BS朝日開局15周年特別企画 黒柳徹子のコドモノクニ ~夢を描いた芸術家たち~

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放送内容

渡部陽一がたどる写真家・土門拳
子どもたちの笑顔に託した思い

日本を代表する写真家・土門拳。リアリティーを追求し、社会の問題に鋭く迫る姿勢から"写真の鬼"と呼ばれた。そんな土門が生涯撮影のモチーフにしたのは、子どもたちの姿。彼はなぜ子どもを撮り続けたのか? そこにはどんな思いが込められていたのか? 戦場カメラマンの渡部陽一さんと探る。

1909年、山形県酒田市に生まれた土門拳。両親は共に出稼ぎで、祖父母に育てられ、貧しい幼少時代を過ごした。絵の才能を認められ、画家を目指すも挫折。職を転々としていたのを見かねた母が勧めたのが、写真館への弟子入りだった。しかし、土門は報道写真というものの存在を知ると、写真館を夜逃げ同然で辞めて出版社へ。プロの写真家として掲載された1枚は、七五三の子どもを写した1枚だった。

この頃、友人だったグラフィックデザイナー・亀倉雄策の紹介で、絵雑誌『コドモノクニ』にも写真を掲載。当時は、日中戦争が勃発した1937年。誌面の内容も軍の影響を色濃く受けたものだった。その後、土門は出版社から独立しフリーになるが、戦時中はフィルム等の資材が軍に抑えられ入手が困難だったため、やむを得ず軍の依頼で兵士の写真等を撮影し続けた。その反動からか、戦後は真実を伝えるリアリティー写真を追求。街にあふれた傷痍軍人や、戦災孤児たちなどの姿を切り取り、大きな反響を得た。

そして、この頃から熱心にカメラを向けるようになったのが、子どもたちの姿。背景にあったのは、次女・真菜の突然の事故死。土門は東京の下町をはじめ、さまざまな場所で真菜と同じ年頃の子どもたちを撮影した。また、広島では、戦後、長期にわたり報道規制されていた被害の現状を伝え、筑豊では炭鉱にあふれていた失業者たちの貧しい暮らしを撮影することで世に伝え、写真集『筑豊のこどもたち』は10万部の大ベストセラーを記録した。最も社会の影響を受けやすいのは子どもたち―。どんなに厳しい状況にあっても、ひたむきに遊び、生きる、そんな子どもたちの強い生命力を写真で伝えた。

【出演】渡部陽一 (戦場カメラマン)