映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
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五十三候「小雨ときどきふる(こさめ ときどきふる)」
五十四候「楓蔦黄ばむ(もみじつた きばむ)」

二十四節気の暦は霜降!

「小雨ときどきふる(こさめ ときどきふる)」
小雨が思いがけず降っては止む季節。しとしとと降り続く秋の雨は「秋時雨」といいますね。
「楓蔦黄ばむ(もみじつた きばむ)」
この「楓(もみじ)」とは紅葉のこと、いよいよ秋を象徴する風景が見られるようになりますね。今回の候では、初恋の日、きんき、紅葉、かわはぎ、弥五郎どんまつりなど、この季節の話題を楽しくお送りします。

10月30日は「初恋の日」です。なぜかというと、それを紐解くこんな詩があります。「まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり」で始まる、島崎藤村の代表作「初恋」。藤村の処女詩集である「若菜集」に収められた詩「初恋」。発表されたのが、1897年10月30日だった為、この日を初恋の日に、という事になったのです。

秋の味覚「きんき」。真っ赤な体と大きな目が特徴で、金目鯛に似ています。正式には「吉次」といい、その体の色が吉兆とされる朱赤色である為、吉事用に使われた為だといわれています。きんきは煮魚にすると美味しいですよね。「旨味のある魚でなければうまい煮魚は作れない」という言葉がありますが、きんきは、まさにその言葉にぴったりの魚ですね。

いよいよ紅葉・紅葉狩りのシーズンです。紅葉の名所と言われる青森の奥入瀬や栃木の日光、京都の社寺などは、毎年行楽客であふれています。紅葉をめでる習慣は、平安の頃から始まったそうです。現在の「狩り」というのは「草花を眺めること」ですが、平安時代には、実際に紅葉した木の枝を手で折り、手のひらにのせるという本当に狩ってしまう鑑賞方法もあったようです。

この時期「かわはぎ」が旬を迎えます。固くざらざらした皮ですが、実は簡単に剥がせることから、この名前が付いたのだそうです。また、和歌山では「バクチウオ」とも呼ばれているそうで、「皮がすぐ剥がれる」さまが「博打に負け、身ぐるみ剥がされる」さまを連想させるからなんだそうです。冬に備えて餌を多く摂り、肝臓が大きくなる為、こってりとしたキモが美味しい魚です。

11月になると、宮崎県北諸県郡山之口町、鹿児島県曽於市、宮崎県日南市飫肥の3か所で行われるお祭り「弥五郎どんまつり」。25反もの衣をまとった約4mの巨人「弥五郎どん」が各地を練り歩きます。大和朝廷の地方統治によって命を落とした隼人族の酋長・弥五郎の怨霊を恐れ、朝廷が全国で行わせた殺生を戒める儀式の名残だといいます。この弥五郎どん、「山に腰掛けて海で顔を洗った」、「足跡が谷や池になった」などの逸話が残る巨人伝説があります。