SHISEIDO presents エコの作法
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2012年3月9日・23日放送 「磨く×箸」

それは、たった2本の棒から成る、シンプルなデザイン。
その2つが1つとして使われた時、万能の力を発揮する道具。
切る。ほぐす。つまむ。
「いただきます」から「ごちそうさま」まで。
食を豊かにし、楽ませてくれるもの。
「箸」
お箸大国、ニッポン。
私達の文化は、箸に始まり、箸で終わります。
「磨く」
施されたのは、日本人の、磨かれた美意識。
さらに箸は、食材の味をも磨きます。
毎日使うものだからこそ、知っておきたい。
エコの心を秘めた、日本の箸の物語です。
そもそも箸がエコの代名詞となったのは、マイ箸を持ち歩くことからでした。
今、その箸にこだわる人が増えています。
銀座夏野。
2500種類もの、ありとあらゆる箸が揃う、国内随一の品ぞろえの箸専門店。
どんな料理にも合う、シンプルな木箸や、手彫りの味わいのある塗り箸、女性には朱色の箸…など、飽きのこないデザインのものが人気です。
自分の手にフィットする形と出会ったら、一生もの。
大切にしたい気持ちも増えてくるものです。

夏野の地下にある和食屋「花大根」は、塗り箸で料理を頂くことができるお店。
料理の味の決め手は箸にある!と店長の須藤さんはいいます。
箸はまさに、「食べない調味料」。
よい箸との出会いは、食事の時間をより幸せなものにしてくれるのです。

豊かな森に囲まれた、長野県・木曽町福島。
400年の歴史を誇る伝統工芸品、木曽漆器発祥の地です。

「漆」は、英語に訳すとJAPAN。
日本の文化や精神を受け継いできた箸を護るのに、漆ほどふさわしい素材はありません。
小林登さんは一本一本手作りにこだわって、工房を立ち上げました。
小林さんが使う材料も、箸作りに一番いいと思えたものだけです。
箸の主役となる、「木曽ひのき」。
古くから、高級な木材として使われるひのきの中でも、特に珍重されてきました。
その特徴は・・・木目が詰まっていてとても丈夫。
しかも腐りにくい。お箸には、ピッタリでした。
木曽ひのきの中で小林さんの箸になるのは、建築材を取り出した外側の部分。
外側は特に目が細かい。丈夫な証しです。
全てができあがるまでに費やす時間は、なんと1ヶ月以上。
20を越える作業を繰り返して完成する、「木曽ひのき」の漆塗り箸。
私達のカラダ作りと自然とを橋渡ししてくれる、エコな伝統工芸品です。

福井県小浜市。 国産の塗り箸の80%以上を作っている、箸の一大生産地です。
江戸時代にこの地で生まれた伝統的な技法、若狭塗。
貝殻などをはりつけ、色とりどりの漆を何層も塗り、丹念に研いで磨き上げた、最高級品です。
「箸のふるさと館」は、三千種類の箸が展示即売されている、箸の博物館。
ここ小浜でつくられている代表的な箸が、若狭塗箸。
若狭塗箸はその美しさから、箸の宝石とも言われています。
長い時間と手間がかかる若狭塗箸。
複雑な色模様になるのは、それだけ漆を重ねた証し。
一膳作るのにかかる時間は、3ヶ月から4カ月ほど。
そのデザインを決める一番大事な工程が「石研ぎ」。
幾重にも塗られた漆を研いで、模様を出すのです。
この時の力加減で美しさが決まり、1本として同じものがない箸が誕生します。
地道な技の結晶で生まれた、若狭塗箸。
置くだけで絵になる箸。
その美しさは名脇役として、食卓をより一層華やかなものにします。

一軒のレストラン、「洋膳・やまむら亭」。
アットホームな雰囲気の店内。
ここは、フレンチを地元の若狭塗のお箸で食べるお店です。
福井県は、海、山、里の幸の宝庫。
新鮮な食材をフレンチにして、箸で頂く。
地元でも人気のお店です。
箸の持つ食材への優しさは、食事をする人と人との空気を和らげるものと、どこか似ているのかもしれません。

日本アルプス、白山連峰に囲まれた、岐阜県・飛騨高山。
豊かな自然に抱かれたこの地は、日本を代表する森林都市とも言われています。
不要な木を切り、割り箸にすることで森を再生していました。
間伐は、森と山を守る、大切な作業。
葉に光が当たるように間引きをしなければ、山は痩せていってしまいます。
こうすることで、日光が降り注ぎ、健康な森へと生まれ変わるのです。
木を切ることで森を救い生まれる、私達の生活に欠かせない割り箸。
間伐材の残った部分から作る、割り箸。
江戸時代に生まれたとされる割り箸は、そもそも資源の再利用から誕生したものでした。
しかし、国内に流通している国産のものは、たったの2%。その見分け方はあるのでしょうか?
違いは、美しい木目と色。
漂白され白く、木目も全くないものとは、一目瞭然です。
その色、手触り、香りをも楽しめる国産の割り箸を使うことで、日本の森を救うのです。

食事をする時、ちょっと思い出してみてください。
私達は、箸の国に生きているのだと。
エコで万能な箸。
使いこなさくては、もったいないですね。

銀座夏野

http://www.e-ohashi.com/

花大根

住所:東京都中央区銀座6-7-4 銀座タカハシビル B1F
電話:03-3569-0953

うるし塗り工房 コバヤシ漆器店

住所:長野県木曽町新開上野2477
電話:0264-22-3024

箸のふるさと館

http://www.wakasa-hashi.com/

洋膳やまむら亭

http://www.yamamuratei.com/top/index.cgi

兵左衛門

http://www.hyozaemon.co.jp/

ワリバシカンパニー

http://warebashi.com/

日本箸文化協会 小倉朋子

http://totalfood.jp/

アーサー・ビナード

<プロフィール>
アメリカ合衆国、ミシガン州生まれの詩人・俳人、随筆家、翻訳家。20歳でヨーロッパへ渡り、ミラノでイタリア語を習得。ニューヨーク州コルゲート大学英米文学部を卒業。卒業論文を書く際に漢字・日本語に興味を持ち、1990年6月に単身来日。来日後、通っていた日本語学校で教材として使用された小熊秀雄の童話『焼かれた魚』を英訳した事をきっかけに、日本語での詩作、翻訳を始める。現在は活動の幅をエッセイ、絵本、ラジオパーソナリティなどに広げており、全国各地で講演活動等も行っている。