BS朝日

エッセイ

一緒に語りませんか?

BS朝日でずいぶん前に放送が終わった韓国ドラマがホームページのアクセスランキングで突然上位に躍り出ることがある。今なら『一緒に暮らしませんか?』だが、王座を守り続けている放送中の韓ドラを抜いて一位になることもある。どこかの局で再放送されていて検索してくれる視聴者が大勢いるのだろう。

『知ってるワイフ』は日本版リメイクの影響に違いない。これについては書きたいことがいっぱいあるが、それはさておき韓国ドラマのリメイクと言えば2019年夏が思い出される。3つの在京キー局が、奇しくも同じ7月クールで『サイン』『ボイス』『TWO WEEKS』をリメイク、編成したのだった。

その日本版『サイン』の脚本を担当したのが羽原大介さん。オンライン講演を聞く機会があり、その経歴と作品、特に日本男性と韓国女性の恋愛をテーマにした日韓合作ドラマに関わっているという話に強く惹かれた。どうしても会いたくて知人に連絡先を教えてもらった。

羽原さんは劇作家つかこうへい氏に師事、映画『パッチギ!』などの脚本も手掛けている。大学時代に読んだ在日韓国人つか氏の書簡体エッセイ『娘に語る祖国』の一節が私は大好きだった。

「きっと祖国とは、おまえの美しさのことです。ママの二心のないやさしさのことです。パパがママを愛おしく思う、その熱さの中に祖国はあるのです。二人がお前をかけがえなく思うまなざしの中に、祖国はあるのです。」

そして、この後は『幕末純情伝』でも有名なあのセリフで締めくくられる。
「そして、男と女がいとおしく思い合う意志の強さがあれば、国は滅びるものではありません。」

つか氏の言葉に私は心を激しく揺さぶられた。そんな想いを込めて羽原さんに長いメールを送った。すると「私は韓流に詳しいわけではないですが・・・一杯呑みながら気楽にお話をしましょうか」という温かい返信をもらった。緊急事態宣言が出される前のことだ。第一線の脚本家さんと向かい合うのは初めてだった。

マッコリを飲みながら羽原さんは「韓国ドラマは日本の先を行っている」と言い「制作費のかけ方が違うようだし、脇役に至るまで皆、演技が本当に上手だ」と熱く語った。日韓合作ドラマの打ち合わせでソウルに行った時、「シナリオライターの羽原です」と挨拶すると「一緒に書く人間は連れて来なかったのか?まさか一人で全部書くのか?」と不思議がられ、チームで脚本を作る韓国側との違いを感じたと言う。

「設定を逆にして、韓国男性と日本女性のラブストーリーにした方が日本の女性ファンに受けたのでは?」と聞いた。羽原さんは「制約は特になかったんですけど・・・」と言って続けた。「韓国側から女性役に人気K-POPグループメンバーの一人の名前が挙がった。中国で非常に受けが良く、作品が高く売れるだろうと」
韓流コンテンツの買い手として中国が日本より存在感を増しつつあることを感じさせた。

楽しくてマッコリのボトルが次々と空いた。初対面にもかかわらず私は語り出してしまった。私もまた韓国女性に恋をしたことがあるのです。だから羽原さんの講演を聞いて、どうしてもお会いしたかったのです・・・。

羽原さんも修学旅行先で誕生日を迎えた思い出、そこでの女子生徒とのちょっとした触れ合いについて語ってくれた。さすが脚本家、ドラマを見ているかのような一場面が浮かんだ。

そう私たちの会話はすっかり“男子生徒”のそれになっていた。羽原さんが聞いた。「・・・で、結局、韓国の彼女とはどこまで行ったの?」正直に答えても最後まで信じてもらえなかった。

(つづく)

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