ボクらの地球

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放送内容

カメラが見つめた3年…
春夏秋冬 絶景百景
世界遺産 知床のすべて
~流氷が育んだ奇跡の楽園~

2015年1月、自然写真家の寺沢孝毅さんは知床を訪れた。今年も流氷がやってくる季節だ…ライフワークとして長年知床を撮り続けた寺沢さん。「ボクらの地球」のプロジェクトでも3年にわたって知床の四季・自然を追ってきた。この間にも知床の自然は少しずつ変化を続けている。春夏秋冬、知床の自然のすべてを紹介していく。

第1章 海の奇跡 冬から春 そして夏へ

海に入ると出くわすのは、流氷に追い立てられるようにやって来るトドの群れ。トドはこの時期、知床に多く集まるスケトウダラを追いかけて来ていた。スケトウダラだけではなく、カジカなどの魚も集まってくる。寺沢さんは昆布が群生する羅臼の海で、カジカやナメダンゴの産卵に遭遇。流氷が来る前の12月から1月、魚たちは、産卵をするために知床の海に集まってくるのだ。その卵は流氷が溶け出す春にかえる。そのころの知床の海は、1年で最も滋養に富んだ豊かな海だ。春になると、川でかえったサケ・マスの稚魚たちも一斉に川を下り、豊かな海を目指す。夜の知床の海に潜ると、たくさんの動物性プランクトンやオキアミなど、かえった小魚たちがたくさん見られる。そして、大量発生したオキアミや小魚を求めてハシボソミズナギドリの大群が知床の海に押し寄せる。オキアミを求めて姿を見せるのは、ミンククジラやツチクジラ、ネズミイルカやイシイルカ。流氷の時期、出産のために来たアザラシやその赤ちゃん、イシイルカの親子などを狙って、シャチの家族も現れる。知床の海は、まさに海洋生物の楽園。なぜ、知床の海はこんなにも豊かなのか? その理由は、北半球で最も南の海域に出現する流氷にあった。 夏の盛りには、マッコウクジラやザトウクジラも。第1章では流氷の役割をひもときながら、小魚の卵から海の食物連鎖の頂点・シャチや巨大鯨類まで、知床の海洋生態系のすべて紹介する。

第2章 陸の奇跡 夏から秋 そして冬へ

夏の終わり、寺沢さんが羅臼の小さな川の河口に潜ると、そこにはたくさんのカラフトマスが集まっていた。海を回遊してきたカラフトマスは子孫を残すために生まれ育った川に帰ってきたのだ。カラフトマスやサケの産卵のための遡上(そじょう)は、この時期から12月ごろまで続く。夏から秋、生き物たちはやがて迎える冬に備えて餌を求め、さらに活発に動き出す。海辺の河口付近でマスを探していたヒグマは、サケやマスの遡上に合わせて川にも姿を現した。ヒグマが食べ残したたくさんのサケやマスの亡きがらは、川辺に落ちたり、あるいはカラスやキツネなどによって森に運ばれる。その亡きがらが腐り、やがて森の滋養になり樹木を育て、エゾシカやエゾリスなどの餌となる。秋、樹木から葉が落ち、それが堆積し腐ると、光合成の材料となり森の土壌を肥沃(ひよく)にするのだ。さらに、川によって海にまで運ばれる落ち葉もある。秋の間、海に集められた落ち葉は微生物によって分解されて腐り、光合成の材料として堆積していく。知床は森が海岸線まで延びている類まれな地形。知床半島全体にある無数にある川の長さは短く、海と森をつなぐ重要な役割を担っている。それはまるで体の隅々に栄養を運ぶ血管のようでもある。血液ともいえる知床の一滴の水には、驚異の自然を育む奇跡の源が宿っていたのだ。 そして2015年1月…流氷が接岸した知床の海岸に立つ寺沢さん。知床の奇跡の自然が永久に続くことを祈りながら、知床の旅を終える。

寺沢孝毅(自然写真家)

1960年生まれ
北海道士別市出身

北海道天売島を拠点に海鳥たちの保護活動を勧めながら、その写真を撮り続けている。
その他、活動する取材地も広く、知床や西表島、海外では熱帯のボルネオからロシア、アラスカ、ノルウエー、カナダなど北極圏までに及び、希少な自然を記録している。
2009年 守りたい命のプロジェクト有限責任事業組合(LLP 守りたい命プロジェクト)を設立。失われゆく地球環境の今を写真で発表し、その保全活動に勤めている。