パナソニック スペシャル 次世代への羅針盤 伊藤元重の経済×未来研究所

第22回放送テーマ
2月26日(土) 夜8:00~8:54

「ロングヒット商品の秘密」~時代を読む魅力作り~

時代が目まぐるしく移り変わっても、世代を超えて愛され続ける商品がある。
一過性のブームに終わらせないロングヒット商品の陰には魅力作りのための様々な戦略がある。

ケーススタディ(1)「変えない」
「KHK標準歯車/小原歯車工業」
高度成長時代、歯車は工作機械の設計に合わせ、殆どオーダーメイドするのが一般的だった。それを標準規格にするという大胆な試みを行ったのが、川口市の小原歯車工業である。1954年に着手し、製品化まで実に20年の歳月を費やした。国内シェアは60%。145品目9300種類もの標準歯車を在庫保有し、ニーズに応じて、30年前の歯車でもすぐに納入することができる。KHK標準歯車は業界スタンダードの地位を獲得し、現在20カ国・地域で採用されている。

「KHK標準歯車/小原歯車工業」

ケーススタディ(2)「変わる」
「のりたま/丸美屋食品工業」
朝食の定番、海苔と玉子を使ってふりかけが作れないか?「のりたま」の歴史は将に技術革新の歴史だった。卵は、ただ乾燥させただけでは固まらない。何度も試行錯誤した結果、溶き卵を漉し器に通して、雨だれ状になった所に熱風を吹きかける「熱風乾燥法」を開発した。更に、遠心力で飛び散らせながら乾燥させる「スプレードライ製法」(1970年)電子レンジの調理法を応用した「マイクロウェーブ製法」(1996年)を開発し、卵の粒子が大きなそぼろを作ることが可能になったため、見た目にも豪華でサクサクとした食感を実現した。米の消費量が落ち込んでいるにも関わらず、内食ブーム、弁当ブームの影響で、のりたまは着実に売り上げを伸ばしている。

「のりたま/丸美屋食品工業」

ケーススタディ(3)「変える」
「クレラップ/クレハ」
日本初の家庭用ラップフィルム「クレラップ」。冷蔵庫と電子レンジの普及により、なくてはならない必需品となった。ラップ市場は「クレラップ」と「サランラップ」がシェアを2分している。激しい価格競争の中で、売れ行きが伸び悩んだ時期に、クレハは、ユーザーから寄せられた声を商品に生かし、徹底的に使いやすさを追求することで差別化を図る戦略に出た。平成元年に「NEWクレラップ」としてブランドを一新して以来、「飛び出し防止機能」「プラスチック刃」「簡単分別」等、毎年、必ず何らかの改良を続けている。こうした取り組みは社会的評価も高く、グッドデザイン賞を4年連続6回も受賞している。

「クレラップ/クレハ」 「クレラップ/クレハ」 「クレラップ/クレハ」

取材先
・小原歯車工業
・丸美屋食品工業
・株式会社クレハ



ゲストコーナー
秋山 秀一 (東京成徳大学人文学部観光文化学科 教授)

ゲスト:米倉誠一郎 (一橋大学イノベーション研究センター 教授)
1953年 東京都生まれ。
一橋大学社会学部、経済大学卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士過程終了後、ハーバード大学にて歴史学の博士号を取得。
1995年 一橋大学商学部附属産業研究経営施設教授に就任。
1997年 一橋大学イノベーション研究センター教授に就任。
2004年 株式会社教育と探求社取締役(非常勤)に就任。
2008年 一橋大学イノベーション研究センター長に就任。
日本経済新聞社が、2001年より東京都内で開催している、高校生対象のイベント「日経エディケーションチャレンジ」の校長を務める。
著書に「経営革命の構造」岩波新書、「ネオITの革命」講談社、「脱カリスマ時代のリーダー論」NTT出版など多数。