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#128

「陰性を確認する検査を」新型コロナ第2波への提言

新型コロナ対策の緊急事態宣言は解除されましたが、第2波をどのように封じ込めるのか。2020年5月31日の『BS朝日 日曜スクープ』は、これまで新型コロナと闘った人たちからの提言を集め、元厚生労働大臣で、自民党・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の田村憲久本部長を交えて議論しました。これまでタブーとされてきた「陰性を確認する検査」が命と経済の両方を守るために必要となるかもしれません。

■「陰性確認の検査」の重要性

山口

第2波に備えて何が必要なのか?番組では新型コロナと闘った人たちからの提言を集めました。そこから見えてきたのは、今がまさに「闘いの転換期」だということです。つまり、第1波ではとにかく命を守るための対応でした。しかし、第2波では、命を守るのと同時に、経済活動も守らなくてはなりません。これは第1波、第2波の対応の最も異なるところです。命と同時に経済活動を守るためには「検査の考え方」をこれまでと大きく変える必要があるのではないか、というところを見ていきたいと思います。まずバイオ関連ベンチャー企業の代表からの提言です第2波への備えとして「陰性を証明するためのPCR検査の整備」をすべきだということなんですね。「医療従事者、スポーツ選手など人と接触の多い職種では仕事をするために定期的に「陰性」を確認する検査が必要。海外渡航に「陰性証明」が必要になる可能性もある」、つまり、今まで検査と言えば「陽性」、感染者を見つけて治療する検査でしたが、今後は、経済の活動を続ける人が「陰性」を証明するための検査が必要になってくると言うんです。

同様の提言は、都内の大学病院医師からもありました。「定期的な〝陰性検査〟の構築」ということです。「病院職員・学校関係者など公益性が高い職業の定期的な「陰性検査」ができる体制を整備する必要がある」、やはり働く人のために「陰性」を確認するための検査が必要になってくるというんです。つまり今後、重要になるのが「陰性を確認する検査」ということになるんです。実はすでにこうした動きは始まっています。例えば、JリーグのJ1が7月4日に再開することが決まりましたが、再開するにあたって、Jリーグ内に検査部局を新設し、選手、スタッフ、審判員を含む計2340人を対象に6月20日までにPCR検査を実施し再開後も2週に1度のペースで継続検査していくことになりました。まさに症状が無いのに陰性を確認するために検査するわけです。さらに中国と韓国では、感染してないことを証明するための「陰性証明書」があり、ビジネス渡航の際に陰性証明書を所持し、PCR検査などで改めて陰性が確認されれば、14日間の隔離措置が免除されることになっています。こういう陰性証明書があれば入国を許可されるという措置が始まっているんです。さらに、カンボジアやタイなど12か国で、入国の際に「陰性証明書」の提出が必要となっています。田村さん、2月、3月あたりは 「医療崩壊を招く」とタブー視された陰性を確認するための検査。今の局面で経済活動の再開が非常に大きいテーマになっています。やはり「陰性」を確認する検査に踏み込んでいく必要がありますか?いかがですか?

田村

当初、我が国は、PCR検査の検査能力は、確か1日1500人くらいしかなかったと思うんです。今、2万3000人、4000人くらいまでの能力があると思います。もちろん実際、検査されている方は、それよりも少ないんですけど、今、ある程度、検査能力を持っていますが足りません。今、PCRだけじゃないんですけど、10万ぐらい検査する能力を、まずは持たなきゃいけないと話をしているんですけど、そこには抗原検査も入ってきます。症状が一定程度出れば抗原検査でまずスキミングするってことが大事だと思います。PCR検査の方は、言われる通り、症状が出てなくてもいろんなところでPCR検査していく必要があると思います。こうやってビジネスだとかスポーツ、こういうところも必要だと思いますが、一方で“ニューノーマル”の中で、基礎疾患を持っていたり、高齢者の方々、そういう方々を守らなければいけない。そういう方々は医療機関におられたりだとか、それから高齢者施設におられたりするわけですよね。そこで働く方々は、実は症状が出ていなくても一定程度、定期的に検査した方が本当は安全なんですね。調べると大体、1週間に1回やるというペースでPCR検査を1日、33万件くらいやれないと、医療や介護の従事者、働く方々の検査を全員できないということです。なかなかそこまではまだ日本の国は進んでいない、ということでありますから、今は感染拡大が起こった地域に限定してやったらどうだという話をしているんです。まだまだやっぱりこれからPCR検査の能力を増やしていって、そのうえで今、言われたような方々もしっかり対応できるように。今は多分、枠がありますから、それほど感染者いないのでPCR検査もあまり増えてきていません。今の状況ならばビジネス客でありますとか、スポーツの方々も、民間でPCR検査を自費で払ってという形ですが、やれると思います。

■経済と両立するための検査

山口

今後の経済活動再開というところで、国際的な関係で見ていくと、貿易の相手国が陰性証明を求めてくるケースがあるのかとか、インバウンドで海外からお客さんが来るときに、旅館とかホテル、観光施設の従業員が陰性証明を持ってないと、外国人が安心してこられないとか、そういうことも起きる可能性はあると思いますか?

田村

世界中がそうなったとき、世界中がPCR検査の能力をすごく持ったときと思うんで、日本は今、比較的少ないんです。でも、他の国を見ても、1日100万だとかという国はまだないので、そういう意味からすると、まず1日10万人をできるようにする。世界がさらに前に行けば、それに追いついていくという意味で、世界と平仄を合わせて、他の国がそれをやっているなら日本がやらなかったら、それは安心して日本に来られないという話になりますので。それはある意味、一定程度、世界中がこの新型コロナウイルスの大きな感染拡大が収まったときじゃないと、もしくは、それほど多くない国同士での交流に使うという話になってくるんだと思いますが、やはりまだまだPCR検査、他にもLAMP法などもありますが、いろんな検査を整備していく必要はあると思います。

山口

つまり、感染者が落ち着いてきたからといって、これで終わりじゃなくて、PCR検査を国際レベルくらいまで増やしていかないとだめなんじゃないかということでしょうか?

田村

今、言われたみたいに、PCR検査の検査能力が増えてくると、日常の生活をする中で、リスクの低減に使いだすという話が出てくるんだと思います。すると、やはり、今の状況、10万でOKかというと、10万じゃ足らないという話になってくると思いますが、それは世界を横目に見ながら、一方で機械を確保しなきゃいけないんです。今、一日2000くらいですかね、いっぺんに処理できる機械があるんですが、海外で作っていて、なかなか日本で手に入りません。それから今、ロボットが処理するような機械も出てきました。これは日本の企業が、ロボットが全部処理する全自動の機械を作っているんですが、そういうものも日本で開発できるならば、そういうものを使って検査能力を増やしていくということを考えていかなきゃいけないと思います。

山口

岡田さんはいかがですか?検査と隔離と、いつもおっしゃっていますよね。そのあたりがすごく大事になってくる、業界の休業要請を緩和していく中でとても大事になってくると思うんですがいかがでしょうか。

岡田

私は、経済を両立するための検査なんだと思います。九州大学の理論物理の小田垣名誉教授がコロナウイルス感染症の感染をシュミレーションされているんですけど、例えば、現状のままの検査の2倍にすると、新規患者が10分の1になるのに14日だと。4倍になれば8日だというわけですね(注1)。いま田村さんがおっしゃったように、もし10万件ができるようになるとすると、流行の縮小に大きな効果が出てくると思うのですね。ですから、検査を多くやって陽性者を隔離して、治療が必要な人は医療機関、無症状の方もうつさないように隔離する。無症状感染者、サイレントキャリアが感染を潜在的に広げていると考えられますので、積極的な攻めの検査で見つけ出すことが必要かと。そして、陰性者は堂々と経済を回してください。そうやって経済を守っていくんだという21世紀型の感染症対策をお願いしたいと思いますそれから秋冬には流行が大きくなる可能性があるわけです。流行を大きくしないことが医療を守るということですし、緊急事態宣言を回避することだと思います。クラスターは初期にしか追えないと思います。ですから、検査数をたくさんやって、小さな集団の感染の時に早く対処して、流行を大きくしない、そのためにもやはり検査の拡充が大事なんじゃないかなと思います。

(注1)九州大学名誉教授の小田垣孝氏は、PCR検査を4倍にした場合は、隔離しなければいけない感染者が大量に増え、医療崩壊や検査体制の崩壊の恐れもあるとも指摘しています。

川村

岡田さんはずっと、1月末から、この番組に出演してきたときから、いつも検査は、するべきだと。私も厚生労働省の関係者に、なぜそれができないんだっていう質問をしたことがあるんです。その時に、いろいろ批判が専門家会議以外の人から出ているけど、それはオフレコじゃなかったので明かしますけど、厚労省の関係者が言うには、「検査をしろしろと、いろんな批判があるけれども、その人たちは専門家会議のメンバーではないから言っているんですよ」と、いうようなことまで言われるんですよね。実は専門家会議のメンバーに入れば、やっぱり歩調を合わせていくのが、つまりはデータの一元化っていうことに行き着くらしいんです。それは厚生労働省が保健所を通じて感染者がいくらという形で国際的なデータの統計を厚労省がきちっとデータを把握したい。しかし、それが民間におろしたり、いろんな形でバラバラに感染者が、統計が取れないような状態で増えていったりすると、きちんとした最終的にまとめるビッグデータと言ってもいいんですけど、そのデータが拡散してしまうということを厚労省の関係者が言っていたのがですね、今でもその方針が続くんであればなかなか進まないっていうのは私の実感でしたね。

■「設備投資に10分の10の補助金」

山口

今回「提言」をいただいた方々からこういう話も出ているんです。「こうした陰性を確認するPCR検査というのは、医療ではないので保険診療の対象外で、自由診療になってしまう。国としてそれでもサポートできるでしょうか」というようなお話が出ているんですが、この点は田村さん、どうお考えになりますか?

田村

先ほども申し上げましたけど、今、現状は余力があるんですね。こういうところは今、民間もどんどん設備投資していただいていますし、今回の2次補正予算は、設備投資分10分の10、補助金が出るんですよ。ですから持ち出しがないので、まだまだ設備を増やしていただけると思います。もちろん物があるかどうかっていう問題はあるんですけどね。そうなってくると、言うなれば余力があるときには、どんどん民間の方々が、自由契約でやっていただく、こういう話になると思いますが、もし大爆発して、感染爆発して、とにかく今の日本の検査能力を全部感染者の方々に、まずは症状が出た方に使わなきゃいけないっていう話になると、ちょっとそれは止めてくださいって言わざるを得ない。でも、その時には経済活動も、多分、スポーツの活動もできない状況ですから、その時にはそちらのほうに全部シフトすると思うんです。いずれにしても、そうなっても検査できるような、検査能力を整えておくことが大事なので。今、お話ございましたけど、以前は確かに疫学的調査みたいな形で、ある程度、統計は精度をあげていくために、という話があったんですが、今はですね、そういうことがなくて報告が来たものをちゃんと統計に入れるという話の中で、対応していますから、どんどん検査を増やしていくということであります。

山口

経済を守るためのPCR検査、どのように増やしていけばいいのか、考えていきます。医療機関からも、救急医療の現場から、提言いただいています。24時間・365日対応の救急外来で帰国者・接触者外来にも指定されていた『ふじみの救急クリニック』、鹿野晃(かの・あきら)院長からの提言は 【早期発見・早期隔離のためのPCR検査の整備】で、「都道府県の衛生研究所の拡充だけでは十分な対応は困難です。民間の検査会社の支援も必要。試薬に関しても海外に依存しない供給体制の確立が必要」です。確かに先ほどお話出ているんですけど、ご覧のようにPCR検査見てみますと、増えていない現実もあるんですね。1日あたり9470件以上、行っていないというような推移を繰り返しているわけです。

この検査数が増えないことに対して、同じような提言をされている方がいるんです。PCR検査の現場からの提言で、仙台医療センター臨床研究部の西村秀一(にしむら・ひでかず)ウイルスセンター長です。【PCR検査の試薬の確保】が大切だということなんです。「感染が拡大し、PCR検査が必要な時に試薬が不足して検査数が増やせなかった。海外メーカーに依存する中、新型コロナの影響で入荷不足に陥った」ということなんです。さらにこちら、日本医師会のタスクフォースの中間報告が出されています。「医療現場のニーズに合った試薬・機器の需給調整がなされていない。臨床現場即時検査用のPCRシステムは、海外発注に依存し、輸入の見込みが立たないなどの問題があるんだ」という話がありました。

田村さん、このPCR検査に関わった方からこのような言葉が出てきているわけですけども、試薬が不足するという話ありましたね。例えば試薬は海外製なので、色んな国が国を挙げて買い取りに来ているという話を聞いています。日本として一括で買い上げるという動きはなかったんでしょうか。

田村

今ですね、これ、どんどんメーカーさんに作ってくださいと。で、作って売れない場合がありますよね。その売れ残り全部、買い取ります、という契約で作っていただいていますので、今は試薬の確保はできていると思います。ただですね、日本の機器もありますので、そういうものは日本の機器対応という形で色んな準備をしていかなければいけませんが、そこも確保しながら、今、試薬が足らないというのはあまり聞いていないので、もちろん感染が爆発的に増えなかったっていうこともあるんです、おかげ様で。しかしながら、これからも感染爆発が起こった時のためにですね、そういうようなしっかりとした対応を準備しておく必要があるという風に思いますね。

■日本に能力はあったのに、なぜ!?

山口

ここでもう1人、ゲストの方をお呼びいたします。長年医療現場を取材して、PCR検査の現状に大変詳しい、ヘルスケア・イノベーション代表の宮田満(みやた みつる)さんです。宮田さん、どうぞよろしくお願い致します。

宮田

はい、どうぞよろしくお願い致します。

山口

まず宮田さんに伺いたいのは、このPCR検査、増やそうと思っても増えなかったという現実があったかと思います。日本に関しては。そのための方策を考えていきたいと思うのですけど、まず現状として日本にはその能力がなかったのか、それとも能力はあったのかどう捉えていますか?

宮田

それはもう能力はあったと思います。ただ残念ながら、そのバリューチェーンを、つまり試薬とか、先ほどおっしゃっていた検査機器、PCRの機器を製造する場所を海外にほぼ移転してしまったために問題が起こったと思っております。

山口

海外に移転してしまった問題があった?

宮田

はい。国産のPCRの遺伝子をコピーする試薬を作るメーカーも確かに京都にあります。しかし彼らは(中国)大連で工業生産をしているので、こういったパンデミックが起こった時には、その輸出ができなくなります。日本に輸入ができなくなる状況が発生したと思っています。

山口

それは元々、日本国内で生産していたメーカーも海外に移転してしまって、こういう有事の時に入れることができなかったっていうことですね?

宮田

基本的に試薬は価格競争力が重要になりますので、日本国内で製造するとどうしても高くついてしまうという、大きな問題があります。

山口

海外に移転している中で、今回の危機が起こったのですが、例えばこれ宮田さん、厚生労働省が、今回、異例のスピードで国産の試薬、それから(検査)キットについても承認するなどのこの対策を取っていましたよね。この番組でもお伝えしたのですが、そういう厚労省の対策は十分に機能しなかったのでしょうか?いかがでしょうか?

宮田

タイミングは遅いと思いますし、それからもし国内で生産しろというようなことを要請するのであれば、やはり、コストの部分を補償するような財政的な措置が必要だったと思いますね。

山口

宮田さん、それと日本は当然技術国ですので、自動化の技術というのも持っているわけですよね。このあたりも生かせなかった問題もあったと思うのですがここはいかがですか?

宮田

それは非常に重要な指摘で、実はヨーロッパで新型コロナの感染が蔓延した時に、全自動PCRマシーンが動いています。そのPCRマシーンを開発したのは千葉県のベンチャー企業(プレシジョン・システム・サイエンス㈱)なんです。

映像提供:プレシジョン・システム・サイエンス㈱
映像提供:プレシジョン・システム・サイエンス㈱

山口

その千葉県のベンチャー企業が開発したものが、日本では使われてなかったっていうことですね?

宮田

はい、そうです。残念ながらイタリアとかヨーロッパでは、どんどん使われていたのですけれども、日本では残念ながらこれもまだ多分、今月中(5月中)に申請すると言っていたのですけれども、まだニュースが来ていないので、少し遅れていると思いますけど。日本でも認可待ちの状況。

■新型コロナ対策の司令塔は・・・

山口

宮田さん、そうするとすごく日本側の対応として、ギクシャクしているなあという感じを受けるのですが、なぜこういうことが起きているのだと思いますか?

宮田

いくつか問題があります。まず2月1日から指定感染症に指定したと思うのですが、これ非常に良いと思うのですが、そのためにPCR検査というのは行政検査になってしまった。ですから保健所がイニシアティブをとって、一生懸命、頑張ったけれどもなかなか伸びなかった。実はそれを俯瞰して、保健所の能力が足りないのだったら民間の能力を使うとか、様々な措置ができたと思うのですが、全体を調整するような司令塔がなかったというふうに思いますね。

山口

司令塔がなかった?なるほど、能力はあるのに状況を見て、どういう風に動けば良いのか、という所を捉えられなかったと思うのですが、今の宮田さんのお話、田村さんどうお聞きになりましたか?

田村

おっしゃられることを我々も反省しておりまして、その能力はちゃんとあるんです。けれども、実際、検査機能を持って検査して頂くのは地方になるわけなんです、都道府県。国はもちろん感染研(国立感染症研究所)だとか一定程度持っていますけど、しかし、ほとんどは地方なんです。地方がなかなか整備できないのには、できない理由があるわけですよね。それぞれの地域によって違うと思います。民間の検査機関がなかなか見つからないだとか、そもそも人がいなくて検体が取れないだとか、運ぶ人がいないだとか、それから症状が出ていないような人たち、軽いような人たちに入って頂くような施設がないだとか、色んなものがあると思います。そういうものの目詰まりを一つひとつ協力しながら国が、この問題はこうやれば解決できる、一緒にやりましょうという伴走型でやっていけば、もっと早くPCR検査は進んだと思うのです。それができていなかったので、今、厚生労働省の中に検査チームというのを作ってもらいまして、そういうところがしっかりと、各都道府県とやりながら対応していくと。それから各都道府県は、これのみならずチェックリストっていうものも、今度、作りましたので、チェックリストで今のような試薬はどうだ、機器はどうだ、病床がどうだ、ということも含めて、全部チェックして頂いて。チェックリストがあると全部チェックすれば問題点がわかりますので、そういうことも進めながら、今から、今からっていうと今まで遅かったって怒られるのですけども、しっかり地方と、さらに協力をしながら対応して参りたいというふうに思っております。

山口

なるほど。宮田さんいかがでしょうか。今、田村さんからもお話頂いたのですが、今後はもっとやっていくのだというお話ですけれども、例えばこちらで、お話進めていたのですが、今後は陰性を確認するためのPCR検査をもっともっと増やしていく可能性、その必要性があるんじゃないかっていうお話が出ました。今後PCR検査をもっと増やしていくために、先ほど司令塔っていう話がありましたけど、どうすればそこの検査数をもっと増やせるのか、リーダーシップのあり方どう捉えてらっしゃいますか?

宮田

まずは行政検査から、それ以外の今の陰性検査のような民間の要望っていうのを早く分離すべきだと思います。いつまでも行政検査の哲学みたいなものでPCR検査を進めると、どうしても民間の方が疎かになってしまいます。ですから民間の方の要望、民間の活力を利用するように、二つをしっかり分けた方が良いと思います。行政検査も疫学調査のためには絶対必要ですし、クラスター対策を行うために、これは絶対に必要なんですけれども、もう一個、経済復興などに必要な民間が必要としている検査能力を、二階建てで是非進めて頂きたいと思っています。

山口

田村さんどうでしょうか?今のお話聞いて、どんな風に受け止めていらっしゃいますか?

田村

そのためにも、やっぱりPCR検査の検査能力を強化しなければならないので、どのぐらいが必要かっていうのを各都道府県と話してですね、これぐらいの人口規模の所なら、(どれくらいのPCR検査数が)必要ということが出てくると思います。それに対して、先ほど司令塔と言いましたが、私は、国がそこの間に入って、都道府県には担当者が多分おられると思いますから、これ(国)が司令塔になってですね、伴走型で進んでいくことが、色んな地方の悩みも国もお手伝いしながら解決していくということができると思いますし、今、言われたような民間のためのPCR検査、それから行政検査のためのPCR検査、こういうものをその中にどのぐらい一定程度割合をつくっていくのかということも話し合って進めていくことが大事なのだという風に思いますね。

山口

なるほど。全体像を見てね、しっかり次はリーダーシップを取って進めて頂きたいと思います。では、宮田さんここまでどうもありがとうございました。

宮田

どうもありがとうございました。

山口

PCR検査の拡充に向けてなのですが、補正予算の中で気になる数字があるのです。

上山

検査をどう拡充するつもりなのか補正予算からひも解いてみます。1次補正予算では検査体制の強化には94億円がついています。PCR検査等の着実な実施のための経費49.1億円などです。そして2次補正予算では検査体制の強化に622億円がついていて内訳としては地域外来・検査センターの設置とPCR・抗原検査の実施に366億円、検査試薬・検査キットの確保179億円などです。田村さん、安倍総理が拡充する方針を示しても増えなかった「PCR検査」についてなぜ増やせなかったのか、原因を踏まえて、こういう予算がついたのでしょうか?

田村

そうですね。あの安倍さんも、PCR検査を増やさなければいけないと、ずっと言ってきたんですけど、なかなか増えてこなかった、そういう反省もあると思います。先ほども言いましたけれど、PCR検査機器の設備投資も10分の10の補助金というふうに変えまして、今までは裏負担(補助金以外の負担)をしていただかなきゃいけなかったんですね。それに対して、全額、国が補助するというようなことも踏まえてですね、こういう予算。しかも、これで足らなければ、予備費からしっかり対応するという形になってくると思いますから、とにかく検査を増やす、そのためには機能を増やすということが前提のこれは予算だというふうに思っております。

■各界からも切実な提言

山口

いただいた提言の中には、マスクや防護服の問題についてもありました。マスク、医療防護服の輸入メーカー・ファーストレイトの長谷川友彦(はせがわ・ともひこ)社長からの提言です。【マスク確保のため国が民間企業との連携を強化】するべきだと。「アベノマスクのような多くの国民が納得しない製品に税金を使うのではなく、マスクを市場にいきわたらせるように民間企業が持っている調達ソースを活かすような税金の使い方が必要」ということなんです。不織布マスクを含む繊維製品なんですが、4月の輸入額でみると、ほとんど中国からの輸入になっている。この中で民間の力を上手く使って、日本中に行きわたらせる努力が必要だったのではないか。という意見が出ています。

それから、パチンコ業界からも提言がありました。パチンコホールの全国組織、全日本遊技事業協同組合連合会阿部恭久(あべ・やすひさ)理事長からです。【休業要請の選定基準の明確化と補償の拡充】を訴えています。「パチンコについてなんですが、パチンコホールは3密が発生しにくく、イメージではなく科学的分析を適切に行った上で、取るべき対応や休業が必要な業種を判断して頂きたい。休業中のパチンコホールの固定費は他の業種よりも非常に高額」なんだということです。緊急事態宣言の後ですが、休業要請に従わず営業していたパチンコ店を店名公表するというようなこともありました。このパチンコ業界からすれば、田村さんからもありましたけど、パチンコしながらしゃべるわけではないので、3密にはあたらないんではないか、というような話が出てきているわけです。

教育現場からの提言もあります。千葉大学の藤川大祐(ふじかわ・だいすけ)教授で付属中学の校長も務めています。【休校や再開基準の明瞭化】をしてほしいと。「あらかじめ国などが休校要請をする基準を定めて、誰もが予測可能な形で休校や学校再開の措置がとれるようにしてほしい。またオンライン授業を一定の条件を前提に授業時数に含めることを認めてほしい」という声が上がっています。確かに、一番振り回されたのが学校かもしれません。今回のことを受けまして、学校の長期休暇、夏休み冬休みが大幅に短縮されるような動きも出てきているんです。

■医療機関の支援と防護具の生産態勢

山口

様々な業界からの提言が出てきているんですが、岡田さんはどのあたりご注目されていますか。

岡田

今回、マスクが足りないっていうこともありまして、やはり国産っていうことが大事だなということをすごく感じた次第なのですね。それから、補正が出てきたので、田村先生ぜひお聞きしたいんですけれども、医療切迫度というのは緊急事態宣言の重要な要項にはいっております。コロナのオーバーシュートを避けるためにですね、ベッドを確保していた大学病院は億単位の損失を毎月、垂れ流しながら協力している。また、大学病院だけでなく医療機関が、コロナウイルス感染の患者さんを受け入れれば受け入れるほど損になるっていうような状況になっている。経営的に苦しくなるのです。医療機関の経営が困難な状況になっている。その補償というのは、今回の補正では入るんでしょうか。ベッドが確保できませんと、またたらい回しとか、国民が痛手を食うことになります。医療切迫度が上がれば、緊急事態宣言の条件要項にも入っているわけですし。医療を守るために医療機関に経済支援をというのは、今回の補正ではいかがでございましょうか。

田村

コロナの患者の方々に対して対応して頂いている医療機関は、以前の3倍診療報酬が増えることになります。それだけではなく、空床ですね、空いているベッドの補償をしなきゃいけない。今まではコロナ用にあったベッドだけだったんですが、そのフロア全部、実は使えなくなるので、そういう使えないものも含めて、空床の補償をしようということで、全体としてコロナの対応のところは、今までコロナ以外の患者の方々を、お預かりをいただいていたときよりも、さらに収入が増えるという形に、そこはなります。ただ一方で、コロナじゃないところは、今、患者さんが減っておりますから、なかなか収入が少なくなっているということで、それに関しては融資でありますとか、あとは診療報酬の前払いという形で。やはり手元に資金がないと、病院運営できませんから、そういう事も考えながら対応していく。それからあと感染予防という形でしっかりお金も入れさせていただいて、何とかとりあえずのところ当座をしのいでいただくと。もしそれでも成り立たないっていうことになってくれば、これまた更なる方策を考えていかなきゃならないというふうに思います。やはり医療機関がなければ、コロナとも闘えませんし、コロナの患者だけじゃないんですね。他の患者の方々が圧倒的に多いわけなんです。そちらも倒れちゃいますと、病院が、その方々がやっぱり健康を損なってしまいますので、やはり医療機関というものはしっかりとお支えをしていきたいというふうに思っております。

山口

医療現場が最大の頑張っているところなのでぜひ支援を続けて頂きたと思いますが、田村さんそのほかでは色んな業界からの提言があるんですが気になったところはいかがでしょうか。

田村

マスクは、いま多分、中国の方が落ち着いたんで、中国からマスクが入って来てマスクが世の中に回り始めているんですが、岡田先生がおっしゃられるとおり、そもそも国内でマスクをもっと作らないといけない。でも、採算が合わないんです、普段。それは医療用マスクを含めて。しかし、こういう事を考えると備蓄だけではなくて、私は個人的には作れる能力を保持しておいて、材料も持っておいて、いつでも必要な時にそれを動かしてもらえると。そのための管理費のお支払いを、常に通常しておくような、何か考えないと、これから感染症 コロナだけではなくて、もっと恐ろしい感染症が来るかもしれないので、そこをしっかりと対応しておかなければならないと私は思っております。

山口

有事を考えて効率性だけではなくて持っておくものを持っておくということですね。

田村

まだ政府はそのような対応になっておりませんが・・・。

山口

これからやって頂くということになりますよね。

田村

検討してまいります。

■支持率低下「真摯に受け止めています」

山口

新しい情報が入って来ました。新型コロナの感染が拡大している北九州市なんですが、新たに12人の感染が確認されましたがその内訳が分かってきました。このうち4人が小学生、2人が中学生です。小学生の4人は小倉南区の守恒小学校に通う10歳代の男女で感染が確認されていた女子児童のクラスメイトです。小学校でクラスターが発生している可能性があるということなんです。田村さん、これどうご覧になりますか。

田村

やはり学校を閉じていた時は、なかなか分からなかったことで再開をして、学校でクラスターが起こると。やはり、小学校は特に濃厚接触しますよ、子供たちは、じゃれて体触ったりしますからやはり感染の拡大をする可能性が高いですよ。それを防ぐための色々な対応をしなければいけないですが、比較的重症化する子供たちは少ないと言われていますが、それでも基礎疾患を持っていたり、色んな理由で重症化する子供たちもいると思います。用心をして頂かなければいけませんし、子供たちが家に持ち帰って家族にうつす、家族がまた会社でうつす、というようなことを考えると、やはりこれは危険な話でありますので、学校でどうやって感染予防をするかもっと考えていかなければいけないという、一つの証左だという風に思います。

山口

岡田さんは学校のクラスターの話どうとらえていますか?

岡田

丁度いま再開するという所なので、文科省から学校のクラスター予防のガイドラインは出ているんですけど、それも非常に厳しい現場としては厳しいものなので、これなかなか防ぎ難いなと思います。

山口

川村さんいかがでしょう?

川村

私も難しい問題だと思いますけどやはり学校の中でも今後さらに感染症防止対策というものをどうするのかをガイドラインだけではなくその地域その学校にある種の特殊性があるのだとすれば、そういう事も含めて自治体ときちんと詰めていくというそういう必要があると思います。それに対して私は予備費の10兆円、この使い方がいわゆるアベノマスクといわれているような466億円ぽっと出すようなそういう使い方ではなくて、今、出て来た新たな学校再開に伴う問題とか、そういうものにきちんと田村さんのところの本部と含めて国全体が決めて、内閣だけで決めないようにして頂きたいと思います。

山口

田村さん支持率なんですけども、やはり政治への信頼度が下がっていますよ。でも、政治に期待する面はすごく大きいと思うんです。こういう局面ですからいかがでしょうか。

田村

検察庁法の問題もあったと思うんですけども、正直申し上げてコロナ対策もあまり評価頂いていません。これは我々真摯に受け止めております。一つはPCR検査の問題。そしてもう一つは色んな対策を打っているのですが、遅いと言われていますので、遅いというのを払拭してすぐに動けるような、そんな対応をしてまいりたいと思います。

山口

これ以上感染を増やさないために、これから国民一体となって頑張って行こうとしていますから、是非、政治にも頑張って頂ければと思います。きょうは皆さんありがとうございました。

(2020年5月31日放送)