SHISEIDO presents エコの作法
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バックナンバー

2012年10月5日・10月19日
「金沢×誘(いざな)う」

日本一の大名と言われた、前田家・加賀百万石のお膝元、「金沢」。
古き良き城下町の面影を残しながら新しい感性が交差する町並み。
繊細かつ大胆な、美しい手仕事が生み出した、豪華絢爛な伝統工芸。
江戸時代から培われた独自の景観や、伝統文化が、今も人々の暮らしに息づいています。
そこには、変わることなく流れ続ける、豊かな水の恵みがありました。
自然と調和しながら育まれた、加賀百万石の美。
いつの時代も変わらずに町を巡る恵みの水に誘われ、金沢の地を訪ねます。

石川県、金沢市。
江戸時代、諸大名の中でもっとも有力だった加賀藩の城下町として栄えました。
初代藩主は、かぶき者としても名を馳せた前田利家。
文化を愛した武将は、自らの町を美しく作り上げました。
戦災に遭わなかったこの町には、町家や細い路地など、
歴史的風情のある景色が今も、ほぼそのまま残されています。
町並みだけでなく文化や工芸も多く継承されています。
幕府から謀反の疑いをかけられないように歴代藩主たちが、
財力を武力ではなく文化に注いできたことで、先人たちは粋を極めたのです。

そんな金沢の由来をご存知ですか?
かつて農夫が山芋の根についた砂金を洗ったとされる場所、「金洗いの沢」。
そこから、「金沢」という地名が生まれたと言われています。
金沢の伝統と文化は「沢」すなわち水が支えていたのです。
金沢には、城郭を挟む形で2つの川が流れています。
町の西側を流れるのは、犀川。そして町の東側に流れるのが、浅野川。
この2本の川から、町を囲むように張り巡らされている用水路の数はなんと、55本にものぼります。

心安らぐ水のせせらぎ。その水に誘われ、訪れたい場所があります。
金沢城に隣接する、日本三名園のひとつ特別名勝「兼六園」。
庭園の東、山崎山のふもとにある池。
奥の洞窟から、ゆるやかな水が流れていました。
一番高台にあるこの場所から、水は曲線を描いて、美しい景観を生みだしていきます。
庭園に流れるこの豊かな水も、用水を利用したものでした。

国内生産のほとんどを占める金沢の金箔。
17世紀末、江戸幕府による金銀箔類の統制で箔作りが禁止された後も、
金沢の職人たちは隠し打ちを続けてきたことで技術を継承してきました。
ここまで金箔の生産が盛んになったのは理由があります。
藩の財力を文化に注いだこと。そしてもうひとつは、金箔の出来を左右する、箔を打つための紙。
かつて箔打ちの紙を作るのに必要だったのが浅野川の水。
ワラの灰汁、柿渋、卵白などを水に混ぜて、和紙を浸します。
すると、石鹸にも似た成分で表面はなめらかに。
さらに、和紙に含まれる独特の粘りと柔らかみを、引き出していきます。
地道な作業を続けること、およそ半年。オウトツがまったくない、
良質な紙が生まれるのです。軟らかい水が流れる金沢だからこそ発達した金箔の技術と文化。
水の恵みから生まれた、百万石の文化です。

水が育んだ金沢のもうひとつの魅力、食文化。
地元の風土に育まれた、加賀野菜をはじめとする里の恵み。
豊かな食の恵みは、長い時の中で洗練され、
やがて、京料理と並ぶ繊細で美味な加賀料理となりました。
加賀料理は、きらびやかな九谷焼や加賀蒔絵、輪島漆器。
この地が生んだ美しい器と共に、目と舌で味わうものだといいます。
たとえば、加賀料理を代表する治部煮。
小麦粉をまぶした鴨肉と、お麩、ゆり根や金時草などの季節の野菜をだしで煮込み濃いとろみをつけたもの。
これを盛るのは、専用の治部椀。具があんに沈んでしまわないよう、
普通の椀よりも、口が広く浅く作られているのです。
品良く、見た目に美しい、細やかな心配りがあふれます。

金沢は、和菓子でも有名な町。
初代藩主、前田利家が千利休に師事して以来、茶道をたしなむ文化がこの地には根付きました。
京都、松江と並ぶ日本三大茶所として今でも一年を通じて多くの茶会が開かれます。
そして、お茶とともに発展したのが、和菓子。
金沢で人気を誇る、吉はし菓子所。店頭販売をしない完全注文制のお店です。
シンプルで上品な味は、金沢の名だたる茶事には欠かせない、といわれています。
その味を支えるのは、厳選した素材と金沢のおいしい水でした。
店主の吉橋さんは、注文を受けると茶会ごとに打ち合わせをし、
その茶席にあわせた味やデザインを考えるといいます。
一期一会のおもてなしに、神経を研ぎすませる。小さなお菓子に職人のこころと技が秘められていました。

武家屋敷跡 野村家

TEL:076-221-3553
http://www.nomurake.com

兼六園

問合せ先:石川県金沢城・兼六園管理事務所
TEL:076-234-3800
http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/index.html

箔座ひかり蔵

住所:金沢市東山1-13-18
TEL:076-251-8930
http://www.hakuza.co.jp/company/shop02.html

soil/株式会社イスルギ

http://soil-isurugi.jp/

大友楼

住所:石川県金沢市尾山町2-27
TEL:076-221-0305

久連波

住所:石川県金沢市東山1-24-3
TEL:076-253-9080

吉はし菓子所

住所:石川県金沢市東山2-2-2
TEL:076-252-2634

アラン ウエスト


<プロフィール>
1962年生まれ。アメリカワシントンD.C.出身。1982年来日。
米国の美術大学を卒業後、1990年東京藝術大学大学院日本画科入学。
以来、金箔、銀箔を駆使した豪華絢爛な琳派の伝統と狩野派の筆法を受け継ぎながら、現代的かつ独創的な感性で自然を表現している。屏風、掛け軸、壁画、襖絵のほか、着物や陶磁などの絵付けも手掛ける。
会社や個人からの制作依頼を受けながら意欲的に独自の美の世界を開拓。
草月会館、醍醐寺霊宝館、米国スミソニアン博物館、ニューヨーク ジャパンソサイエティ、パリ日本文化館など、日本国内外で個展多数。