映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
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八候「桃始めてさく(もも はじめてさく)」

二十四節気の暦は啓蟄!

「桃始めてさく(もも はじめてさく)」
今回の候は、まさしく桃の花が咲き始める時期であることを表しています。「ひな祭り」は、本来この候の時期に行われていたようです。現在でも山形県庄内地方など、一部の地方ではこの頃から4月にかけて「ひな祭り」を祝う家庭も多いそうです。今回の候では、桃の花、つくし、たんぽぽ、さより、ヤマガラなど、この季節の話題を楽しくお送りします。

桃は、この時期になると文字通り桃色の綺麗な花を咲かせます。漢字の桃にある「兆」は、桃の実を二つに割った様子を表しており、「実が二つに割れる木」という意味です。また「もも」という語源には、一本の木から沢山の実がなる事から「百」の訓読みの「もも」があてられたといった説があります。品種として有名なのが、「源平桃(げんぺいもも)」です。赤と白の花が混じり合って咲く品種で、白い花は源氏の旗の色、赤い花は平家の旗の色に例えられ、「源平合戦」を思い起こす事から源平桃と名付けられたとされています。

河川敷や野原など至る所で見かける「つくし」は、なんと3億年も前から自生しているのだそうです。茎に巻きついた、茶色の輪っか状の葉は「袴(はかま)」とも呼ばれていますね。つくしという名前は、この袴の部分でそれぞれが繋がっている、継いでいるように見えたため「継ぐ子(つぐこ)」が転じて「つくし」となったという説があります。また、漢字で「土」の「筆」と書くのは、地中から顔を出した姿が筆に似ているからだそうです。

春の野原には、たんぽぽも姿を見せます。野原だけでなく街中のコンクリートの隙間からも顔を出す、非常に生命力の強い植物としても知られています。その根はなんと50センチ以上もあるそうです。江戸時代には、たんぽぽのことを「鼓草(つづみぐさ)」と呼んでおり、太鼓を叩く音「タン」や「ポポ」という擬音語が、たんぽぽの語源なのだそうです。

「さより」は、春に旬を迎える魚です。群れで泳ぐ習性から、沢山を意味する「さわ」と寄り集まるを意味する「ヨリ」が転じて、さよりとなったとされています。また、美しい外見とは裏腹に、腹を捌いて内臓を取り出すと、腹の中は真っ黒。この事から、「さよりのような女性」という言葉は「美人ではあるが腹黒い女性」の事を例えるものなのです。 これは、使い方に要注意ですね。

この時期、見かける野鳥に「ヤマガラ」がいます。漢字で書くと「山の雀」と書くように、主に山の中に住んでいる鳥です。また、学習能力が高いため「芸を仕込める鳥」としても有名です。江戸時代には「かるた取り」など様々な芸を披露し、人々を魅了したそうです。神社の境内などでも、ヤマガラにおみくじを引かせるという芸が昔はよく見られましたね。