SHISEIDO presents エコの作法
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2011年12月2日・16日放送 「継ぐ×着物」

それは、まるで奇跡としか言いようがありません。
自然の恵みをいっさいの無駄なく生かしきる日本人の知恵・・・着物。
美しく、ゆるやかなその形は、1000年以上ほとんど変わっていません。
一反の布から生まれるのはいつの時代も、どの世代の人をも優しく包む普遍的なかたち。
着物はその細長い生地を8つのパーツに裁断し、縫い合わせたもの。
だから、仕立てるときに生地を捨てるところがないのです。
そして、反物から生まれた着物は、ほどけばまた反物に戻る・・・
着物は、日本のエコロジー。
親から子、そして子から孫へと長い時を越え受け継がれ、洗えば、また美しい色を取り戻し・・・
寸法が変われば仕立てなおすことができ・・・
染め直せば、時代や好みに合わせてまた魅力を取り戻す・・・
人の一生よりも長く生きる着物には、美しさだけでなく、先人の驚くべき知恵も織りこまれていました。
何度でも甦る着物の命・・・
世界に誇る、日本のスローファッション
それは、失うにはあまりにも惜しい、この国の財産・・・
その大切さに気づき始めた若い世代もうまれています。
着物から日本人のエコの心をさぐります。

京都。
ここに、着物を普段着のファッションとして提案するお店があります。
アンティークや、リサイクルの着物を扱う「やゝ遊風」。
大正時代から昭和初期にかけて作られた着物は品質がよく、色や柄も豊富。
このお店も、そんな着物を扱っている人気店の一つ。
着物のお洒落も楽しいもの。
女性の美しさをいっそう際立たせる優美な着物。
日本人は、豊かな四季を抱き込んだ着物を長い間、身にまとってきたのです。

1300年以上の歴史を持つ着物。
いま、着物といわれているものはかつて、「小袖」と呼ばれていました。
形が変わらないからこそ自由な色彩とデザインで女性達を美しく彩った小袖。
めったに目にする事の出来ない、貴重な小袖が一同に会する展覧会を訪れました。
「特別展 京の小袖 デザインにみる日本のエレガンス」。
着物という小さな宇宙に数々の世界が描かれます。
着物は日本人の心の美を映していたのです。

江戸の粋な職人の魂は、今も着物づくりに引き継がれています。
東京・新宿区、創業90年を越える廣瀬染工場。
昔ながらの手染めにこだわり続ける数少ない工房。

江戸小紋は、型紙を使って、同じ模様を繰り返し染めていきます。
専門の職人が、手作業で彫り込んだ細かい柄は江戸小紋の真髄。
寸分の狂いもなく染めていく。技術と手間が必要です。

職人の技と心で生まれた小紋に、江戸の粋が宿ります。
江戸小紋の小さな柄。
その一つ一つから伝わってくるのは、日本人の奥ゆかしさなのかもしれません。

着物の町、京都・西陣。
「冨田屋」は、明治時代から続く呉服商です。
国の文化財でもある町家は、およそ130年前に建てられたもの。
暮らしの中に息づく日本文化を伝える美術館でもあります。
普段から着物を着ている女将の田中峰子さんに着物の良さを教えていただきました。

作った人、着た人の思いがどこかぬくもりとして宿る着物。
その想いを、未来に繋げていきたい・・・
ここでは日本文化を学ぶ海外からのインターンも受け入れています。
2ヶ月前、ポーランドからやってきたヨアンナさん。
日本文化を深く知りたいと、朝早くから夕方まで、家事や接客をすべて着物で行っています。
着物の裾は歩幅を自然と小さくし、太くしっかり巻かれた帯は背筋をのばし、袂があることで、見えない部分の自分の動きにも気を使う・・・
それは、着物の不自由さゆえに生まれる必要最小限の動きでした。
無駄なくシンプルに動くことで生まれる美しい所作。
着ることで、心もちまで教えてくれる着物。
無駄がない、シンプルな美しさ・・・
彼女が感じ取った日本の美意識はエコの心そのもの。

着物には“着る喜び”だけでなく、“直す喜び”もあるのを、ご存知ですか?
神奈川県・平塚市。
だるまや京染本店は、着物の手入れもしてくれる呉服屋さん。
着物の手入れには「洗い張り」と言う伝統的な洗い方があります。
着物を仕立てる中で、生地を無駄にしない日本人の知恵。
洗い張りをする事で、汚れだけでなく、この縫い目や折り目までも消え、自由な大きさの着物に仕立て直せるのです。
丹念に手入れされた反物は、まるでたった今、命を受けたような着物へと姿を変えるのです。
手入れをすることで、その美しさは、100年経っても変わらない。これも、着物のなせる技なのかもしれません。

京都・知恩院のそばにある、京誂え重松。
着物を大切にしながらおしゃれを楽しむ。
そんな心を 今に受け継ぐお店です。
このお店では、古くなった着物地や帯地を使い和の小物をあつらえてくれるのです。
いわば、着物の生まれ変わり。店長の藤川さんは、染めものを作る際の補正や、染み抜きを行う職人さん。
毎日着物と向き合いながら、知れば知るほどその素晴らしさに感心すると言います。

今、日本でも着物の魅力を再発見する人が増えています。
例えば、着物で銀座に出かけたり・・・

時を経て、思いを宿す着物。
絆を考えたい今だから、御正月は、着物に袖を通してみませんか?

やゝ游風

住所:〒600-8099 京都市下京区仏光寺通烏丸東入上柳町319-3
電話:075-341-8777
FAX:075-341-8777

特別展 京の小袖 デザインにみる日本のエレガンス

会期:2011年10月29日(土)~12月11日(日)
会場:京都府京都文化博物館
住所:〒604-8183 京都市中京区三条高倉
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_special.html

廣瀬染工場

住所:東京都新宿区中落合4-32-5
http://komonhirose.co.jp/

西陣 くらしの美術館 冨田屋

住所:〒602-8226 京都市上京区大宮通一条上ル
電話:075-432-6701
http://www.tondaya.co.jp/

だるまや京染本店

住所:〒254-0042 神奈川県平塚市明石町5-7
http://www.darumaya-gofuku.jp/

京誂え 重松

住所:京都市東山区東大路通四条上ル知恩院前
http://www.shige-matsu.jp/

株式会社 くるり

http://www.kimonoya-kururi.com/

シーラ・クリフ(Sheila Cliffe)

<プロフィール>
十文字学園女子大学 短期大学部文学科 英語英文専攻准教授。1980年代半ばに来日、母国イギリスで着物と日本文化について紹 介しており、その他の国でも 着物展示会を多数開催してる。