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#28

『江南ロマン・ストリート』と向田邦子

公募で佳作に選ばれたドンヒはテレビドラマの脚本家として歩み始める。脚本家を目指す女性が主人公の韓国ドラマは多い。最近の作品だけでも『愛の温度』『この恋は初めてだから』などを思い出す。韓国女性の憧れの職業であるともに、日本も同様だが、実際に優秀な女性脚本家が多いという状況をそのままドラマの題材にしているように思われる。

女性脚本家では、私は向田邦子さんが好きだ。彼女自身の脚本によるドラマに加え、エッセイ『父の詫び状』などを原案とした新春ドラマシリーズも大好きだった。

向田さんの友人は男女を問わず多い。俳優の森繁久彌、演出家の久世光彦、黒柳徹子・・・。
担当していた報道番組のゲストコメンテーターに作家の澤地久枝さんをお迎えしたことがある。ニュースの打合せもそこそこに、向田さんの話で盛り上がった。その時の澤地さんの言葉が忘れられない。
「向田さんと一番親しかったのは私だと思いますよ。だって私、向田さんの家の鍵を持っていましたから」

向田さんの鍵と言えば、タクシーを降りる時、お金を渡すつもりが、うっかり鍵を渡してしまい「奥さん、本当にいいのかい?」と運転手に言い寄られたというエッセイが有名だ。その合い鍵を澤地さんは持っていたというのだから本当に親しかったのだろう。

今も時々、向田さんが生きていたらと思うことがある。あの航空機事故で亡くなっていなかったら、向田さんはどんな脚本を、どんなエッセイを書き続けただろう。そして向田さんは韓国ドラマを見ただろうか、と。

韓国ドラマを編成する時、向田さんだったらこの作品をどう見るだろうと考える。『品位のある彼女』と出会った時、私は『阿修羅のごとく』にも通じる世界観があると思い、放送したいと思った。

そう、今も時々思う。向田さんが生きていたら・・・。

(つづく)