おそらく世界の国の数だけ、もしかしたら村の数だけあると思われるスープ。そのすべてに文化や風習が込められているのが面白い。
かつて、ある番組の取材で中国・雲南省に行った際の事。
日本人は私だけという撮影スタッフとともに夕食を食べる事になったのですが、訪れた少数民族の住む小さな村にはレストランはなし。
しかし、撮影にくる事を楽しみにしてきた村の人々は豪華な晩餐を用意してくれていました。レストランの代わりとなった場所は村の長老宅の庭。振る舞われた料理はその村の郷土料理。
そこで驚いたのがスープでした。
名産の筍と鶏のスープ。それを聞かされた時、「これは楽しみ」と期待しました。
ところが出てきたものは...
器には溢れんばかりに入れられた濁った汁。その汁の水面から鶏の頭が飛び出ている。しかも、私の方を向いている。
他のスタッフのスープには足や胸肉が入っていて首は入っていない。私のスープだけ様子がおかしい感じなのだ。
「なんですかコレは?」
そう私は尋ねました。
通訳を介して現地の人は笑いながら、こう答えてくれました。
「私たちの村では一番偉い人に頭を差し上げるのだ」と。
わざわざ日本から訪ねてきた僕はそう見られたらしい。
そう聞かされたら食べなければ。偏食のまるでない私にとって、そういったスープもそれほど苦にはならないのだが、長く煮込まれて肉も殆ど付いていない頭は食べ方が分からない。
「そのまま口の中に放り込め」
「!?」
「歯で噛み割って、中の脳みそだけ食べればいい」
「!!」
「元気になるから」
「・・・」
味は美味しかったです。
たしかに活力もわき、健康にもなりました。ただ驚いただけです。
郷に入っては郷に従え。とはよく言ったものです。その文化、風習に馴染むためはスープを飲むのが一番です。
スタイルブック
「皿の上の魂 〜世界のスープ〜」
2月6日(土)よる11時30分放送