スタイルブック Blog

前向きに振り返る、あるいは後ろ向きで前進する

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以前、ナガオカケンメイさんの「60VISION」をスタイルブックで紹介した時に考えたことです(2007年9月29日、2008年10月4日)。その時のタイトルが「前向きに振り返る」。

60年代デザインの再評価というと、よく雑誌で特集されるような「レトロ」「レトロフューチャー」趣味と思われがちですが、ぼくたちには 60VISION の仕事はどうしてもそうは思えなかった。お話をうかがってやはり 60VISION は「前向きに振り返っている」のだと確信しました。

過去を振り返らずに未来は生まれない。これはもちろんスタイルブックの独創ではなく、昔から色々な人が言っていることです。未来とは前にあるのではない。我々は過去を振り返りながら後ろ向きで未来に向かっているのだ、という考え方です。ここには歴史に学ぶというような紋切り型の考えとはちょっと違うニュアンスがあるような気がします。

たとえば20世紀末のフォークカルチャーで最も重要な動きの一つ、ヒップホップ。これこそ前向きに振り返ったからこそ生まれた文化ではないでしょうか? JBやPファンクやサム&デイブやBBキングが当たり前のように家にあったから、そういう親の代が聞いていた音楽を若い世代が「発見」したからこそ、来るべくして来た活動という気がします。それ以前のロックやフォークだって同様です。かつて鮎川誠さんに「ビートルズでロックンロールに目覚めた後、R&Bやブルースを追求し始めた理由は?」ときいたところ「本当に好きだったら、さらに深く追いかけるのは当然でしょう」という答が返ってきました。

ひるがえって、ぼくたち日本の今の状況はどうでしょう? 未来をどこに探しているのか。横や上や斜めを見ていないでしょうか。

PS.
スタンフォード大学教授・ローレンス・レッシグが Free Culture で繰返し言っています。
「Creativity and innovation always builds on the past. 創造性や革新は常に過去を基に生まれる」(もちろん、この後レッシグは「過去はそうして生まれた創造や革新を支配しようとする」と話を続け、オープンソースの重要さを語るのですが)
yt

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