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#89

韓国を「ホワイト国」から除外 今後の影響は!?

日本政府は、韓国をホワイト国から除外すると閣議決定されました。韓国は猛反発していますが、実は、通常の経済活動は影響ないとの指摘があります。2019年8月4日のBS朝日『日曜スクープ』は、韓国の反発の裏にある狙い、そして、韓国が仕掛ける国際世論戦をひも解きます。

■文在寅大統領が日本政府に警告

山口

おととい(8月2日)、日本が韓国を輸出管理で優遇するホワイト国から除外しました。これに対し韓国も日本をホワイト国指定から除外するとしています。韓国は猛反発していますが、実態を詳しくひも解いていきます。きょうのゲストを紹介します。元駐韓国大使の武藤正敏さんです。宜しくお願い致します。

武藤

宜しくお願いします。

山口

そして、経済産業省・貿易管理部長などを歴任し、韓国をホワイト国に指定する直前に輸出管理の責任者でもありました、中部大学特任教授、細川昌彦さんです。宜しくお願いします。

細川

宜しくお願いします。

山口

韓国に対する輸出管理強化の第2弾として、おととい予定通り、韓国をホワイト国から除外する政令改正を閣議決定しました。そもそもホワイト国というのは、安全保障上、輸出管理で優遇措置を受ける国27カ国が指定されていたんですが、アジアでは韓国だけだったんです。「外す」ということは史上初となるそうです。そして、今後、名称が変更されることになりました。これまでの「ホワイト国」は「グループA」に該当し、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどです。グループAからDまでランク分けされておりまして「グループB」は、国際的な輸出管理の枠組みに参加している国、ここに、韓国が入れられました。その他「グループC」は、国際的な枠組みに非参加。「グループD」が「懸念国」の扱い、北朝鮮、イランなどということになるわけです。これが8月7日に公布されることになります。そして今月末、8月28日に施行されます。日韓関係への影響ですが、菅官房長官は「日韓関係に影響を与えることは意図しておらず、ましてや対抗措置ではありません」。世耕経産大臣も、日本企業への影響は「管理をしっかりやっていただければ輸出はできる。日本企業への悪影響が出るということは基本的にはない」と話しています。まず武藤さん、日本政府の閣議決定をどのようにご覧になりますか。

武藤

日本は、輸出管理の問題として淡々とやるということは、当然のことであって、徴用工の問題とは全く関係ないわけでしょ。だからやるべきことをきちっとやっていくということは、国際的な義務を守るということでもありますし、今回の場合は当然やるべきことをやったというだけの話です。

山口

そうですよね。しっかりやるべきことはちゃんとやってくんだということですね。細川さん、いかがでしょうか?今回ホワイト国から除外した、グループ分けにしてグループBに韓国を入れた。このあたりはどんなふうに読み解きますか。

細川

サッカーとかラグビーみたいですけど、もともと「ホワイト国」という名前は、私の頃から始まったんですけれども、特別に優遇する国、それ以外は「非ホワイト国」しかなかったんですよ。「ホワイト国」から外れると「非ホワイト国」になる。北朝鮮とか、そういう懸念国と一緒だと思われちゃうじゃないですか。そうすると、韓国側もまた反発が強くなってしまうというのがありますから、よくよく見れば、ちゃんと国際的な枠組みに参加している韓国は「グループB」という形で。懸念国の「グループD」とは違うと明確にするということは、とても大事なことかなと思います。

山口

フェアにグループ分けをしたと。

細川

他の国も、EUもそういう形になっていますから、国際的な標準に合わせていると見た方がいいと思いますね。

山口

しかし、この「ホワイト国」除外の閣議決定に対して、韓国は猛反発しています。閣議決定から4時間後、緊急の閣議が開かれまして、冒頭で文在寅大統領がおよそ8分間発言しました。中身を確認しておきますと、まず「問題解決に向けた外交的努力を拒否し、事態を一層悪化させる非常に無謀な決定である。加害者である日本が盗人たけだけしく、むしろ大口をたたく状況を決して黙ってみていません」。さらには警告を発しました。「今後起こる事態の責任も、全面的に日本政府にある点をはっきりと警告する」とまで発言しています。そして、具体的に対抗措置を打ち出しました。一つ目が「WTOへの提訴する準備を加速させる」としました。そして、二つ目が「日本に対するホワイト国指定の解除」。韓国側も、日本をホワイト国の指定から解除するとしています。武藤さん、文在寅大統領のかなり強い言葉です、どう見ますか。

武藤

私もいちいちコメントする価値もないと思いますから言いませんけれど、ただ、「外交的努力を拒否し…」と、それについて一言だけ申し上げると、外交交渉というのはお互いに譲り合うべきでしょう。ところが、韓国の外交交渉は、これまで日本の要求を呑んでくれたことは一度もないんですよ、私の記憶している限り。思い返せば、金大中が日本の文化を韓国市場に開放したことが唯一のケースでしょうか。つまり、韓国側が色々な要求するときは、こういうことを日本に要求しますと事前に漏らすんですよ。韓国国民が「そうだ、そうだ」と言ってくることに、今度は日本に対して、韓国国民がこういうことを言ったから譲れませんと言ってくるんです。

山口

川村さん、韓国の対抗措置、日本側は想定していたのでしょうか。

川村

想定していたかは分かりませんけれども、今の状態がこのまま続くと日本と韓国の2国間の経済関係で言うと日本が韓国に輸出している、つまり、韓国が日本から輸入しているものと、韓国が日本に輸出している、日本が受け取っているもの、金額だけでもその差は年間2兆円、日本の黒字で韓国の赤字です。ですから、そのことを考えていった場合に、韓国側の経済的にもこのまま長く続くと決して有利ではない、なんとかしたいとう思いがあるのは事実だと思います。けれども、我々の一般の交流のところまで、影響が及んできていますから、各自治体とかスポーツの交流もほとんど停止されてきていて、ようやく長崎には、韓国から観光客が来たというのが報じられていますけれど、そういうところまでナショナリスティックな反応が染み出るまで及んできていることの方が両国にとって懸念されることだと思います。

■「通常の経済活動は何の影響もない」

山口

実際に、今回の措置が韓国経済にどのような影響があるのか。閣議決定があった当日の夕方、韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相が会見で話しました。対象となる品目、日本の「ホワイト国」から外されたことによって、それに関連する戦略物資の数は1194品目。その中で影響がある159品目を挙げました。輸入している量や代替品の有無などを勘案すると、この数になるということです。韓国政府は「主力産業のサプライチェーンに決定的な影響を及ぼす100余りの戦略核心品目を中心に、研究開発など毎年およそ約890億円以上支援する」など、企業への支援策を発表しました。しかし、今回のホワイト国除外の影響について、細川さんにあらかじめ伺ったのですが、実は「影響はほとんどない」ということなんです。その理由の1つ目は、そもそも「禁輸措置ではない」。確かに90日間かかるという話がありますが、ちゃんと手続きをすれば輸出ができるわけです。そして、2つ目の理由として『特別一般包括許可』という制度があるということです。『特別一般包括許可』とは貨物・技術の機微度が比較的低い品目について、非ホワイト国向けを含んだ一定の仕向地・品目の組み合わせの輸出を包括的に許可する制度ということで、一般の人に分かりづらいですが、ポイントをお願いします。

細川

日本国内でも、今回「ホワイト国」から外れると物凄く影響があると言う人もいますが、ある意味、輸出管理制度を理解されていないなということがありましたから、一般の方には少し難しい言葉が出てきているんです。1149品目、全然根拠のない数字です。「ホワイト国」になると何がメリットか申しますと、3年に1度の許可で済む『包括許可』という制度があります。通常、輸出契約ごとに個別許可を取らなければいけないんですが、3年に1度で簡単に済んでしまう、これが「ホワイト国」のメリットです。ここから外れると、今までとは違い、品目ごとに全部、個別許可が必要だと思う人がいるわけです。1000品目以上が個別許可がいると大変だとなりますよね。実は全くそうではない。もう一つ、「ホワイト国」の『包括許可』とは別に、『特別一般包括許可』というものがあり、何かと申しますと、輸出業者が自分の会社の中で規定を設け、自主管理をきちんとやると。そういうところには『包括許可』というのを認めているんです。これを取っている会社は沢山あります。韓国が「ホワイト国」から除外されたとしても、『特別一般包括許可』という、もう一つの包括許可制度を使えば、何の問題もないということなんですが、こういうことをご存じない方は、個別になってしまうから、1000品目が個別になって大変だと言うので、皆さん、今、大騒ぎしている。全然そうではない。この制度、もう一つの包括許可制度をちゃんとした企業がしっかり輸出管理をすれば、ほとんどのところはこれで済んでしまうので、影響はないということなんです。しっかりと、輸出管理を各企業、日本企業、普通の企業は、皆やっているんです。いかがわしい所はそうではないかもしれませんよ。それを除くのは当たり前なので。だから、通常の経済活動は何の影響もないということです。

山口

「ホワイト国」から外されても、その制度を使えば、企業がしっかり管理をしていれば、包括的に一括してできるということでよいですか。

細川

そういうことです。

川村

『特別一般包括許可』というのを、あまり報じてないんです、メディアが。ある新聞がこの特集を組んで、私もこういうことになっているのかと、初めて知ったんです。もっと政府もこのことをPRして、丁寧な説明をしないと、両国が感情的になっているような雰囲気を感じ取ってしまうので、その姿勢は必要だと思いますよ。

細川

日本の報道も過剰な報道になって、世界の供給網に大打撃になるというところまでおっしゃいますが、それは全くありません。日本の報道を受け、韓国側が逆に過剰反応する。悪い循環が今、起こっている。

山口

細川さん、この制度を使えば実質は影響ないんだということだと思うんですが、確かに、韓国側がかなりあわてたような状況になっていますよね。実際、細川さんの所に具体的に相談があったりしましたか。

細川

固有名詞は申し上げられませんが、韓国企業も心配して、実は、日本の報道を見ているだけでは、本当のところは分からないとおっしゃって。きっちりと申し上げれば「そういうことか」と、そうでないと。今、何が起こっているのかと申しますと、例えば、サムスンが色々な日本の企業に対して「90日分の在庫を持つようにさせてくれ」と。これは、個別許可になると90日かかるという報道を信じ込んで、大変な事が起こっているわけです。これは、全く無駄なコストが支払われている。そういうことをきちんと日本の報道も理解してもらいたいです。そして、韓国側も理解してもらいたい。ただ、文在寅政権自身は、わざと理解してない部分はあると思うんですよ。国民を煽って反日を煽っている部分も多々ありますから、そこは要注意だと思いますけどね。

大木

日本の経産省として、韓国側にしっかり説明しているというのは、こういったケースの場合もそうですか。

細川

もちろん、これは先日の事務的な説明会でしたか、あの場でも5~6時間かけているということは、制度論も含めてちゃんと説明していますよね。ただし、それがちゃんと上に上がってない可能性は十分ありますよね。

■「ホワイト国」指定したときの条件

山口

では、そもそも韓国は、どのように「ホワイト国」に指定されたのか。きっかけは1980年代「欧米を中心に軍事転用可能な物資を危険国に流出させない、国際的な輸出管理の合意」というものがあったそうです。ここで韓国は、当時4つの分野があって、「核」「化学・生物」「通常兵器」。この分野において韓はメンバーに入っていたのですが、「ミサイル」の分野ではメンバーでなかった。なぜかと言えば、当時現場にいらっしゃった細川さんによりますと「アメリカが韓国の輸出管理を不安視」していたということです。こうした状況の中で2001年、実は「日本が各国を説得して2001年に『ミサイル』分野もメンバーに」加わることができた。この結果2004年、韓国を「ホワイト国」に指定したという流れだったそうです。細川さん、やはり当時韓国は「ホワイト国」に入りたいという願望が非常に強かったんでしょうか。

細川

勿論そうです。元々、国際的な枠組みというのは、1980年代からあったんです。日本は元々からメンバーで、欧米先進国を中心にして危ない物資が危険国に渡らないようにと、そういう仕組みがちゃんとあるんです。韓国は、まだそのメンバーではなかった。そこで、日本がきちんと輸出管理を教えてあげて、このメンバーに入れるようにしてあげたというのが第一段階です。やっとメンバーになれて、晴れて今度は日本との間でも「ホワイト国」になって経済関係を緊密にしていこうじゃないかということで、2004年に「ホワイト国」に指定したということですが、多分、その後の前提条件というところになると思うんですが、その時の韓国側の輸出管理が少し不安なところもあったんです。日本側から新しく輸出管理を教わった、韓国はこの世界では後進国でしたからね。そういう意味で、韓国側が先進国の証のような仕組みに入りたいというのがあったので入ったわけですが、どうしても制度が十分じゃなかった。そこで日本はどうしたかと言うと、日韓の間で緊密な意見交換をするということを前提としてできれば、韓国側も大丈夫かなという感じで「ホワイト国」にしたのが2004年です。この前提条件というのは緊密な意見交換です。

山口

そこを確認しましょう。「緊密な意見交換をする」というのが前提条件だった。これが今、15年経って揺らいでいるということです。

大木

緊密な意見交換をするという話だったんですが、日韓の話し合いは2016年以降、開かれていません。日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていたということです。さらに、輸出管理をめぐって、大量破壊兵器に転用可能な戦略物質の不正輸出が2015年から2019年3月までに156件ありました。韓国の専門家が「北朝鮮の友好国に向けた違法輸出が増え続けており、第三国を経由して北朝鮮に渡った可能性を排除できない」と指摘するなど、管理のずさんさというのも問題になっているんです。細川さん、こうしたことがあると「ホワイト国」に相応しくないという判断につながってしまうということですね。

細川

私のときもそうでしたけど、毎年のように意見交換するのは当たり前です。ところが、3年間もしてない。しかも、その間にずさんな管理がされていました。どこに渡ったかは分かりませんが、少なくとも輸出者と輸入者の間でずさんな管理がされているのが頻発している。だからこそ、もっと意見交換しなければいけない。前提が崩れているわけであって、「ホワイト国」から外さないと、逆に、いい加減なものが韓国から流れていくと、非難されるのは日本なんですよ。

山口

そうでしょうね。

細川

欧米先進国から日本は何しているんだということになりますから。国際的な義務を果たすためにも「ホワイト国」から外して、きちんと管理をすることに今回なったということなので、2003年以前の段階、ちょうど私が担当していた頃の状態、元に戻したということなので、別に、これで怒られる筋合いはないのではないかと。

山口

前提条件が崩れたということがあるわけですよね。そう考えると武藤さん、日本側がこれだけ言っているわけですから、前提条件が崩れた、緊密な連携も取れていないとなっていきますと、逆に、韓国側がきちんと輸出管理の対応を取ってくれれば、向こう側も突っ込まれる要素はないわけですし、そこをなぜできないのかという疑問も湧いてきますね。

武藤

やっぱり、やりたくなかったのではないですかね。不正輸出が色々行われていて、それを隠したかったのではないのではないでしょうか。瀬取りでもなんでも、韓国は北朝鮮に渡っても全部、隠していますでしょう。156件あるということですが、どこの企業が関与してそれが最終的にどこへ行ったかということは、韓国側が積極的に説明してくれれば、我々だって韓国に対して、そんなに不信感を抱くことはないと思うんですよ。

■米国が“仲介”しない理由

山口

こうした状況の中で、金曜日(8月2日)に日米韓3カ国の外相会談が開かれました。会談時間は30分ほどで終了しました。皆さんご存知だと思いますが、韓国側と日本側の説明が違っていたんです。どうしても噛み合わないわけです。まず、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相ですが、「アメリカもこの状況に深い憂慮を示していた。難しいが、今後、どんな努力をアメリカができるか、やるべき役割をすべてするという話があった」。この言葉通りとすれば、アメリカが仲介に動くのかなとも取れますよね。しかし、河野外務大臣は「特にそんな発言はない。仲介とかなんとかということではなく両国の問題は両国で話し合って解決してください」と、康京和外相の発言を否定したわけです。アメリカ政府はどうなのか。ポンペオ国務長官です。「アメリカ政府は仲介に関心がない」と表明しました。武藤さん、この発言の違い、どう見ますか。

武藤

仲介するかどうかって、随分、日本でも報道されましたよね。仲介するということであれば、事前にサウンドしているんですよ。事前に日本に、どうですかということを聞いてきているはずです。やっぱり上手くやってほしいな、自分たちも何かできないかなってことを、少し思ったでしょう。その時、たとえば、不適切な案件とは何かとか、きちんと日本は説明しているはずなんですよ。それを聞いて、これじゃとても韓国の肩を持つことはできないなという判断になって、ポンペオさんも、やはり二国間で話をしてうまくやってくれということを言い出しのではないでしょうか。日米韓の会談が2日になった。これは閣議の前にやって、終わった後すぐにひっくり返されたら、面子が立たないでしょう。このときに仲介はしてもしょうがないということになったんだと思います。

山口

アメリカはその辺、わかっているということになるんですかね。そんなアメリカに、ちょっと変化があるのではないかと見られる動きがあります。7月13日、ハリス駐韓大使は「今はアメリカが二国間に介入する時期ではない」と冷静に発言していました。ところが19日、トランプ大統領が「安倍総理・文在寅大統領、双方が望むならば私は関与するだろう」という発言がありました。その後、ボルトン大統領補佐官が日韓を立て続けに訪問し、31日、ポンぺオ国務長官が日米韓外相会談を行うという発表があったわけです。こうした動きに影響したのかは定かではありませんが、韓国の高官が次々と訪米しています。まず7月10日、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長が訪米しました。さらに11日、金希相(キム・ヒサン)両者経済外交局長、韓国外交部経済担当局長も訪米しました。そして7月23日、愈明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長が訪米しました。韓国の高官は訪米して誰に会ったのかというところを見ていきます。例えばライトハイザー米国通商部代表だったり、国家安全保障会議、それから議会、ヘリテージ財団、戦略国際問題研究所、それから注目なのが米国半導体工業会、全米製造業者協会などの人たちに会っていたんですね。実は、韓国のロビー活動の成果ではないかというような動きがあるんです。アメリカのIT業界団体が、7月23日に解決策を議論して欲しいという共同書簡を日本と韓国に送付したということです。共同書簡を出したのは、アップルも所属している6つの団体ですが、そのうちの2つの団体、米国半導体工業会、全米製造業者協会は、韓国の高官たちが訪れていました。韓国のロビー活動が、ある程度の影響を及ぼしたのではないかとも見てとれるんですが、細川さんこの辺りいかがでしょうか。

細川

がむしゃらにやっていますよ。いつものことながら、なりふり構わずという感じで。どこまでそれが意味あるかということがあると思いますね。例えば、ライトハイザーUSTR代表と書いていますけれども、これ全く的外れのところに行っているわけですよ。それそも所管していないです。輸出管理なんてまるで知らないと思います。全然、的外れなところに行っていますから、一つ一つすごいと思う必要、全くないと思いますね。ただ、産業界に対しては、IT業界団体の会長をサムスンの米国法人がやったりしていますから、そうしますと、日本ももちろん説明に行っていますが、韓国はさらに上書きをして、どんどんロビー活動を強くやっています。だから、この意見書の中身を見たらびっくりしますけれども、韓国の言っていることそのままです。韓国はなりふり構わずやっていますから、日本は上品にやってはいけないので、しつこいぐらいやるということは、韓国相手の時には必要かなとは思いますね。

山口

このあたりは武藤さんいかがですか。

武藤

韓国は、もしこのロビー活動で負けたら自分の立場がないわけですよ。もちろん、日本だって、それは批判されますけど、でも、韓国は絶対日本には負けるまいという気持ちが強いですから、日本との関係なら徹底的にやるんですよ。

大木

今、日本は積極的にロビー活動をやっているんですか。

武藤

やっています。もちろん、やっています。

大木

やっているけれども、やっぱり目に見えた成果というのは、韓国の方が出てしまっているのかなという印象を受けるんですが。

武藤

韓国は、例えば、韓米の首脳会談ブリーフでも、全部アメリカと違うこと言うんですよ、自分の都合の良いように。そういう意味で韓国とロビー活動をやるのは大変ですよ。自分の都合のいいように言い含めようとします。事実を平気で曲げるのです。

山口

日本人の国民性もあるんですかね、ちょっと上品になってしまうんですかね。

武藤

細川さんが言われたように上品です。だけど、確かに韓国との関係で、ちょっと申し訳ないけれども、経済産業省の、事務的に説明会なんて、ああいうことはやらないで、丁寧に扱って、なお言うことは厳しいことを言う。そういう姿勢を国際的にもっとアピールしていった方が良いと思うし、先ほど細川さんが言われた、特別一般包括許可、これ、マスコミは知らないんですよ。そういうことを、きちんと説明していかなきゃいけない。そういう意味で日本のマスコミの役割も非常に重要だと思うんです。

細川

今、武藤さんがおっしゃったように、日本の報道を見て、他の国々が反応するし、海外メディアも報道しているんですよ。あたかも世界の供給網が寸断されるかのような記事もありますよね。韓国側がその報道を使う、しかも、韓国側はそれを持って世界に向けて、世界の供給網が揺さぶられるぞと言って、皆に言って回っているんですよ。そうすると、ああいう産業団体も「それはいかん」という気持ちになりますよね。

■焦点になる国際世論戦

山口

海外メディアの報道です。クアーズは「日本はアメリカがファーウェイにしたことをサムスンにしている」。ブルームバーグ「安倍総理が韓国と始めた希望なき貿易戦争」。ワシントンポスト「日本は韓国との貿易関係を武器にした」。韓国側の見立てが大体、記事になっているようにも思えます。

細川

こういうことを報道している日本のメディアがあるということですよ。私もこういう海外メディアの取材を受けました。相手方はこう言いましたよ。「細川さんそうおっしゃるけど、日本の新聞はこう書いているじゃないですか」と。だから彼らは、それをフォローして書いているということですよ。日本のメディアに対し今回、私は、ものすごく良い勉強になったというふうに思いますね。

川村

あえてメディアの立場から言うと、現場レベルでは丁寧に説明してくれる人もいるんです。けれども、一部の政治家、あるいは政権の中にもいるんですが、そういう人たちがかなりメディアに対して、誘導というのもおかしいですが、「徴用工の問題に関していくら言っても韓国は何も対応してこない。この際、やっぱり我々が持っている武器、カードを全て使うべきだ」というような形で、世論を煽っている場合があるわけです。それに対して今、外務省や経産省の話を聞くと、本来ああいう形で国民を煽るべきではないと、冷静に見ている人たちの声が小さくなっている。だから、メディアの中でもですね、一部では韓国のメディアと同じような土俵に立ってナショナリズム的に煽る報道が出てきていること自体、政治レベルで、韓国も日本双方ともに政権の支持を得るための手段として文大統領と安倍政権が同じような土俵で戦ってしまっていることが私は大きな問題だと思います。先日、日本記者クラブで韓国のソウル大学国際大学院教授の朴喆熙(パク・チョルヒ)さんという方が東京大学で集中講義を行って、8月1日に会ってお話を聞いたら、メディア同士の対立ということが非常に問題になるので、いかなる場合でも、どんな小さな協議であっても、大きな政治家レベルであっても、これから協議を続けていくと。必ずきっかけはどこかで見つかると言うことを言っている。そういうレベルの人たちも沢山いるんです。だから日本で現在、研究している韓国人の大学関係者研究者、非常に難しい立場に立っていると思います。

山口

いずれにしてもメディアも真実を、事実をしっかり伝えるということは本当に大事だと思います。

細川

当初は、そういうふうな意図が政権の一部にあったのではと感じますけれども、やはりもう一か月経って未だにこうやって経済への影響が大きいとか、そこは、きっちりと事実を調べるという姿勢が必要だなとは私は思いますね。

山口

韓国政府がこういう主張をしています。国際信用格付け会社フィッチやムーディーズが「日本の輸出管理強化がグローバル経済に悪影響を及ぼす恐れがあると分析した」と。実は、韓国の企画財政部がムーディーズ、フィッチ、スタンダード・アンド・プアーズに出向いて説明していた。まさにこういうロビー活動の影響じゃないかということがあったわけです。さらに、なりふり構わずとさせて頂きました。WTO一般理事会に出席していた金勝鎬(キム・スンホ)新通商秩序戦略室長が韓国に帰国した後ラジオで話したんですが、「私は外交官としての品位を少し落とす、度を超える発言で日本側を攻めたのです」と発言したんです。さらに「日本代表はこのような言葉にも何の反応もできませんでした」とまで言っていたんですね。気をつけなければいけないことがあります。過去にこういうこともありました。国際的な世論戦の中で負けると、どういうことが起きるのか。アメリカのニュージャージー州には元従軍慰安婦の碑などが設置されました。そして福島県産水産物の禁輸措置です韓国側がWTOで逆転勝訴したと。やっぱりこのロビー活動・世論戦ということになってくるのだと思います。

大木

先週のWTOの一般理事会に伊原純一特別全権大使と山上信吾外務省経済局長が出席しました。ただ、このお二人、今、説明がありましたように、韓国の福島県産水産物の禁輸をめぐり、WTO上級委員会で敗れた時に関わっていたお二人ということで、このとき、完全に外交の敗北と自民党は外務省を強く批判していたんですが、細川さん。

細川

状況が全く違いますから。今回の対応と直接結びつけて考えるのは、どうかなとは思いますね。ただ、今回、日本側が何の反応もできませんでしたと韓国側は言っていますが、実態を見れば、韓国側がまくし立てて、他の国々は、もう白けていたんですよね。辟易しているというのが各国の反応ですから、必ずしもきっちり一個一個反論しなきゃ、何しているんだというふうに見る必要は全くないなとは思います。ただし、今後、先ほどからお話しているように、がむしゃらになりふり構わずやるというのが韓国ですから、我々もそこは油断は絶対禁物ですよね。あらゆる手立てを講じて、外務省と経産省もタッグを組んで、一体となって、積極的にやるべきだなとは私は思います。

川村

外務省の外交としては、ここは冷静に判断するような形を経産省も含めて全体で行っていかないと。引っ越しできない隣国同士ですから、いがみ合ってばっかりいてはいけない。出口を見据えたカードを含めて、外務省当局の中では、そういう事を考えている人もいると思います。どこに出口があるのか、そのカードを含めた対応をしていかないと、感情的になりすぎるといけないと思いますよ。

武藤

一言、韓国、特に文在寅政権はどういう政権かということをよく理解していかないといけないですよね。世論をこれだけ盛り上げて、妥協の余地を全くなくしているわけですよ。それで、今まで日本の要求は、今まですべて断ってきているわけですよ。自分たちの要求は、どんどんたきつけて、コストを上げているわけでしょう。これでは、ちょっと外交交渉はできない。金勝鎬さんは、外交官としての品位をものすごく落としていますよね。韓国ときちんとした外交交渉は、今の状況ではなかなか出来ないだろうと。

川村

だから、どこかで向き合わなくてはいけない。つまり、この日米韓でもポンペオ国務長官の外務省的な理解、外交官の理解として言えば、明らかにお互いの解釈の違いであって、河野外務大臣と康京和外相のその解釈の違いというのは自分たちの自国の利益を代表して言っているわけですから。むしろ、アメリカという重しを抜きにして、ここはお互いが、日韓が冷静に組み合って、いかなるレベルでもやっていかないと。文政権がいる間はもうダメだと、文政権が辞任するまでこの問題は解決しないと、そういうことでは外交は成り立たないと思います。

細川

ちょっと誤解があったらいけないなと思いますので。これは外交交渉で交渉するような、マターじゃないということがはっきりしました。輸出管理の世界というのは、各国がそれぞれの判断でやる。韓国もそうしているんですよ。ホワイト国を独自の判断で決めているんです、これは当たり前のことなんです。しかも、これまで協議を、ずっと呼びかけていても、起きてこなかったという事実をちゃんと重く感じるべきであって、今、外交交渉で何か妥協を生み出すとか、そういう世界ではないということだけは、はっきりしておきたいと思いますね。

山口

本当に難しい状況にあるとは思います。この日韓の問題は引き続き、この番組でお伝えしたいと思っております。武藤さんと細川さん、ここまでどうもありがとうございました。

(2019年8月4日放送)