放送番組審議会

BS朝日第61回 放送番組審議会議事録
BS朝日は、平成27年10月16日に、第61回放送番組審議会を開催しました。(2015.10.16)
開催日時 2015年10月16日(金)午後12時45分~午後2時20分
開催場所 BS朝日大会議室
出席者

近藤委員長
若林副委員長、近藤大博委員、中井委員、野村委員、水口委員、吉永委員、(玉生委員欠席)

 

【会社側】
菊地代表取締役社長、壁谷常務取締役、横山取締役、風間取締役相談役
森本常務執行役員編成制作局専任局長、藤川執行役員編成制作局長、上田編成制作部長、江野制作担当部長、
柿崎編成制作部プロデューサー、鈴木プロデューサー

 

(事務局)佐藤事務局長、根岸担当部長、北川ライツ・考査室員、堀同室員

 

議題

(1) 会社側より報告
(2) 2015年度上期(4月~9月)の番組種別の集計結果について
(3) 2015年10月改編について
(4) 前回課題番組「黒柳徹子のコドモノクニ~夢を描いた芸術家たち~」について報告
(5) 課題番組「新・にほん風景遺産~故郷を見つめなおそう~」講評
(6) 次回日程および課題番組について

講評

四季の映像を織り交ぜて見せており、美しい映像を楽しめた。
非常にコンパクトで分かりやすくまとまっていたため「見やすい」と感じた。
旅人として参加している3名はとても感じが良いが、登場の場面でもう少し詳しいプロフィールを見せてほしい。それぞれの旅人がどういう人で、なぜ、その土地を訪れるのかという面がさらに詳しく分かると良い。
いずれも、よく下調べして取材している印象を受けたが、旅人役の質問力が乏しく突っ込みが不足しているように感じた。歴史や文化の知識に基づいた問いかけがあまり見られなかった。
旅番組を楽しむ醍醐味は「旅人の主観」にある。それぞれの個性や味を前面に押し出し、主観をもっと出していくのがいいのではないか。例えば、島田雅彦さんが旅人だった小豆島の回では、同じ作家の内澤旬子さんが出演しており、作家同士の味のある会話を期待したが、たった2、3分の映像しかなく残念だった。また奥羽山脈の秘境の回も、明治時代の山菜屋や蕨農家と石丸さんとの絡み、地元の生活と旅人の主観をもっと出しても良かったのではないか。
地方の魅力は「方言(ことば)」にあると思う。「人」を探すのは難しいかもしれないが地元の方々を取り上げるといった深みが必要だと思う。
土地に伝わる歴史を辿りながら「今」を映すことに成功しているため、系列各局と共同で制作をしている強みが生かせていると感じた。実際に土地を訪れてみたいという気持ちにもなる。
系列各局の編集や構成に統一された方針はあるのか?
→プロデューサー回答:地元の持っているものはそれぞれ違うため、構成に決め事はない。
  柱となるメインテーマを決め、その柱に枝葉をつけていくというイメージで構成を考えている。
「2泊3日」というフォーマットを指定しているのであれば、さらに旅行を中心に据えたパッケージにしてはどうか。情報を盛り込み「旅の手帖」のように見せてほしい。番組の工程を実際に体験するのは少しハードかとも思ったが、元気に動けるうちは旅の参考にしたい。
「2泊3日」を旅の定型にしているようだが、1日目はどこに泊まったかわからない、などばらつきがある。また、食事の価格情報等も出した方がよいのではないか。
「漁の場面」は毎回のように同じパターンで出てくるため、少し飽きがくる。
とてもよく出来た旅番組だが、予定調和で面白みに欠ける。もう少し旅人の個性的な部分を引き出してほしい。旅のハプニング性やエキサイティングな面を見せてほしい。
番組の中で「地方創生」の芽がたくさん見られた。
「自然が育んだ人々の営み」が重要。その土地の規制の中で暮らすための工夫を上手く捉えていくことが大事だ。「地方創生」や地域社会の姿勢などが繋がってきていない。
旅行ガイド的なものでなく、番組タイトルにあるように「遺産」として、しっかりとした日常の生活風景や、自然と人を残していくことが主眼ではないのか。メッセージが伝わっていない。初めに伝えたいところを伝え、エンディングはしっかりと、番組からのメッセージを出してほしい。
以前訪れたことがある場所の知らない面を知った。土地の風景をうまく捉えているし、地方の味を上手に紹介していたと思う。
加藤千洋さんがナビゲーターをされていた「にほん風景遺産」と比較すると、視聴後の余韻には欠けるが、導入部分もエンディングもあっさりしていて見やすいと感じた。
CM前、画面の左下に「次は○○です」と出るテロップがよかった。見続けるモチベーションに繋がる。
エンディングテーマが番組の趣向と一致しておらず違和感があった。
映像は美しかったが、音楽に関しては改善すべき。BGMとしては「歌」を使う必要はないのではないか。詩やナレーションでも良い。強弱をつけるなど検討の余地がある。
旅人の心象風景は旅人自身のナレーションにできないか?ナレーションの表現の幅が出ると思う。
下平さやかアナウンサーのナレーションは、はっきりと聞きやすく、あたたかく、さわやかで好感がもてる。

■4年目の三陸 港町・気仙沼~甦る海と旬 誇り高き漁師たち~
(旅人:島田雅彦 2015/6/2 放送)
気仙沼の港町や料理の案内なのか、震災からの復興やそこで生きる人々を取り上げたいのか、分からなかった。テーマが絞りきれていないため、「なにを一番伝えたいのか」考え、毎回統一のメッセージを出すことが必要ではないか。
被災地の復興はまだまだ時間がかかるが、漁業は復活していることが分かった。 「男山の酒蔵のはなし」は別の番組でも何回か目にしているが、地元の局と一緒にやっているから こそ引き出せた面があると思う。
気仙沼では唐桑御殿、大漁半纏などにも足を延ばしており、ありきたりな旅番組とは違って一歩踏み込んだ見せ方ができている。

■北アルプスの水巡る郷 信州安曇野~残したい静けさ 美しさ~
(旅人:中本賢 2015/8/4放送)
「水」の話を扱った安曇野の回は、地元の人しか判らないことなど、とても丁寧に取材されていた。
山々の美しい風景、水不足や一揆の歴史を取り上げており、感銘を受けた。ドキュメンタリーとしても楽しめたし、自分自身がいかに物を知らないかということも分かったのでよかった。
水を巡る歴史は、もう少し分かりやすくまとまっていてもよかったが、暮らしを営む村人たちの力強さを感じ、我々自身が考えるきっかけとなった。
「アート」の要素がなかった。芸術と深く結びついている土地でもあるため、アートの視点で秘話を発掘してもよかったのではないか。
昔の人から今の人に繋いでいく、その重要な取り組みが感じられた。安曇野の米作りの農業法人のように、「地方創生」のテーマに沿って、将来に繋がるような地域で頑張る若い世代の人々を取り上げていくのが良いと思う。
アルプスの風景にも感動したが、食事や温泉の紹介はやや間が抜けてしまっていたので、考えてほしい。
象潟と安曇野の農業用水は日本の貴重な「農業遺産」と言ってもいいような内容だ。象潟に流れ込む鳥海山の冷たい水を「上郷温水路」で温度を上げる工夫、扇状地の水が地下に浸み込む前に農業用水としての流れを作る「拾ケ堰」の精緻な設計には、感心した。以前に象潟、安曇野に行った時に見逃していた遺産だったため、ぜひもう一度訪れてみたくなった。
安曇野の米作りの農業法人のように、「地方創生」のテーマに沿って、将来に繋がるような地域で頑張る若い世代の人々を取り上げていくのが良いと思う。昔の人から今の人に繋いでいく、その重要な取り組みが感じられた。

■山上の楽園 花の尾瀬~伝承の里 秘境・檜枝岐から歩く~
(旅人:石丸謙二郎 2015/9/29放送)
その地域に生きている人間が浮き彫りになるようで「子ども歌舞伎」は興味深かった。
桧枝岐村の信仰の場と村歌舞伎を取材している点は、番組の価値を高めていると思った。
尾瀬編は、他の番組に比べるとグラビア的ではなく、かなり焦点を絞った構成になっていた。期待を裏切らず、見終わった後に爽やかな気持ちになった。
「平家の落人物語」など、その土地に伝わる言い伝えや歴史をたどりながら現在の姿を映し出しているという点で、非常に興味深かった。

次回日程:第62回・1月22日(金)
◆課題番組:「歴史ミステリー 日本の城見聞録」