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#66

東光寺(山口県)・大念佛寺(大阪府)・羅漢寺(大分県)

「東光寺」(山口県)

 

東光寺(山口県)は萩藩の三代藩主毛利吉就が建立した黄檗宗の寺。黄檗宗は江戸時代に来日した中国僧、隠元が伝えた禅宗の一派で、寺の随所に中国文化の面影が残ります。「釈尊がおわす場所」を意味する大雄宝殿で催される法会も中国式。読経は立ったまま中国読みです。殉死が禁じられた萩藩では、主君の没後に家臣らが石灯籠を献じました。境内の最奥、毛利家墓所に整然と並ぶ約五百基の石灯籠。各藩主の墓前には中国伝来の亀趺が立っています。

  


 

「大念佛寺」(大阪府)

 

市街地に伽藍を構えるのは大念佛寺(大阪府)。融通念仏宗の総本山です。「一人が皆のために、皆が一人のために念仏を融通し合えば、すべてが往生できる」と説いた開祖・良忍は、美声に恵まれて天台声明を大成しました。菩薩に扮した僧らが二十五菩薩来迎の様子を再現する「万部会」、本尊・一尊天得如来像の掛け軸を持った僧侶が檀信徒の家々を回る「御回在」。こうした寺の行事には、信者をもれなく救おうとする思いが込められています。

  


 

「羅漢寺」(大分県)

 

羅漢寺(大分県)は、山国川流域の名勝・耶馬渓の峻険な岩山を背にして立ちます。江戸から来た禅海和尚は、通行を阻む絶壁にトンネルを掘ろうと孤独な作業を続け、三十年の歳月を経てついに貫通。菊地寛の小説「恩讐の彼方に」に描かれた青の洞門です。急な参道を上った先の無漏窟には、岩窟を埋めつくす五百羅漢。五木さんは本堂への石段を登りながら「千年来の人々の思いが足元からひしひしと伝わる」と感じます。百寺巡礼、満願の寺です。