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#245

禅の心が生み出す多層的な建築美
~日本画家・山元春挙「蘆花浅水荘」続編~

今回は滋賀県大津市に残る「記恩寺蘆花浅水荘」の続編。蘆花浅水荘は日本画の巨匠・山元春挙が琵琶湖の畔に造った数寄屋造りの邸宅です。全ての部屋に芸術的感性と遊び心が満ち溢れているため、邸内の半分も拝見できずに放送時間終了。そこで前回紹介できなかった茶室や持仏堂、そしてアトリエなどを巡ります。中でも目を惹くのは、「竹の間」と呼ばれる竹尽くしの部屋。床柱には角竹、狆潜りには変竹を見事にアレンジしています。極め付きは中庭に面した円窓。すすきのように枝を広げる竹を仕込んだこの窓のデザインは、山元春挙の造形力とオリジナリティーを象徴する設えです。庭の片隅に佇む茅葺の持仏堂は、一見草庵茶室にも思える鄙びた風情をしています。実際内部は茶室も兼ねていて、禅に心酔していた春挙らしく“一物二用”の教えを具現化した建物であるとされています。最後に拝見するのはアトリエ。折り上げ格天井の大広間には、生前の春挙が手掛けた下絵や最後の作品などがそのまま残されています。造り付け棚や絵具入れなどから、春挙の合理的な一面も見て取れます。画家の芸術性と遊び心、そして禅の教えの融合した蘆花浅水荘は、まさに多層的な数寄屋建築です。

取材先情報

・記恩寺 蘆花浅水荘(きおんじ ろかせんすいそう)
滋賀県大津市中庄1丁目19-23 
TEL:077-522-2183(記恩寺)
拝観料:500円 ※拝観は要予約(3日前までに)
営業時間:午前10時~午後4時まで
交通機関:京阪電鉄/石山坂本線 「瓦ヶ浜」 下車 徒歩 5分
車:名神大津ICから約15分