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#214

近代数寄者の造った美術空間
~東京・白金「畠山記念館」~

今回は東京都港区白金台に建つ「畠山記念館」を訪ねます。畠山記念館は荏原製作所の創業者・畠山一清によって造られました。彼は「即翁」と号した茶人としても知られ、“最後世代の近代数寄者”と言われています。およそ3千坪の広大な敷地内に足を踏み入れると、そこは目を疑うような別世界。生い茂る木々は、ここが都心であることを忘れさせます。もともと当初の敷地は今よりさらに広く、そこには「般若苑」と名付けられた主屋が建てられていました。残念ながら現存していませんが、生前即翁が蒐集した美術品を展示するために建てた本館と、昭和4年から40年頃にかけて造られた5つの茶室が残されています。本館では、国宝6件、重要文化財33件を含む、およそ1300件にも及ぶ美術品を所蔵しています。内部には即翁ならではの工夫が盛り込まれ、単に美術品を展示するだけではなく、その鑑賞に適した環境をも作り出していました。5つの茶室はそれぞれ即翁の美意識を反映させた個性的なものばかりで、まさに茶室のワンダーランドといった趣です。最後世代の近代数寄者が残した美的空間。それは多くの美術品や茶室とともに、都心の住宅街、白金の地で生き続けています。

取材先情報

畠山記念館
東京都港区白金台2丁目20−12
TEL:03-3447-5787
交通:都営地下鉄高輪台駅から徒歩で5分
東京メトロ・都営地下鉄白金台駅から徒歩で10分
※現在長期休館中
 
※上記以外の情報については、公開出来ません。