SHISEIDO presents エコの作法
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2012年1月13日・27日放送 「還す×炭」

「火」
それは文明の源。
人は「火」を使うことで文明と文化を手に入れました。
そして人は、「火」の燃え残りの中から、もう1つの「火」を見つけたのです。
それは、コントロールが難しい炎とは違って、
工夫次第でいくつものことを可能にしてくれる「魔法の火」でした。

「炭」

炭がもたらす火は、身体を芯から温めてくれます。
火力の加減が簡単にできる炭は、食べ物の幅を驚くほど広げました。
そして、炭を作ることは、私たち人間が汚してしまった自然環境を元に戻し、より豊かに育むことに繋がるのです。
炭の力を借りて作られた野菜。
炭には、農作物や家畜を健康に育てる効果が潜んでいる事も分かってきました。
水や空気を浄化する炭は、すべての自然を、本来の姿に還してくれます。
世界最古のバイオエネルギーでもある「炭」
今夜は、現代の私たちが忘れかけている「炭」のお話です。

東京・銀座。
日本一の繁華街で、ちょっと珍しいお店を見つけました。
店内に飾られているのは・・・備長炭のオブジェです。
備長炭の美しさに惚れ込んだオーナーが、調理だけに使うのはもったいないと始めた「見せる炭」のお店。
オブジェを置くだけで、空気中のニオイや水中の不純物を、炭が取り込んでくれます。

備長炭は1000℃以上の高温で焼かれるため炭素以外の成分が含まれていません。
炭素の結晶が、まるでダイヤモンドのように輝くのです。

大阪府豊能郡能勢町。
兵庫県との県境にあるこの地域では、千利休の時代から菊炭が作られてきました。
炭焼き師の小谷さんは、お父さんが始めた炭作りに魅せられ役所勤めをやめてこの道を選びました。
菊炭を焼くのは、木が成長を止める冬の間だけです。
一度に窯入れするクヌギはおよそ3トンから4トン。
これを1シーズンに15回ほど繰り返します。
なぜ炭を焼くことが、自然の循環に繋がるのでしょうか。
その答えは、クヌギという植物の性質にありました。
一度成長して大人になったクヌギは、切り株になっても、すぐに「ひこばえ」と呼ばれる新しい芽が生えてきます。
そして、およそ7年で、また菊炭に使える太さにまで成長します。
こうして一度成長したクヌギは、7年のサイクルで炭にすることができるようになります。
7年ごとに人の手で山を掃除することによって地面に日が当たるようになり、動物や昆虫、そして植物の生態系が維持されていくのです。
炭焼きのために木を切ることは、人が「収穫」という恵みを得ながら、里山を守る知恵だったのです。
美しさを追い求める炭焼き師の情熱。
それは同時に里山も再生させ、自然の姿に還します。

東京・大田区にある炭の専門店「増田屋」。
創業75年の老舗を切り盛りするのは代表の増田剛さんです。
ここでは様々な炭が売られています。
主に料理に使われる高級な炭、備長炭はとても堅いのが特徴。
備長炭には、火が点きにくい代わりに火力が強いという特徴があります。
風を送ると一気に熱くなることが、プロの料理人たちに人気がある理由です。
火が点きやすく、扱いやすいのが「なら炭」。
備長炭のような火力はありませんが、暖を取ったり、バーベキューを楽しむには十分です。
「竹炭」は部屋の空気清浄や除湿、冷蔵庫の鮮度保持、そして浄水にも力を発揮します。

農業の分野でも、炭の偉大な力が見直され始めています。
東京・あきる野市。
ここでは、炭を使ったクールベジタブル農法で野菜が育てられています。
化学肥料は一切使わず、土に撒くのは堆肥と炭だけ。
しっかりした野菜が育つのは、炭を撒くことで、畑の土が、栄養をたくさん含んだ土へと変化したから。
炭を顕微鏡でのぞくと無数の小さな穴があいています。
その穴が微生物を増やし、肥沃な土へと変化させる秘密だったのです。
さらに、この炭まき用の炭を作る事が、森の環境を整え、地球温暖化を抑制することにも貢献しています。

お花に囲まれたお店の一角にある、珈琲屋台の出茶屋を訪ねました。
店主の鶴巻麻由子さん。
おいしいコーヒーをいろいろな場所で提供したい…そんな想いから、6年前に屋台スタイルの出茶屋をオープン。
しかし、このお店、炭がなければ実現しませんでした。
「屋台は電気やガスを運べないので、炭火を思いついた。火鉢と鉄瓶でお湯を沸かすと口当たりがまろやかになっておいしい」と鶴巻さんは言います。
炭火のゆらぎと…
ゆるやかに湯気を出す鉄瓶…。
どこかゆったりとした時を刻むこの空間に人々はやすらぎを感じて集まってくるのです。
火鉢を囲むと人と人との距離が自然と縮まり、初めて会う人との間にも会話が生まれます。
炭にはそんな、人と人とを結びつける見えない力があるのかもしれません。
「炭」
それは、人の暮らしと自然をつなぎ、その両方を豊かにする日本人の知恵。
私たちが、再び炭の力に気づく時、そこには、暖かい未来が見えてくる気がします。

銀座紀州備長炭ショップ 掌

住所:東京都中央区銀座1-8-15
電話:03-3538-6556
http://www.tanagokoro.com/

能登さとやま創造館

電話:072-737-1902
http://www.satoyama-co.jp/index.html

増田屋

住所:東京都大田区南久が原2-5-3
電話:03-3755-3181
http://www.masudaya.co.jp/

神楽坂 kemuri(協力)

http://www.enrest.co.jp/kemuri/

THAT'S国産平飼い卵

http://www.daichi.or.jp/ttp/know/vol01/

※必ず、本田さんの卵が届くわけではありませんが、
   本田さんを中心に厳しい基準で生産された卵が届きます。

珈琲屋台 出茶屋

http://www.de-cha-ya.com/
営業時間:水曜 12:00~18:00

■大洋堂書店 軒先
住所:小金井市緑町1-1-23
営業時間:木曜 12:00~18:00

■オリーブ・ガーデン 軒先
住所:小金井市梶野町1-3-22
営業時間:金・雨天の土曜日 12:00~18:30

■dogdeco HOME ガレージ
住所:小金井市中町4-17-14
営業時間:土・日曜日 10:30~17:00

■小金井公園
住所:小金井市関野町1-13-1

※クリックすると拡大画像が開きます。

トム・ヴィンセント

<プロフィール>
1967年、イギリス生まれ。商品開発学部 経歴 株式会社トノループ・ネットワークス代表取締役。ロンドンの美術大学セントラルセイントマーティンズと、カリフォルニア大学サンタバーバラ卒業後、1989年に初来日。その後数年間、世界を旅し、1996年より日本永住。ソニー、富士フィルム、IBM、スワッチ、JTなど、世界企業のブランディングやキャンペーンウェブサイトを手がける。One Show、キャンヌサイバーライオン、ニューヨーク広告アワード、ウェッビーズなど様々な広告賞も受賞。