SHISEIDO presents エコの作法
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2013年5月10日・5月24日・10月18日放送
「秘める×鎌倉」 

古都、鎌倉…。
そこは、貴族の時代から、武士の時代へ…。
日本の歴史が大きく動いた、動乱の舞台でした。
南は穏やかな相模湾、周囲の三方を山に囲まれている鎌倉には、独特の景観があります。
潮風と山風が吹き交わす、武士の都を訪ねましょう。

いまから、およそ800年余り前。
源頼朝は、ここ鎌倉に本格的な武家政権を打ち立てました。
京都から遠く離れた鎌倉は、新たな時代を築く上でも、好ましかったのです。
そして何よりも攻撃を防ぎやすい地形に恵まれていました。
山を削り、切り拓いて創り上げた道、「切り通し」こそ、鎌倉を守る要でした。
この地には、鎌倉七口と呼ばれる、代表的な七つの古い街道が残っています。
名越切通しには武士の生きるための知恵が息づいています。
道のところどころに、大きな石が埋め込まれていました。
馬に乗り、鎌倉に侵入しようとする敵を置石が阻んだといいます。
狭いトコロでは道幅90センチ。これもまた、大群の攻撃を防ぐ工夫でした。
切り通しの上からは、耐えず敵の動きを監視し、時には真下に向けて、矢を放ったと云います。
幕府によって拓かれた朝比奈切り通しは、塩などの食糧を運ぶ、大切な流通の道でもありました。人々が行き交った当時の姿を、そのままにとどめています。
鎌倉の切り通しは、幕府の生命線であり、同時に、防衛の要衝でもあったのです。

瑞泉寺は、鎌倉時代の終わり、庭造りの名人としても名高い、夢窓疎石によって建てられました。
希代の作庭家、夢窓疎石が創り上げた庭は、境内の、最も奥まった場所に広がっています。
鎌倉期で唯一と云われる、この庭はむき出しの岩肌を巧みに活かし、
他には余り見られない風情を醸していました。映しているのは、禅の心だそうです。つまり、引き算の庭…。
庭の約束事とされる、池や滝などの全てが、岩の姿だけで表現されています。
臨済宗の禅僧だった夢窓疎石…鎌倉時代は、禅の文化が花開いた時期でした。
朝廷を向こうに回し、新時代を築こうとした武士の心映え…その精神的な支柱が、禅でした。
建長寺は京都にも先駆けて誕生した、日本で初めての、禅専門道場。
建長寺で生まれた、鎌倉ならではの精進料理を楽しめるお店を訪ねました。
「鉢の木」。
ご自慢は、けんちん汁です。
建長寺の修行僧が作っていたから、昔は建長汁…とも云われていたそうです。
食材を一切無駄にすることなく、全て使い切ること…
けんちん汁には、先人の知恵と工夫が詰まっていました。
禅宗は、日々の生活こそが修業であると説きます。
食をおろそかにせず、作る、頂く…その全てが、禅の心に通じるのだそうです。

円覚寺は、建長寺と同じように、禅僧、無学租元を宋から招き、
北条時宗によって創建された寺です
若くして執権の職に就いた時宗は、元寇の戦没者を追悼し、
不安な世相を生きのびる術として、禅の教えを積極的に取り入れたと云います。
円覚寺では、毎週、一般の人々を対象にした座禅会が催されています。
末法の世、武士の間で広まった禅は、時代は違えど、不安感を抱える現代もまた、禅を乞う人たちが増えているそうです。
坐禅は、へその下の丹田を意識し、深く静かな呼吸を心がけます。
身体と心が呼吸で結ばれ、渾然一体となる経験…といいます。

武家社会を代表する文化、流鏑馬。
鎌倉時代より続く流派の一つ、小笠原流は、
将軍家代々に仕え、武術の指南役として、重用され、
その教育は礼儀作法にも及びました。
明治以降は本業を別に持ち、余暇を利用して、
有志の人々に弓術や馬術、礼儀作法などを伝えています。
当時の武士にとって、弓は、命を守る道具であり、
己自身を映す鏡だったと云います。
小笠原流礼法が重んじるのは歩く、立つ、座る…といった、日常の基本動作。
武士は、こうした動きを通して、肉体と精神を磨いたそうです。

先人たちの祈りを伝える遺跡が鎌倉には数多く点在しています。
山肌に無数の穴が口を開けた一画が。
鎌倉時代に作られた、「やぐら」と呼ばれるお墓です。
埋葬されているのは僧侶や武士…。
中でも、比較的身分が高かった人々だそうです。
やぐらは死者を供養し、納骨する場所でした。 このような形式の墓が鎌倉だけで4千近くあるそうです。
多くのやぐらに、五輪塔が彫り込まれていました。
鎌倉の山々には無数の魂が眠っているのです。

鶴岡八幡宮

神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31
TEL:0467-22-0315
http://www.hachimangu.or.jp

高徳院(鎌倉大仏)

神奈川県鎌倉市長谷4-2-28
TEL:0467-22-0703
http://www.kotoku-in.jp

建長寺

神奈川県鎌倉市山ノ内8番地
TEL:0467-22-0981
http://www.kenchoji.com

円覚寺

神奈川県鎌倉市山ノ内409
TEL:0467-22-0478
http://www.engakuji.or.jp

寿福寺

鎌倉市扇ガ谷1-17-7
0467-22-6607

浄智寺

神奈川県鎌倉市山ノ内1402
TEL:0467-22-3943

瑞泉寺

鎌倉市二階堂710
TEL:0467-22-1191
http://www.kamakura-zuisenji.or.jp

鎌倉 鉢の木

神奈川県鎌倉市山ノ内350
TEL:0467-23-3723
http://www.hachinoki.co.jp/

小笠原流弓馬術

http://www.ogasawara-ryu.gr.jp

ピーター・ミラーさん


<プロフィール>
アメリカペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ、コロンビア大卒。
米国、東京で経営コンサルタントの仕事に携わってきた。
1991年に、ビジネスの第一線から美術界へ転身。
紫外線を活用した銅版画制作に専心するため、鎌倉に拠点を移し、浄明寺にアトリエ『鎌倉版画コレクション』を構えた。
これまでアメリカや日本だけでなく、ドイツ、イギリス、ロシア、フィンランドなどで展覧会を開催するなど世界的にも活躍。
ワシントンにあるスミソニアン博物館のアジア館にも作品が収蔵されている。
ミラーさんの作品は、19世紀のヨーロッパで発明されたフォトグラヴュールという銅版画の技法を用いている。
さらに現代の日本の印刷技法に墨絵様式を取り入れ、日本の海、山、寺院仏閣、庭園をいかに表現するかを制作の基本としている。