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#166

幕末に建てられた名主の館
~大修復で甦る「旧井上家住宅」~

今回は千葉県の「旧井上家住宅」を訪ねます。井上家の歴史は古く、江戸時代の初め頃より尾張町(現 銀座6丁目付近)で商家を営んでいた記録が残されています。江戸中期には、享保の改革の一環として実施された手賀沼の干拓に参入するため、現在の我孫子市布佐の地に移住しました。井上家はこの地で新田開発に取り組み、名主として力を持つようになります。しかし度々襲った利根川の氾濫により、その都度手賀沼周辺も洪水に見舞われ、ようやく干拓事業が終了したのは何と昭和26年。12代目当主の時代のことで、実に200年以上の歳月がかかりました。そんな歴史を持つ井上家の敷地内には計6つの建物が現存し、現在順次修復工事が続けられています。それにより、今まで確認できなかった内側部分の調査も進み、当時の建築技術や年代が判明しました。長い歴史を持つ井上家だけに、建物は江戸期から戦前昭和期までのものが混在しています。最も古い建物は主屋で、幕末の安政5年に建てられました。伝統的な上層農家の構えですが、式台玄関などは昭和期の増築で、伝統と近代の融合が見られます。旧井上家住宅は、我孫子の名主の生活を体系的に知ることのできる稀有な存在です。

取材先情報

旧井上家住宅

千葉県我孫子市相島新田1番地
TEL:04-7185-1583(我孫子市教育委員会 文化・スポーツ課)
公開日:火曜日から日曜日
    (月曜日、年末年始は閉館。ただし、月曜日が祝日の場合は、次の平日が閉館)
    ※学校行事で来館する場合は、開館日、開館時間は応相談。 
公開時間:午前9時から午後4時(入場は午後3時30分まで)
入場料:無料
交通:【電車の場合】上野駅(JR常磐線)→我孫子駅(JR成田線)
   →布佐駅南口下車・徒歩約20分(布佐駅南口→市民図書館→布佐下通り→旧井上家住宅)
   【車の場合】常磐自動車道(柏インターチェンジ)→国道16号桜台左折→
   手賀沼ふれあいライン(約13.5キロメートル左側:専用駐車場あり)

※上記以外の情報については、公開出来ません。