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機械式時計はお買い得である

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 機械式時計は高価である。しかし、時計取材を重ねているうちにそれはとんでもない誤解だった事に気付く。高級と呼ばれる機械式時計は実に驚く程の時間と手間をかけて作られているからだ。

高級であればあるほど、効率を度外視して作られる。顧客が見る事もないネジや歯車を自分たちで作るのも、そのひとつ。

時を刻ませる、時を作るという作業は時計を身につける者の人生を作るという行いと同義であると高級時計メーカーは思っている。しかも、どの時計が刻む一秒は同じ筈なのに、彼らの作る一秒は尊いものとる。ゼンマイに蓄えられた力を少しずつ解きながらアンクル、ガンギ車を伝わってテンプに届く。テンプは往復運動をしながら、時間を作り出し、秒針を動かす。
 
シースルーバックから覗く各パーツの動きを見ていると、時間というものは重いものだった事に気付かされる。

さらに驚かされるのは彼らの作る時計は実に長命だということ。数年毎のオーバーホールをして、時計に愛情をかけてあげれば、何十年どころか100年以上動き続けてくれる。実際、時計メーカーは100年以上経ったものでも修理を受け付けてくれる。作る時計すべてが彼らの自信作であり、未来へ伝えていかなければいけないものだと信じているからだ。

そう考えると、乱暴ではあるが一年あたりの価格で見てみると、意外と現実味を帯びてくる気がする。勘違いかもしれないが。

スタイルブック
「天才たちの声が聞こえる 〜機械式時計〜」
2010年6月26日(土)よる11時30分

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