BS朝日

放送内容

#296「全盲先生から生徒へ ~ラストメッセージ~」

埼玉県皆野町で、町立中学校の教壇に立ち続ける全盲の国語教師がいます。新井淑則(よしのり)先生(60)は、両目の視力を失いながら普通中学で授業を受け持ち、これまで1000人以上の生徒たちと歩んできました。
大学卒業後、念願の教師になった新井先生に突然の悲劇が襲ったのは28歳の時。右目に網膜剥離を発症し失明。34歳で左目も失明し視界は閉ざされました。一時は自殺も考えましたが「もう一度、中学校の教壇に立ちたい」と、点字の習得や盲導犬との歩行訓練を積み重ね、9年かけて復帰を果たします。
国語の授業では、黒板にすらすらと字を書き、声だけでどの生徒かが分かります。「目が見えないのに本当にすごい!」「一緒にいて飽きないし楽しませてくれる」…生徒たちも心から信頼しています。ヨシノリ先生が大切にしているのは生徒の声を聞くこと。見えないからこそ見えるものがある…。受験のこと、未来のこと、思春期の悩みと向き合ってきました。
60歳になり、まもなく退職のとき。時にサポート役を買って出てくれた3年生と一緒に卒業することに。卒業生の中に、ひときわ見守ってきた、左手に障がいがある男子生徒がいました。「教職をかけても守るのが私の使命」…そう誓ったヨシノリ先生が伝えたのは「障がいを隠さないこと」…。
男子生徒は「左手のこと」「時には手伝ってほしい」ことを同級生みんなに伝え、真っ直ぐに学校生活を送ってきました。3年生になって書いた作文にはこう綴られています。「人の優しさに気づいたとき、自分が幸せであると感じます」。
新型コロナが学校生活を襲っても、ヨシノリ先生と生徒たちは、体育祭や学年集会など、精一杯思い出を紡いできました。
そして迎えた最後の授業…。新井先生から生徒たちへのラストメッセージ…。
「勉強より心が大事なんだよな…」。
幾度の苦難を乗り越えた全盲先生と、生徒たちの歩みを見つめます。