BS朝日

エッセイ

旅ならぬ空港で

オンライン・ファンミーティング『ターミナルから始まる!?輝く☆☆☆(三ツ星)韓国旅』をFacebookの機能を使って実施することになった。わざわざ番組Facebookを開設したのに何も情報を発信しないのはもったいない。そこで番組Twitterより長く、『韓流センチメンタル』よりも短い文章を書くことにした。

仁川空港を舞台にしたドラマ『輝く星のターミナル』を入口に、韓国旅の魅力について視聴者と一緒に盛り上がりたいというイベントなので、韓国旅についての書くのが良いのではないか、しかも日本から韓国への道程を順番にたどっていけば面白いのではないか・・・。

成田に向かう期待『空港へ行く道』、入国審査の緊張『ターミナルのモラトリアム』、韓国の空港での検疫『空港バナナ事件』を綴り、ようやくソウル中心部へ移動、今も散策中だ。

旅に入れにくい空港体験がある。取材だ。韓流スター来日の様子を取材したことはないが、それでも様々な体験をした。

ひとつは北朝鮮の女性応援団。2003年の夏、韓国・大邱に世界の学生が集まるスポーツ大会・ユニバーシアードが開催された。そこに北朝鮮の女性応援団が参加すると発表され私も含め日本メディアが押し掛けた。

その一年前、釜山アジア大会に客船・万景峰号で到着した応援団は赤や青のカラフルな制服だった。今回、釜山近くの金海(キメ)空港に到着する彼女たちは一体どんな服装なのか・・・北朝鮮を出発する様子は伝えられておらずテレビの記者たちは初見で中継カメラに向かってリポートしなければならなかった。

到着した彼女たちは白色のチョゴリ(上着)に黒いチマ(スカート)という女学生らしい服装で、年齢も釜山の応援団の妹分という印象だった。私は必死にそうしたことをしゃべったが、それは見れば分かる話で、横にいた他社の記者は「彼女たちが“美女軍団”と言われるのも分かるような気がします・・・」と民放らしい上手いことを言った。悔しくて忘れられない。

その4年後、今度は北朝鮮の金桂冠(キム・ゲグァン)第一外務次官が訪米後に成田空港で航空機を乗り換え、北京経由で平壌に戻ることになり、私は空港に急行した。

米国からの便が到着するゲートにはメディアが殺到した。金氏は取材に応じ、原則的な発言を繰り返した。取材エリアから取材制限エリアへと歩みを進めた金氏をそれ以上追いかけることはできない。私たちは別ルートで北京行き便の搭乗ゲートに向かった。

成田空港の構造を知り尽くしたベテランカメラマンが、アクション映画さながらの運転をし、私たちは、どこの社よりも早く到着した。金桂冠氏がごく普通の観光客のように空港内を歩いていた。私がカメラマンと共に突進すると、金氏の側近がカメラの前に手をかざして撮影を遮り「どけどけ」と叫んだ。しかし、遠巻きで見ていた金氏が私たちを手招きした。

正直驚いたが、私は朝鮮語で自己紹介をした。「私は2002年の小泉訪朝で平壌に行き、百花園迎賓館で金総書記とも会った・・・」金氏はうなずきながら聞いていた。そして尋ねた。「アメリカと合意できれば日本は従うと思っているか?」金氏は暫く黙っていたが答えた。「日本は独立国ですから日本ともきちんと交渉しなければいけない」

その後、他社が次々と合流して来た。彼らは拉致問題について繰り返し聞き、金氏は黙っていた。「北朝鮮の高官、拉致問題に答えず」と放送されるのだろう。ただ一人「なぜアメリカでミュージカルを見たのか?」と聞いた記者がいた。ちょっと空気が変わった。「やはりアメリカの文化を知ることは大切ですからね」と金氏は笑って答えた。

私と金氏のやりとりは放送された。質問と答えの間の沈黙こそが答えだと伝わったか・・・女性応援団の苦いリポート経験がリベンジできたかどうかと同じようにそれは分からない。

(つづく)

皆様の感想などをこちらまでお寄せください。