にっぽん今昔道 江原啓之のちょっと道草
  • トップページ
  • バックナンバー
  • 心のご利益マップ
  • 掲示板

ストーリー

人情が溢れる御茶ノ水




「にっぽん今昔道」。今回の道草は、東京・お茶の水。
三代将軍・徳川家光がお茶会にこの地の湧水を使ったことが名の由来といわれています。

神田川が見える駅の近くから、道草スタート。
学生時代、よく通った町だという江原。神田川を見て、つい歌を口ずさんでしまうほど懐かしさにワクワクしている様子。

昔の記憶をたどって、景色を思い出しながら歩くお茶の水。
まず目に付いたのが「ビリヤード」と書かれた看板。
「淡路亭」は、1階がビリヤード台の製造作業場、2階がビリヤード競技場という珍しい造り。こちらで出会った職人歴60年という瀬谷武さんは、76歳の現役。もともとは家具会社に入社されたそうですが、ある日突然、ビリヤード台の製造会社に変わってしまったんだそうです。

昔は、ビリヤード場といえば、学生から旦那衆まで、様々な年代の人が集まった社交の場だったと瀬谷さんは振り返ります。
レトロなビリヤード台を目の前に「ここにいろんな方が集まってビリヤードを楽しんだんですねぇ」と、その様子を思い描く江原。

瀬谷さんに別れを告げて、次に見つけたのは、「笹巻けぬきすし」と書いてある不思議な看板です。
「ささまき?」、「ささまけ?」と正しい読み方がわからず、店に飛び込みます。

店内に入ると、女将・宇田川洋子さんが読み方を教えてくれました。
「笹巻けぬきすし」とは、冷蔵庫もない江戸時代、少しでも長く日持ちをさせるために作られたもの。
魚を塩漬けにした後、強めの酢でしめ、魚の骨を毛抜きでぬいて、さらに殺菌作用があるという笹の葉で巻く寿司なのです。
江戸時代の行楽弁当として重宝され楽しまれていたんだそうです。

こちらのお店はなんと元禄15年創業。このお寿司を作っていた店は、昔はたくさんあったそうですが…
今ではこちらの1軒のみになってしまったそうです。

女将の宇田川さんは、23年前、店主であるご主人を亡くされました。
ご主人は亡くなる時に「始まる時があれば辞める時もある」という言葉を女将さんに残しました。伝統ある重い看板を残された女将さんには、気が楽になる優しい言葉。江原も思いやりある言葉に心打たれました。

それでも看板をおろさず気丈に頑張る女将さんは、お客さんに愛され、今では共に働く息子さん夫婦にも愛されています…。
江原も心温まった道草でした。