映像歳時記 ~七十二候・旧暦が奏でる日本の美
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二十三候「紅花栄う」(べにばな さかう)

二十四節気の暦は小満!

「紅花栄う(べにばな さかう)」
紅花が赤と黄色が鮮やかな花を咲かせる頃を表した侯です。紅花の濃厚な色合いは、夏らしさを感じさせてくれます。今回の候は、紅花、梅雨、穴子、紫陽花、カタツムリなど、この季節の話題を楽しくお送りします。

紅花は、この時期にかけて花を咲かせます。咲き初めの頃は鮮やかな黄色で、成長するに従い徐々に赤色が増していきます。原産はエジプトといわれ、日本には、シルクロードを通って、6世紀末から7世紀の初めに伝わってきたといわれています。江戸時代頃からは、染料を取ることができる植物として用いられるようになっていきました。その後、山形県最上(もがみ)地方で大々的に栽培されるようになり、この地で作られる「最上ベニバナ」は、以前番組でも紹介した、徳島県で生産される「阿波の藍」と並んで、「江戸時代の二大染料」として知られるようになったそうです。

この時期、日本各地で雨の多い日が続きます。「梅雨入り」は、春の終わり、そして夏の到来を告げるものとされています。「梅雨」という名前の由来には、諸説ありますが、元々、中国ではカビの生えやすい時期に降る雨という事で、黴の雨で「黴雨(ばいう)」と呼んでいたそうです。これが日本に伝わった際、黴では印象が悪いため、同じ「ばい」という読みができ、季節的にも適していた「梅」を用いて、「梅雨」となったという説があります。そして、これを「つゆ」と呼ぶようになったのは、梅の実が熟し潰れる時期であることから、「潰ゆ(つゆ)」となったともいわれています。

梅雨時の今が旬の魚「穴子」には、「梅雨穴子 (つゆあなご)」という呼び名があります。江戸前を代表する魚で、脂の乗らないこの時期のものは、さっぱりと上品な味なので旬とされているのです。名前の由来は、アナゴの生活に由来しており、夜行性で日中は穴に隠れている事から、「穴子」という名が付けられたといいます。最も多く漁獲されているのが「真アナゴ」という種類で、東京湾羽田沖で捕れ、江戸時代から重宝されてきました。

雨によく合う花といえば、紫陽花(あじさい)ですね。咲き始めの頃は薄い黄緑色をしていますが、これは葉に含まれる葉緑体の色です。これが成長とともに分解されていく事で、赤や青といった色になっていくのです。日ごとその色を変化させていくという性質から、「七変化 (しちへんげ)」、「八仙花(はっせんか)」といった別名があります。また、藍色の花が集まるようにして咲く為に、「真(まこと)の藍色が集まったもの」で、「あづさい(集真藍)」という言葉から転じたという説があります。

カタツムリは、雨上がりの、まだ水滴の残る植物の葉の上でよく見られます。カタツムリの多くは乾燥に弱い為、湿気がある場所を好んで生息しています。また、カタツムリの事を「蝸牛」とも呼びますね。虫偏に渦と書くこの文字は、訓読みで、かたつむりと読みます。そこに牛と付くのは、カタツムリの頭の角が牛の角に似ているからであるとか、牛のようにのっそりと動くからといわれています。