にっぽん今昔道 江原啓之のちょっと道草
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東京都・「過程の大切さ守る浅草」




今回の道草は、東京の浅草。古くから江戸を代表する下町です。
月に1度は浅草にお参りに来ているという江原さん、まずは浅草寺の隣り浅草神社へ。
昔から変わらぬ境内の雰囲気に安らぎを感じます。

禰宜の矢野幸士さんから例祭についてお話を伺いました。
浅草神社の例祭は浅草の代名詞とも言える「三社祭」。
この“三社”とは浅草神社のご祭神のこと。

そもそもは1312年に船渡御(ふなとぎょ)を始めたことが起源といわれているそうで来年でちょうど700年を迎えます。歴史を重ねてきた由緒あるお祭りです。

しかし、数年前までは神輿に人が乗って練り歩くという不敬な事態がありました…。
一時は神社の神輿渡御を中止に…、その甲斐あってか現在は町全体で神を敬い例祭が行われているといいます。
矢野さんはその原因が、現代の家族形態にあるのでは?と考えているそうです。
それは、核家族が増えて日本のしきたりを伝える人が家庭からいなくなっているから…。
その為にも現代の神社には、祭り本来の意味をきちんと伝えるべき責任があると感じているそうです。

完成間近の東京スカイツリーを眺めながら歩いていると、神輿や太鼓が飾られた店を発見。
1861年創業の「宮本卯之助商店」です。
神輿や太鼓だけでなく、獅子頭など、祭式に関わるものが店内にずらりと並びます。

これらが店の裏にある工場で作られていると聞いた江原さん、見学させてもらうことに。
職人歴30年の山下佳一さんに案内して頂くと。
神輿の土台から漆塗り、金具装飾作りなどの細かい作業までがそれぞれの職人によって行われています。もちろん神輿の修理も全国から依頼されています。
作るだけでなく永く繕うことも役割なのです。

その為、山下さんは三社祭の当日も仕事だそうです。
途中で神輿が壊れた時にはその場で修理をしなければならないからです。
今まで神輿の厳かな格好よさにばかり憧れを抱いていたという江原さん。
何人もの職人の思いが込められた神輿を前に、次回の三社祭では、神輿の見方が変わりそうだと感じました。

何でも完成したものだけ、また結果だけを見ずにその過程を知る努力をしなければならないと感じた道草でした。