奇跡のピアニスト 辻井伸行 音楽の神様に導かれて~

奇跡のピアニスト 辻井伸行 音楽の神様に導かれて~

お知らせ

【放送日時】
2014年12月31日(水)夜9:00~10:54 放送

番組概要

あくなき挑戦を続ける奇跡のピアニスト・辻井伸行。今回は、佐渡裕、アシュケナージとのピアノコンチェルト、そしてベルリンでのピアノソロと、たっぷり2時間お届けする。

2013年は辻井にとって大きく成長した年となった。4月、新しくなったフェスティバルホールで指揮・佐渡裕、演奏・BBCフィル、ピアノ・辻井伸行で、こけら落とし公演が開かれた。曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。辻井にとっては、子供の頃から憧れの名曲の一つであり世界各地で演奏を重ねてきた一曲。9月はフェスティバルホールで巨匠アシュケナージと共演、グリーグの代表作、ピアノ協奏曲イ短調作品16を披露、ピアニストでもある指揮者のアシュケナージが辻井の演奏を絶賛した。

そして11月、クラシックのお膝元、ベルリン・フィルハーモニーホールで初リサイタルを開き、耳の肥えた聴衆に新曲を披露した。10曲中6曲が新作だった。
大曲のピアノコンチェルトやショパン、リストの新曲をマスターし、ついにピアノコンチェルトは10曲、ピアノ曲は100曲を超えた。辻井が目覚ましい成長を遂げる中、辻井を「奇跡のピアニスト」と呼んだ伝説のピアニスト、バン・クライバーンが2月に逝去。78歳だった。冷戦時代に開かれた第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝し、その功績をたたえて、バン・クライバーン国際ピアノコンクールが設立された。そのコンクールで日本人初のゴールドメダリストに輝いたのは辻井だった。
2011年、バン・クライバーンは、ニューヨークで行われたカネーギーのリサイタルに、ダラスから駆けつけて辻井の演奏を聴いた。演奏後、我々の単独インタビューで「音楽の神様が彼を導き、彼に降臨した」と、語った。新しくなったフェスティバルホールのミュージアムにバン・クライバーンが演奏をしたピアノが保存・展示してある。辻井は、そのピアノに触れ、周囲にはばかることなくショパンのノクターン第8番を弾いた。

バン・クライバーンの葬儀には、辻井は参列することができなかった。
しかし、バン・クライバーンは、亡くなる3週間前に、演奏会の合間をぬって見舞いに訪れた辻井にこう語っていた。「クラシック音楽の本当の魅力は、生演奏に耳を澄まさないと伝わらない。クラシック音楽に関心の無い人もコンサートホールに引き付けることが出来るような、人間として演奏家としても魅力的な存在になりなさい。」 辻井に残した最期の言葉だった。 ベルリン・フィルホールでの演奏は辻井にとって試金石だった。ここでどう評価されるかが、今後のヨーロッパでの演奏ツアーにも影響するからだ。しかし、辻井はこれまで何度も演奏してきたおはことする曲を並べずに、あえて、いままで演奏したことのない曲を選んだ。
「ベルリンで挑戦したい。」 辻井はベルリンに着くなり、ホテルにも向かわず、練習場に足を運んだ。そしてリサイタルの当日も、開場ぎりぎりの時間までピアノを弾き続けた。満身創痍(そうい)で挑んだ、ベルリン・フィルハーモニーホールでのリサイタル。聴衆は固唾(かたず)をのんで、辻井の演奏に耳を傾けた…。 今回は佐渡、アシュケナージとのピアノコンチェルト、そしてベルリンでのピアノソロと、たっぷり2時間お届けする。