SHISEIDO presents エコの作法
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2014年5月16日放送
「合わせる×和菓子」 

元々、茶席の亭主の注文に合わせて作られた和菓子はもてなしの心を味と色や形で表現した食べる芸術作品。二十四節気の全てにその季節を表現する美しいお菓子があります。年中行事とも結びついて一年の節目節目に無くてはならないものになりました。都の洗練された文化に育った京菓子は見た目も味も繊細。茶の湯と共に禅の影響を受けた和菓子の材料は全て植物由来。豆からは餡が作られ、その餡を使って練り切りなどの生菓子の生地が生まれました。餡から生まれた生地は職人の魔法の手によってどんな美しさも表現してしまいます。

栄養面からもお勧めという和菓子。豆に砂糖、米や小麦の粉、寒天や葛があれば大抵の物は作れます。動物性の素材がないのが特徴。餡に砂糖が入ったのは室町時代。けれどまだ珍しくあの千利休も茶菓子には干し柿を好みました。この干し柿の甘さが後の茶菓子の甘さの基準となっているのだとか。

江戸時代の創業。260年の歴史を誇る京菓子の老舗・俵屋吉富。茶席を彩る上生菓子の多くは季節の風景を象った細工菓子。季節や文学にちなんだ名前をつけるのが和菓子の特徴。複雑な形が可能になったのは「練り切り」や「こなし」といった形を自在に操れる生地が生まれたからです。俵屋吉富に入って29年目の久保さん。デザインも自ら考えます。作るのはもう少しで開きそうな牡丹の花。生地の「こなし」は白餡と餅粉や小麦粉を練って蒸したもの。「こなし」というたった一つの生地で茶席の趣向に合わせたどんな風景でも再現できる…。茶と和菓子の文化はそんな職人の手に支えられています。

茶道教室・芳心会。主宰する木村宗慎さん。今日は宗慎さんのお手前でお茶とお菓子を頂きます。お菓子は「卯の花巻き」。五月の新緑に映える白い卯の花を象っています。懐紙に自分の分を一つ取って頂きます。お菓子を味わった後にお茶を頂きます。お菓子の甘味を消すためにお茶を飲むのではなくそれぞれの味わいをより感じながら頂きます。今回出されたお菓子は器にも亭主の趣向が凝らされています。季節の和菓子にどんな器を合わせるかも亭主の腕の見せどころ。京都を中心に全国からこれぞと思うお菓子を選び景色の合った器に盛りつけます。和菓子が表すのは風景だけではありません。部屋の設えにいたるまで全てがご馳走。季節に合わせ客に合わせて菓子と器を合わせる。そんなもてなしこそ日本の茶の心。

初夏の海風が心地よい季節。ここ鎌倉の一軒家で和菓子教室が行われていました。教えて下さるのは創作和菓子作家の御園井さん。彼女の作る和菓子はまるで美しい工芸品のよう。 海外の人々からも高く評価されています。こうした美しい和菓子を家庭でも作ってみたいと最近習いに来る人が増えているんだそうです。この日の課題は練り切りで作る「さくら」。 まずは生地を作っていきます。市販の白玉粉に砂糖を加えて加熱すると求肥ができます。この求肥と白あんを練って出来るのが生菓子の生地となる「練りきり」です。ほんのりした桜色にするために少しずつ混ぜて微妙な色合いを作ります。中に入れる餡も桜。刻んだ桜の葉を白あんに練り込んであります。自分でやってみて初めて職人さんの凄さがわかります。いよいよ桜の花の形を作って行きます。職人さんもやっていた技に挑戦。使っているのは「茶こし」です。中心に黄色い花芯を添えたら…思い思いの桜が完成しました。和菓子を作ることで季節の細やかな変化に敏感になったという生徒さん達。「おいしい」だけではない喜びが和菓子にはあります。

日本で唯一の金平糖専門店、緑寿庵清水。1847年の創業当時から金平糖のみを作り続けています。菓物の果汁を加えた金平糖が自慢。以前は果汁を足すと形にならなかったそうですが先代のご主人がその技術を開発しました。金平糖のイガは日本独特の形。一体どうやって作られているんでしょうか…。工房には斜めに添え付けられた釜が4つ。釜は常にゆっくりと回っています。まずは釜にイラ粉(金平糖の核となる原料)を入れ水分が蒸発するまで煎っていきます。ここから金平糖の完成までなんと2週間。あとはイラ粉に糖蜜をかけてコテでかき混ぜるという至ってシンプルな作業。しかし1日にたったの1ミリ程度しか大きくなりません。糖蜜をかけた部分が釜に触れ、水分が蒸発して固まると出っ張りが出来さらに糖蜜がつきやすくなります。その糖蜜の層が突起となりイガになっていくのだとか。イガの部分を壊すこと無く全てをほぼ同じ大きさに揃えるのは至難の業。一人前になるまでに20年の修行が必要だといいます。初代の頃から一子相伝で引き継がれてきた金平糖作りの技。釜が電動でなかった時代からずっとこの店の職人が大切にしているものがあります。「音」です。完成に向け金平糖の声が高くなるほうが良い物ができるそうです。職人は金平糖の声に耳をそばだて金平糖の気持ちに合わせて釜の状態を調節します。

東京の昔ながらの商店街。そこに和菓子の「今」を追い求める職人がいます。置いてある商品はたった2種類。ハーブや抹茶の入った落雁とドライフルーツの入った羊羹だけです。しかしこのお菓子が今大人気。イチゴとイチジクのドライフルーツ、それにクルミを入れた黒砂糖の羊羹。ちょっと洋風な感じの羊羹ですがこれも立派な和菓子です。海外の人にも愛される彼らの和菓子の基礎は老舗和菓子店20年かけて培ったもの。その技術を活かして今の暮らしに合ったお菓子を作りたいといいます。店頭に並べるのは2つだけですが実はお客さんからのオーダーでその人のための世界でたった一つのお菓子を作っています。もともと和菓子は茶席での亭主の趣向に合わせて作られたもの。そんな和菓子本来の姿を継承したいと考えました。早速エリカさんも和菓子をオーダーしました。テーマは「バランスのとれた美しい和菓子」。材料調達に向かったのは地元商店街の自然食品のお店。使うのは全部で5種類。ゴマと生姜の他、リンゴのような甘い香りのカモミールに酸味のあるハイビスカス、蚕の食べる桑の葉。まず上新粉と砂糖を混ぜたものの中に五種類の素材を別々に入れそれを蒸します。こうしてできる生地が「ういろう」です。ういろうでできた『5色のひよこ』。森羅万象を表す五行思想に因んだ色。それぞれの色は木火土金水を表しています。まさに宇宙のバランス。カモミールや黒ゴマ、生姜も身体のバランスを整えてくれる食材です。

もてなす相手のことを想いながら自然の美しさを見つめその声を聞く。和菓子とは自然に寄り添い心を合わせたところに生まれる甘くて優しいご馳走なのです。

俵屋吉富

〒602-0029
京都府京都市上京区室町通上立売上ル
TEL:075-432-2211
URL:http://www.kyogashi.co.jp/

芳心会

〒603-8166
京都市北区紫野上御所田町11-1
URL:http://www.hoshinkai.jp/

株式会社 手毬

〒247-0062
神奈川県鎌倉市山ノ内1418-ロ
TEL:0467-33-4525
URL:http://www.temari.info/#id1

緑寿庵清水

〒606-8301
京都市左京区吉田泉殿町38番地の2
TEL:075-771-0755
URL:http://www.konpeito.co.jp/

wagashi asobi TOKYO

〒145-0064
東京都大田区上池台1-31-1-101
TEL:03-3748-3539
URL:http://wagashi-asobi.com/

エリカ・アンギャルさん


<プロフィール>
1969年オーストラリア・シドニー生まれ。シドニー工科大学卒業、健康科学学士。2004年からミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして世界一の美女を目指すファイナリストたちに「美しくなる食生活」を指南。栄養学、薬理学、生理学など予防医学における幅広い専門知識を駆使し、"内側からより美しく、心も身体もすこやかに輝く"をテーマに、ハッピーな毎日のための食とライフスタイルを発信している。