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#168

天竜川の筏問屋
~家康ゆかりの「田代家住宅」~

今回は、静岡県浜松市の「田代家住宅」を訪ねます。天竜川の畔にたつ田代家は江戸時代に名主を務めた旧家で、筏(いかだ)問屋として栄えた歴史を持っています。南北の重要な交通路でもあった天竜川は、古くから木材の搬出を筏流しに頼っており、田代家は戦国時代に徳川家康から朱印状を下されたことをきっかけに、大いに繁栄しました。屋敷地のまるで武家屋敷のような冠木門を過ぎると、2階建ての壮大な主屋が現れます。よく見ると、まるで違った趣をした2軒の建物を繋ぎ合わせたかのような外観をしていることに気がつきます。番所の役人も務めた田代家は、商売や生活の場の他に、武家などを招き入れる接客の場を必要としたため、外観を用途別にはっきりと分けていたのです。建物の中央部分は袖壁で区切られ、前庭も明確に区別されています。接客部分には格式ある式台玄関が備えられ、武家を迎え入れるにふさわしい構え。一方日常使いの入り口は、大戸の先に店土間や店の間が続き、筏問屋としての顔を見せています。最も格式の高い奥座敷の床柱には、銘木の誉れ高い檜の四方柾が用いられ、木材を扱う筏問屋の誇りが見て取れます。筏問屋の建物がほぼそのまま現存している例は大変珍しく、田代家住宅は天竜川水運の歴史を今に伝える貴重な名建築となっています。

取材先情報

田代家住宅(筏問屋 田代家)
浜松市天竜区二俣町鹿島489  TEL:053-925-7006
開館時間:午前10時~午後4時
開館日:土・日曜日・祝日(12月28日~1月4日を除く)
※12~2月は日曜日・祝日のみ
 入館料:無料
 交通機関:・JR浜松駅から遠鉄電車(約32分)で、「西鹿島駅」下車、
徒歩約15分 
・JR掛川駅から天竜浜名湖鉄道(約44分)または新所原駅から
天竜浜名湖鉄道(約70分)で、「二俣本町駅」下車、徒歩約10分
 車:・東名浜松I.Cから約30分 
・東名袋井I.Cから約30分
・新東名浜松浜北I.Cから約15分
駐車場:3台(無料)

※上記以外の情報については、公開出来ません。