
昭和36年5月、中国広東省・広州駅。16年の時を越えて、ようやく再会する一組の夫婦がいた。愛新覚羅溥傑と、その妻・浩である。浩の胸には娘・慧生の遺骨が抱えられていた……。
遡ること25年前の昭和11年秋。名門・嵯峨侯爵家の長女・浩のもとへ、お見合いの話が舞い込んできた。相手は、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の弟・溥傑。満州国支配を企む関東軍による政略結婚だった。軍の強引なやり方に反発を覚えつつも、受け入れざるを得ない浩。その結婚は、日本と満州国を結ぶ結婚でもあった。
2人はこの出会いを運命だと信じ、結婚に踏み切る。だが幸せな生活は長くは続かず、日中戦争が激化し、2人は満州へ渡ることになった。満州では抗日運動が日に日に高まり、溥儀は次第に日本人への憎しみを募らせ、関東軍との仲も険悪なものになっていく。そして溥傑たちも、歴史の渦の中に、否応なく巻き込まれていき…。