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迎賓館赤坂離宮 Ⅲ

迎賓館赤坂離宮 Ⅲ

旧東宮御所は、時の皇太子、後の大正天皇の御住居として建てられた宮殿建築。明治期における我が国最大の記念建築であり、本格的な西欧の建築様式を採用しつつ、彫刻などの装飾には精緻な工芸技術が駆使されており、意匠的にも高い価値がある。設計は、工部大学校造家学科1期生の片山東熊(ジョサイア・コンドルに学び、卒業後は宮内省技師となり、多くの宮殿、離宮などを設計した)。明治32年(1899)着工、明治39年(1906)建物竣工、外構工事などを含め明治42年(1909)に完成した。鉄骨補強を加えた煉瓦造(一部石造)。地下1階・地上2階建。最高級の国産材と輸入材を用い、外壁・列柱には茨城県産の花崗岩が使われた。構造材の鉄骨は米国カーネギー社の製品が使用された。洋風の家具、調度品はフランスに発注された。戦後、荒れて放置されていた建物は国に移管された。1960年代に入り、国賓・公賓の接遇のための迎賓館を設ける必要が生じ、この建物を活用することとなった。明治の宮殿建築の文化的価値を保ちつつ、迎賓館としての新たな価値を吹き込む保存修復工事は昭和43年(1968)に始まり5年余りの歳月を費やし昭和49年(1974)竣工した。建物は正面を北側に向け、緩やかなカーブで両翼を前方に伸ばした左右対称の造りで、正面中央に車寄せポーチとスロープを設けた。正面の中央玄関を入り中央階段を上ると接遇のための部屋がある。「彩鸞(さいらん)の間」、「朝日の間」、「花鳥の間」、「羽衣の間」、「東の間」があり、それぞれの用途により使用される。平成28年より通年一般公開が開始された。