保できれば、雇用の拡大、地域社会の活性化へと繋がる。キーワードは「インバウンド観光」これは外国人を呼び込む観光のことだ。国土交通省では、このインバウンド旅行(訪日外国人観光客の誘致)に注力しており、本年は1000万人の集客を目標に掲げている。しかし、2009年は新型インフルエンザの影響などもあり、訪日外国人は700万人弱に留まってしまった。鍵を握るのは、経済成長著しい中国人観光客。今年7月個人観光ビザの発給条件が緩和されたことにより、それまで160万世帯の富裕層に限られていた観光ビザが、一気に10倍、1600万世帯に交付されるようになった。このビジネスチャンスをものにするため、ユニークな戦略を練っている企業の様々なケースを紹介する。

「観光カリスマに学ぶ」新潟県村上市 村上商人会 吉川真嗣会長
国土交通省では、観光産業の発展に功績のあった人物100人を「観光カリスマ」に認定している。番組では、その一人、吉川さんの取り組みを取材。 観光資源に乏しい故郷を活性化させるため、町屋と呼ばれる昔ながらの暮らし向きそのものを観光客に公開するというユニークな企画で成功を収めた吉川さん。 しまいこまれていた古い人形や屏風を展示し、「町屋の人形巡り」「町屋の屏風祭り」といったイベントを定着させ、今や村上市には毎年10万人以上の観光客が訪れるようになった。 平成12年から累計で30億円の経済効果を上げていると言う。身の回りのものに光を当てることで、町は活気を取り戻すことが出来たのだ。

「観光カリスマに学ぶ」新潟県村上市 村上商人会 吉川真嗣会長

「近畿日本ツーリスト」
近畿日本ツーリストでは、インバウンド観光に対応するため、この7月、新たにプロジェクトチームを結成した。その戦略とは「観光メディカル」観光旅行と最先端医療とを融合させ、中国を初めとするアジア、中近東、ロシアの富裕層を獲得しようという狙いだ。

「近畿日本ツーリスト」

「マツモトキヨシ」
中国人観光客のみやげ物として、化粧品が人気を博している。マツモトキヨシでは、中国系金融機関の「銀聯(ギンレン)カード」を他社に先駆けて導入したため、中国人観光客が押し寄せている。 中国人スタッフを増員して客に対応すると共に、人気商品のリサーチを進めている。

「マツモトキヨシ」

「ユニスリー・システム」
ユニスリー・システムは、中国主要都市でクーポンサービスを行うVELO社と業務提携し、日本の商業施設で利用できるクーポンを、中国で発券するサービスを開始した。中国人観光客が日本に到着する前に、集客してしまおうという戦略である。既に2月からビックカメラがこのサービスを導入し、堅調な手応え。 ユニスリー・システムは、このビジネスモデルを活用し、地域商店街の活性化に繋げたいと考えている。

「ユニスリー・システム」

「はとバス」
はとバスは、昭和28年から外国人向けツアーを行い、日本の魅力をコンパクトに組み込む企画力で、好評を博している。4ヶ国の言語を選べる音声ガイドシステムを開発するなど、インバウンド観光は同社の主要なビジネス。リピーター獲得のために、観光ガイドの質を高めることこそが重要で、そのための教育が大切だと言う。

「はとバス」

取材先
・新潟県村上市 村上商人会 吉川真嗣会長
・近畿日本ツーリスト
・マツモトキヨシ
・ユニスリー・システム
・はとバス


ゲストコーナー
秋山 秀一 (東京成徳大学人文学部観光文化学科 教授)

ゲスト:秋山 秀一 (東京成徳大学人文学部観光文化学科 教授)
1950年東京・平井の生まれ。
東京教育大学大学院理学研究科修了。
日本旅行作家協会評議員、日本エッセイスト・クラブ会員。
東京成徳短期大学教授として観光関連の授業を担当。
2010年東京成徳大学人文学部観光文化学科・学科長に就任。
世界各地を実際に旅して周り、写真を撮り、エッセイを書き30年。海外渡航歴は150回を超え、訪れた国は80ヵ国以上。テレビ、ラジオにも出演し旅の話をする。
トラベルライター、写真家、旅のスペシャリストとして雑誌でも活躍中。NHKラジオ「旅に出ようよ」に準レギュラー。著書に『シネマで旅する世界の街』DAI-X出版、『マレーシア』三修社、『スイス道紀行』芦書房、『秋山秀一の世界の旅』八千代出版など多数。