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#244

日本画の巨匠が残した珠玉の数寄屋建築
~琵琶湖の畔 山元春挙「記恩寺 蘆花浅水荘」~

今回は滋賀県大津市に残る「記恩寺・蘆花浅水荘」を訪ねます。蘆花浅水荘は大正6年から昭和8年、明治から昭和期にかけて活躍した日本画家・山元春挙の別邸として琵琶湖の畔に建てられました。日本画に西洋画の技法を取り込んだ春挙の作風は、関西画壇の巨匠として高い評価を得ています。そんな春挙が造った蘆花浅水荘の敷地には、主屋と離れ、その他持仏堂や茶室などが点在し、その全てに春挙好みが反映されています。しかも離れに面した広い庭園は、かつて琵琶湖に直接つながっていたというから驚きます。裏千家の兜門を模した正門を潜ると、そこから先は山本春挙の美的世界。まず驚かされるのは玄関に置かれた瀬田の唐橋の親柱。この家に持ち込まれた骨董品を、玄関の照明に使っています。このような遊び心は邸内の至るところに散りばめられ、春挙の人となりを伺わせています。最大の見どころは無尽蔵と呼ばれる小部屋。自ら描いた梅の襖絵と共に、春になると中庭の梅が花頭窓から望める風情には、2次元と3次元を融合させた春挙の卓越した美意識が貫かれています。芸術家が自らのセンスと遊び心で造り上げた蘆花浅水荘は、伝統的な技法に新風を送り込んだ、珠玉の数寄屋建築です。

取材先情報

記恩寺 蘆花浅水荘(きおんじ ろかせんすいそう)
滋賀県大津市中庄1丁目19-23 
TEL:077-522-2183(記恩寺)
拝観料:500円 ※拝観は要予約(3日前までに)
営業時間:午前10時~午後4時まで
交通機関:京阪電鉄/石山坂本線 「瓦ヶ浜」 下車 徒歩 5分
車:名神大津ICから約15分