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#111

間口一間半 奥行き五間 廊下まである建築家夫婦の家

今回訪ねたのは東京大学のお膝元・文京区本郷。石川啄木や宮沢賢治を始め、明治の文人が多く暮らした街です。東京では珍しく戦火を逃れたことから当時の建物も残っており、小説家・樋口一葉の旧居跡や通っていた旧伊勢屋質店など歴史探訪を楽しめます。
今回は昭和初期に建てられた狭小長屋をリモデルされた建築家ご夫婦Nさんのお宅を訪ねます。以前は都内のマンションで暮らしていましたが、事務所を独立するタイミングで新たに住居兼事務所を構えられる住まいを探すことに。昭和初期の趣を残した街並みが気に入り、三軒長屋の真ん中にあったこの家を購入しリモデルしました。
間口が2.7m、奥行7.3mでうなぎの寝床のような建物でしたが、敷地面積が40㎡に満たない物件は銀行のローンが組みにくいということもあり、売値は相場の7割と格安でした。しかし、家は真ん中で両側は塞がれていた為、光も風も入らないという建物としては悪条件がそろっていました。建築家でもあるご夫婦は自分たちの力を試す意味でもリモデルに挑戦し、狭いながらも広さを感じさせつつ、住居と事務所を兼ねた夢の住まいを実現させました。
25㎡ほどしかない1階を広く感じさせるため、あえて廊下を作りその奥にリビングダイニングを作りました。那智黒石が敷き詰められた「宿屋」のような玄関から、幅の狭い廊下を通り抜けることで、4.5帖のリビングダイニングに辿り着いたときに広がりを感じられる設計です。また、突き当たりの壁は一面ガラス張りにして坪庭を鑑賞できるようにも。キッチンやトイレ、水まわりは敢えて見せない工夫をし、扉で隠すことで広さを演出、築87年の古屋が見事に蘇りました。
1階を片付けてから寝るのが習慣になったというご夫婦。就寝後もほんのり明かりをつけたままにすることで10時以降、シャッターが閉まる商店街に温かみを与えたいと、この街並みに魅かれ移り住んだNさんご夫婦ならではのリモデルでした。
 
設計担当:REIKA/NARITA Architects
http://www.r-n-archi.jp/

【平面図】

before

after