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#202

新型コロナ「第6波」感染者急増 3回目のワクチン接種は!?

2022年に入り、新型コロナウイルスの感染者が急増、「第6波」に突入したとされています。1月21日からは、まん延防止等重点措置の適用が東京都や神奈川県、愛知県など、1都16県に拡大されます。2022年1月9日の『BS朝日 日曜スクープ』は、先行して感染が広がった沖縄県で対応にあたっている専門家と中継をつなぐとともに、3回目のワクチン接種の状況を特集しました。

■「欧米での爆発的な感染が日本でも」

菅原

年が明けてから、新型コロナウイルスの感染者が全国各地でかつてない勢いで増加しています。海外ではオミクロン株の重症化リスクが低いという報告がありますが、日本では安心できない兆候も現れてきています。それでは本日のゲストをご紹介いたします。政府の専門家会議や厚生労働省のアドバイザリーボードで新型コロナ対策にあたってきました、東邦大学の舘田一博教授です。よろしくお願い致します。

舘田

どうぞよろしくお願いします。

菅原

そして、もうひと方、沖縄からリモートで参加していただきます。沖縄県で政策参与として新型コロナ対策に当たっていらっしゃいます、沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩さんです。先生、大変な中、よろしくお願い致します。

高山

高山です。よろしくお願いいたします。

菅原

沖縄の状況も詳しく伺っていきたいと思います。お伝えしていますように、全国で経験したことがないような感染急拡大に直面しております。まず感染拡大状況の目安となります、きょうの新規感染者数を確認していきたいと思います。東京は1223人。それから大都市圏で言いますと、大阪で880人、そして黄色い枠が、きょう(1月9日)からまん延防止等重点措置が適用されている地域ですが、広島が619人、山口が152人、それから沖縄で1533人となっています。全国の午後6時時点の感染者数が7482人、重症者が午前0時時点で90人、こういった数字になっております。

今回の特徴は、感染者が増えるスピードが速いことです。大阪は1日70人でしたが、1週間後のきのうは891人と約13倍。きょうからまん延防止等重点措置が出ている広島は21人から1週間で547人と約26倍。山口で約9倍、沖縄で約34倍になっています。舘田さん、感染者がこの1週間、一気に増えていますが、この広がりをどうご覧になっていますか?

舘田

そうですね。年末に欧米で爆発的な感染症の増加が見られていた。その時はまだ対岸の火事のような形で見ていたわけですけども、まさに欧米の爆発的な増加が日本でも始まっているということ。アメリカやヨーロッパでどういうことが今、起きているのかということをしっかりと解析して、そして日本も次に備えていくということが重要になってくると思います。

菅原

こちらが、「倍加時間」という、感染者数が倍になる時間ですが、直近の1週間で見ると、東京が1.9日、大阪が1.7日、沖縄が1.3日となっています。これがいかに速いかと言うと、第5波では最大でおよそ7日だったんです。舘田さん、改めてこのデータはいかがでしょうか。

舘田

まさに驚くようなスピードでこの感染者が広がっているということを示しています。あともう一つは、このオミクロン株においては、潜伏期間が3日という形で、従来は5日から10日ってなっていたものが、それが短縮して、それが倍々の増加に関与しているんじゃないかなということが考えられると思います。

菅原

症状が出て人にうつすのも早いということで?

舘田

そうですね、まさにインフルエンザで見られるように、人に早くうつして、そして3日で症状が出て、そして広がっていくというような、そういう現象を表していると思います。

新型コロナの感染者は18日、全国で3万2000人を超えて、東京5185人、大阪5396人、広島900人、山口260人でした。沖縄県は15日に1829人と過去最多を更新し、18日は1443人でした。

■「年末年始は否応なく高齢者も」

上山

高山さん、6日の厚生労働省のアドバイザリーボードでは、現在の感染者増加は「去年のクリスマス前後の影響で、年末年始の帰省などの影響はさらにこれから出てくる」と分析していますが、高山さんは現場にいらして、この辺りはどうお感じになっていますか。

高山

はい。沖縄の状況は脇田先生がおっしゃる通りで、クリスマスとかその忘年会で感染した人たちが今まで明らかになってきたというところですね。こうした年末の宴会には高齢者、やっぱり気をつけて参加していないんです。このため、今まで感染が明らかになってきているのは若い人たちに集中しています。しかし、そろそろ年末年始の帰省とか親族の集まりによる感染者が出てくる頃で、こうしたものは家庭内で催されていますから、高齢者が否応なく巻き込まれます。この数日の救急外来をみても、高齢者が増えてきたなという実感を持っています。

菅原

東京でも新規感染者が急増しています。昨日の新規感染者は1224人でした。3日の時点で3桁になったわけですけども、三が日が明けた時点でも151人ということで、そこからさらに10倍近くまで増えていることがわかります。これを第5派の時と比較すると、今回は151人から1224人になるまで4日かかりました。第5波では同じくらいの規模に広がるまでどれくらいかかったのか。6月14日208人だったのですが、そこから今の東京都同じ水準、1200人台になるまで、7月16日ですから32日間かかったということになります。(東京都の新規感染者数は18日、5185人でした)

感染の急拡大を受けて、きのう小池都知事は「デルタからオミクロンに代わってその急激な変化で景色が一変した。前週の同じ曜日と比べると約15倍という、驚異的な感染拡大が続いている」と強い警戒感を示しました。あまりの感染急拡大で、無料検査で検査数が増えたからではないかという声もありますが、陽性率を見ると、1日の時点で陽性率1.1%だったのが、きのうは5.8%となりました。舘田さん、陽性率5.8%の数字を見ても、着実に我々の近くにまで新型コロナウイルスが近寄ってきている、そう見てよいのでしょうか。

舘田

はい。残念ながら確実に感染者数の増加が起きているということ、しかも先ほど説明がありましたように、この増加はまだ年末年始の効果の一部しか反映してないということを考えると、まさにこの3連休の影響がそれに重なってくると。そうすると今週、そして来週にかけて、さらに感染者数の増加が増えてくることを、考えておかなければいけないと思います。

■「流行の速度が違う」「水面下の感染は不明」

菅原

そして感染状況が深刻な沖縄です。新規感染者はきょう1553人確認されました。第5波の過去最多を一気に更新している状況です。オミクロン株への置き換わりは80%以上となっています。新規感染者を世代別で見てみますと20代が51%と半分以上。10代以下から30代を合わせると80%を占めています。

高山さん、実際に対応に当たっていて、これまでの新型コロナウイルスと比べて今回の波は何か違う点、感じますでしょうか。(沖縄県の新規感染者数は、1月13日に過去最多の1817人に達しました)

高山

違うのは明らかに流行の速度、立ち上がりの速さですね。今、ご紹介いただいたように、立ち上がりの中でアクティブな若者たちから始まるというのはこれまでと変わりがありません。ただやはり、これまでになく若者たちに陽性者が集中しているというのはありますね。この背景には今、ご紹介いただいたように、やっぱりその検査を無料化したことが、私はあると思っています。つまり、これまでだったら検査を受けていなかった若者層が検査を受けやすくなったんですね。例えば職場とかで心配だから検査を受けて来いというのを、これまでは有料だったものが無料になったので、陽性率の高い層が検査を受けられるようになってきたということで、陽性者の感染が広がった原因ではないんですけども、陽性者を沢山、見つける要因にはなっていると思います。

菅原

つまり、市中にいる感染者が捉えられているということでしょうか?

高山

検査が無料化したことは歓迎すべきことで、さらに抗原検査のキットが普及したということもあって、これまでよりは捕捉できるようになったと思います。ただ、水面下でどれぐらい広がっているかはまだわかりません。

菅原

そうですか。そういった中で1500人という新規感染者の数字、きょう(1月9日)も出ていますけれども、どういった感染経路が多いということがわかっているんでしょうか?

高山

やはり飛沫と直接接触が一番多いと思います。もちろんエアロゾル感染も起こしていますが、頻度としては、やはり飛沫と直接接触だと考えています。

菅原

まだ年始以降の影響、どれだけ出ているかわからないんですが、例えば若い方の間での感染拡大、飲食店なのか家庭内なのか職場なのか、そういったところは、わかってきているんでしょうか?

高山

疫学調査を見る限りにおいて、実は不明が半数近くあるので、全容は明らかではないんですけれども、やはり飲食の場での感染というのが報告としては多いですね。あと職場でマスクを着けずにちょっと仕事していたとかですね、一緒に車に乗ったとか、そういったことも感染の要因になっているようですね。

■「沖縄で起きていることが日本全国に」

菅原

そして、最も気になる沖縄の感染者の病状についてですが、昨日(1月8日)の段階では自宅療養が1513人、宿泊療養478人、入院・療養等調整中が3111人、入院しているのは233人となっています。入院者の内訳は、国の基準で重症者は17人、中等症が87人です。

これまでと重症度を比較してみると、左側がアルファ株が中心だった7月の時。無症状・軽症は72.8%だったのに対して現在は92.3%が無症状・軽症。酸素投与が必要となる「中等症Ⅱ」は、7月が10.8%ですが今回は3.7%。気管挿管を必要とする重症者は7月は0.9%だったのが、今回は0%となっています。症状が軽い人が多く見えますが、高山さんは「発症早期のため重症化していないことも考えられる。また、若者中心の流行であるため、現時点では高齢者における病原性の評価は困難である」としていまして、今後、高齢者層に感染が拡大した場合、重症者がどうなるか?ここが大きなポイントだとしています。高山さん、重症度についてはオミクロン株というのはまだ評価は難しいということなんですね。

高山

まず若者の重症度が低いということは、だんだんやっぱり見えてきたなという実感は持っています。来週の前半には沖縄から若者に関するデータは整理して、どれぐらいの重症度なのかってことは、やはり、先行して流行している地域からの責任として、整理して情報を出したいと思っています。ただ一方で、今、紹介いただいたように、ハイリスク者、特に高齢者についての病原性判断というのは、沖縄県でもまだ判断できません。おそらく若者よりは重症度が高いでしょうけれども、今後、高齢者への移行が進んでいった段階で、さらに高齢者が感染してからすぐには重症度が判断できないので、2週間経ってから、重症度評価を沖縄から発信できたらと思っております。

菅原

今おっしゃったように、10代以下それから20代30代の方々が、現状、割合が高いということで、先生がおっしゃるにはこのリスクが高いとされている、例えば60代それから70代以上の方々に感染が増えてきた場合にどうなるのか、これがわかってくるのが2週間から1カ月後ということです。今のところ、高齢の方の割合というのは、増える傾向にあるんでしょうか?

高山

ハイリスクの感染者が少ないことは良いことなので、データが作れないというのが一番ハッピーなことなんですね。ただ、残念ながら、少しずつ救急外来の実感としてですね、高齢者施設の集団感染などが出てきていますので、実際のところ、少しずつ高齢者のデータが今、蓄積し始めているところです。こうしたところ、特にワクチン接種率とも大きく関係しますね。2回ワクチンを接種している人たちでどうなのか、未接種の人たちでどうなのかというところも分けてデータをきちんと収集して発信していく必要があると思っております。

菅原

先生がおっしゃったように、ハイリスクの方々にいかに感染を広げないか、こういったところが重要だと思います。舘田さん、沖縄の感染状況をどう見ていますか。

舘田

まさに本当に大変な状況になっている、そんな中で、高山先生に参加していただいて、情報を共有していただいているということは非常にありがたいことで、おそらく沖縄で起きていることが今週来週ですね、日本全国で見られてくるわけですから、非常に注意していかなければいけないと思います。

■「濃厚接触者は毎日、検査を受けて勤務」

菅原

その沖縄では感染者の急増で、このようなことが起きています。重点医療機関における、医師や看護師の休職数ですが5日、154人と過去最悪の状況となっています。

玉城デニー知事は「現在 医療従事者の感染等により休職が多数発生し、人手不足を原因とした医療機関の診療制限などが生じている」と危機感を示しています。高山さんも中部病院で実際に診療にあたっていらっしゃっていて、こういった影響は感じていらっしゃいますか。

高山

はい。残念ながら私の病院も救急の一部を止めざるを得ない状況になっております。

菅原

救急が止まっている一部。

高山

一部ですね、一部なんですけど止めておりまして、医療スタッフを確保するのが困難になってきているからです。私がアドバイザリーボードで出した休職数158人、この数字は、医師・看護師です。私の手元のデータだと327人が最新のデータになります。327人の医師看護師が今、休職しているということです。沖縄の取り組みを少しご紹介させていただくと、もう沖縄県では既に濃厚接触者であっても、毎日PCRまたは抗原検査で陰性を確認しながら働き始めるようになっています。そうしないと医療が回らないからですね。もちろん、感染者はさすがに働くことはありませんけれども、濃厚接触者については毎日検査をしながら、現場で診療にあたってもらっています。

菅原

そういった意味では濃厚接触者に関しては14日間の自宅待機という制限がありましたが、この辺りは今、どういう状況にあるんですか。

高山

実際は厚生労働省が8月の段階で、医療逼迫した状況であれば、濃厚接触者に毎日検査をしながら就労することは認めるという事務連絡を出しております。沖縄県もその状況になっているので、対応を切り替えてきたということになります。

菅原

具体的にはどれぐらいの待機で現場に出ていらっしゃるんですか。

高山

即、働いています。これは医療機関ごとに医療機関でルールは違うと思いますね。3日は休んでもらうとか5日は様子を見るということがあると思いますけれども、検査をきちんとしていくことができれば、就労すること自体は認められております。

上山

舘田さん、分科会でも、例えば一定のルールはあるけれども地域・地域によって運用は変えていく、こういったことは議論されているんでしょうか?

舘田

そうですね。分科会と共にアドバイザリーボードでも、この問題は非常に大事で、まさにうまくベッドを回していかないと、医療逼迫はどんどんどんどん進んでいきます。そういう意味では今、高山先生からお話がありましたけども、沖縄で先行して、そういう取り組みをしているわけですから、それのいいところを横展開していくということが大事になってくるかと思います。

上山

河野さん、医療機関の人手が削られているという問題、どう思われますか?

河野

大変厳しい状況だと思うんですが、ちょっと素人ということで質問をさせていただきたいんですが、こうならないために、今、医療従事者の方から優先的に3回目の接種をやっていると思うんですけども、それをやってもなおかつこういう状況になるということなんでしょうか?

舘田

まだ3回目の接種が残念ながら予定通り進んでないんですよ。

河野

医療従事者の方にも?

舘田

遅れているということがあるから。

河野

それは問題ですね。

舘田

そういう中でブレイクスルー感染を起こしてしまうということが起きているということであります。

河野

わかりました。

上山

医療関係者についても、鋭意、ワクチン接種は進めているということでよろしいんでしょうか。

舘田

まさにこれは非常に大事な問題で、どうやって3回目の接種をこの1月2月に進めるか、ということがキーになってくると思います。

■在日米軍の外出制限 ようやく大筋合意

上山

そして沖縄の感染状況ですが、在日米軍から広がったとみられています。きょう岸田総理はNHKの番組で「不要な外出は認めないことについて大筋合意をするところまできた」と述べ、アメリカ側と大筋で合意したことを明らかにしました。

その後、詳しい情報が入ってきまして、基地からの外出は、あす10日から14日間は必要不可欠な行動に制限するという措置が決まったということです。ただ、振り返ってみますと、在日米軍での感染拡大が表面化し、林外務大臣が在日米軍司令官に「遺憾の意」を伝えたのが先月22日でした。河野さん、アメリカ兵の外出制限ですが、要望しても時間がかかっているような気がするんですけども・・・

河野

例えばアメリカ兵が街で不祥事を起こしたような場合、一時的に外出はさせないという、そういう強硬措置をとることは今までもままあります。したがって、やろうと思えば全然できるんですけども、ただおそらくですが、もちろん陽性の人を外に出すという事は絶対しませんが、全くそういう人でない人まで外に出ちゃいけないんですかということを、やはりアメリカ側は尋ねたんじゃないかと思います、日本側に。アメリカとしては、そこまで自由を束縛する必要があるんですか、ということの疑問はおそらく持っていて、時間かかったんじゃないかと思うんですよね。ただ、やはり最終的には、こういう方向になっていますから、絶対、日本社会に迷惑をかけちゃいかんということで、米軍が決断しようとしているんだと思います。

上山

これは在日アメリカ軍の話なので、河野さんに聞くことではないのかもしれないんですけども、10日から14日間は必要不可欠な行動に制限することになりました。「必要不可欠な行動」とは、どういったことが該当するのですか。

河野

ケースバイケースですね。まず軍事上の必要性で、やっぱり外に出さなくちゃいけないっていう場合もおそらくあるでしょうから、自衛隊との連絡調整とかですね、そういったことじゃないかと思います。

上山

ただ外に、飲食店に出るといったことは?

河野

それはもう止めていると思います。

■大半の高齢者は1月末で接種から6カ月

菅原

世界では感染者が3億人を超えるなど「オミクロン株」による感染拡大が続いています。イギリスは1日の新規感染者が約22万人ですが、亡くなった方は、8日は313人となっています。死亡率は単純計算ですが0.14%、1万人に14人の方が亡くなるという状況です。さらにアメリカは1日の新規感染者が約108万人、入院の状況は、現在入院中の方が約14万人、ICUに入っている方が2万人超、どちらも過去最多の水準に迫っています。ただ、海外の感染状況ではオミクロン株は「これまでより重症化しにくい」という報告が発表されています。

しかし、この「これまでより重症化リスクが低い」という報告がそのまま日本にも当てはまるのか?実は「大きな不安」があります。それはワクチンの3回目接種です。イギリスは3回目の接種率が61.3%、アメリカは36%です。これに対して日本は0.6%にとどまっています。3回目接種が進んでいない日本で、海外と同じように重症化リスクが低くなるのか。3回目接種がオミクロン株のリスクをかなり抑えているという報告が次々と上がっています、上山さん。

上山

アメリカのマイアミ州デイド郡の入院者した人のワクチン接種状況です。入院する方が最も多いのが緑の、ワクチン未接種者。続いて黄色の2回接種、青の3回接種の方は、かなり少なくなっています。それぞれワクチン接種した人数を加味しても、3回目を接種した人は入院が抑えられています。

韓国からもこのようなデータが出ています。3回目接種を受けた60代以上と2回接種済みの同年代の人235万人を調べたところ、3回目接種すると感染リスク、重症化リスク、死亡リスクが大きく下がっています。3回目接種でリスクが大きく下げられているということは、3回目接種が進んでいない日本はどうなのか、高山さんは、3回目接種が進んでいない中で感染の急拡大を迎える、この状況をどのようにお感じになっていますか。

高山

日本は任意接種ですし、努力義務があっても強制ではありません。ですから若い人たちが3回接種についてどこまで応じていただけるのかというところは難しいところもあって、実際のところは、このワクチンによって感染の急拡大そのものは防げなかっただろうと思います。ただし、高齢者が自らを守るために3回目の接種を積極的に受けていただくということは大事なことで、沖縄は残念ながらもう流行が始まって、ここまで広がっています。ぜひ全国では3回目の接種を急いでいただければ、流行そのものは防げなくても間違いなく被害は減らせると思います。

上山

沖縄においても、もう少し3回目の接種、高齢者の方々、医療従事者に対しては早かった方が良かったんじゃないかという思いは高山さんはお持ちですか。

高山

はい。医療従事者についてはかなり頑張って、12月までの間にかなり接種が進んでいました。私も打っておりますけれども、ただ、やはり高齢者に対しての接種が十分進まなかった。せっかく時間稼ぎを頑張っていたんですけども、先ほど、米軍のことも紹介されましたが、不意をつかれて一気に広がったところは非常に残念に思っております。

■ワクチン在庫あっても…3回目“前倒し”停滞

上山

これまでの第一波からの日本の死亡率を確認しても、デルタ株が中心だった第5波の死亡率が最も低くなっています。ワクチン接種が進んだことも影響しているとみられます。舘田さん、ウイルスの毒性に注目が集まりがちですが、ワクチンなど、人間側の免疫の問題も大きく関わってくるということになるんでしょうか。

舘田

そうですね。ここに示されたように、第5波、デルタ株による感染の死亡率を非常に低く抑えることができた、いくつかの要因があるかと思います。一つはやはりワクチン接種がかなり急激に進んだ、そういう時期でありますし、また、若い人を中心とした感染が主であったということ。それともう一つは、この感染症に対しての治療、抗体薬も含めて、我々がこの治療を少し上手くできるようになってきているということが大きいかと思います。

上山

そういった観点からも、やはり3回目の接種というのはやっぱり重要だなということですか。

舘田

そうですね。まさに3回目のブースター接種をいかに進めていくのかということが非常に大事になってくると思います。

菅原

2回目のワクチン接種から6カ月経過した時の効果について、このようなデータがあります。発症予防効果は7.9%まで下がる、重症化予防は35.2%まで下がる、死亡抑制は50.4%まで下がる、それぞれ効果が減少するというものです。

これまでのワクチンの接種状況ですが、ポイントは7月31日、65歳以上の75%が接種完了。政府は高齢者の「全希望者達成」と発表しました。ここから、高齢者はワクチンで守られてきたわけですが、75%の高齢者が1つの目安である6カ月を1月31日に迎えます。つまり、2月から高齢者のワクチンの効果が薄れ、リスクが高まる可能性があります。そのリスクを防ぐためにも、改めて3回目のワクチン接種が重要だということなんです。舘田さん、2月には多くの高齢者の方々、リスクが高まってしまうということですから、極めて今、非常に重要なタイミングになっているわけですね。

舘田

そうですね。今、ご説明いただいたように、2月になってくると、もう本当に多くの高齢者が、感染抵抗性が下がるということが明らかになっているわけですから、何としても、この1月2月で、このブースター接種をしっかり進めていくということが大事になるかと思います。

菅原

3回目のワクチンのスケジュールですが、最新のものでこうなっています。12月から医療従事者、高齢者、そして一部の一般の方が対象者となっています。

岸田総理大臣が「医療従事者と高齢者3100万人の方々を対象として前倒しを行います」こう話したのが先月の17日でした。では実際どこまで進んでいるのか。最新の12月の接種対象者は879万人です。これに対して、現時点での接種は75万2799人、1月6日時点でこの数字にとどまっています。1日の接種が4~5万人ペース。1回目、2回目では河野太郎ワクチン担当大臣が先頭に立ち、1日100万回以上のペースで接種を進めましたが、それと比べると3回目はまだスピードが上がっていません。この75万という数字ですが、実は、前倒す前の12月の対象者104万人にも届いていません。今の時点では、前倒すどころか、前倒す前の予定も実現していません。

■3回目接種「できるところから進めていく考え方必要」

菅原

高山さん、先ほど、まだまだ沖縄でもワクチンの接種、進んでいないということですけれども、こういった数字からも、やはり周辺の方々、まだ医療従事者の方々、高齢者の方々、進んでいないということなんですね。

高山

はい。高齢者の方々の接種がなかなか進んでいなくて、本当に市町村の方々もいろいろと急なことで苦労されていると思いますけれども、市町村だけじゃなく県も応援し、医療従事者もきちんとワクチン接種に参加する。そこら辺のチームプレー、もう少ししっかり確立していく必要を感じています。

菅原

進んでいない原因はどこにあるのか?まずワクチンの在庫は3800万回分、これはすでに国内にあるんです。これがどうなっているのか?堀内ワクチン担当大臣は「既にファイザー社ワクチン約1600万回分を昨年中配送。加えて自治体には未使用分が約900万回分あります」と示していまして、約2500万回分が自治体にすでに渡っているということなんです。

では、その自治体から先はどうなっているのか?ワクチン接種を実施する市区町村、全国市長会の立谷秀清会長は「自治体がワクチン接種を始めるには、準備に3週間くらい時間がかかる。それはワクチンを国民が選べるようにしたから、希望をとらないといけない。その希望をとったワクチンをどう当てはめていくかということをやらないといけない」。

ワクチンを選べるようにしたため時間がかかるとしています。高山さん、改めて沖縄の現場からしますと、どういった点に問題があるのか、どうお考えでしょうか。

高山

問題点は色々と、自治体ごとにあるんだろうと思いますけれども、このようにできない自治体がある一方で、できている自治体もあるんですね。例えば沖縄県では、石垣市は要介護高齢者への接種はもうほぼ完了しています。そこは優先順位を明確にして、できるところから接種を進めていくという考え方も必要だと思います。できない自治体はできない理由を挙げるのではなく、是非、できている所から学んでいただければと思いますね。

上山

舘田さん、前回の1日100万回とまでいかないまでも、もう少しペースを上げられないのでしょうか。

舘田

ワクチン態勢に関して、最初の原則8カ月というところから6カ月を過ぎればできるだけ前倒しをしていい形で変わりましたよね。ですから、かなり現場も混乱してしまったということがあるんじゃないかなと思います。そういう意味では、準備ができている地域から、どんどん進めていくということが大事になるということだと思います。

■今後の感染症対策と経済活動のために

上山

河野さん、3回目のワクチン接種のオペレーションについて、『アンカーの眼』でお願いします。

河野

かせいだ時間の有効活用と書いてあるんですけども、水際で非常に厳しい処置をとられたんですよね。岸田総理が言われている通り、これで時間を稼いで、オミクロンの実態を把握して、それで処置をしていくということだったと思うんですよ。ところが、今、稼いだ時間を本当に有効に使っているのかと。ワクチンの件にしても、まだこれだけ進んでないということは、この連休明けにでも水際対策についてはどうするか判断されると言っているんですから、もうここまでの間に何らかの進展がないとおかしいにも関わらず、こういう状況というのは、やっぱり有効活用という点についても問題があったのかなと。それとですね、今回、ワクチンを国民が選べるということですが、最初のワクチンのときは自治体に行ったら、ファイザーだし、自衛隊の接種会場はモデルナで決められていたわけですから。なぜそういうややこしいことを今回やられるのかもちょっとよくわからない。とにかく今はスピード感を持って、とにかくやっていただきたいなと思いますけど。

上山

いろいろと疑問点が湧き上がっていますけど、舘田さん、例えばモデルナのワクチンとか、選ぶプロセスはやはり必要なんですか。

舘田

これは医学的に見ると、ファイザーもモデルナも同じようにその有効性が期待できます。ただ、やっぱり打つ方としてみればですね、1回目2回目と同じものを打ちたいというような、そういう風な希望があるのであれば、それを考えてあげるというような形でこの政策になっているという。

上山

やっぱりそのプロセスは自治体としては飛ばすわけにはいかないのですか。

舘田

そうですね。それを無理やり、あなたはこっちっていうふうに決めてしまうと、ワクチンの副反応に対しての過剰な怖さ、そういうものが変な反応を引き起こしてしまうということも考えられると。

上山

医学的な、心理的な面も考えていかなきゃいけないということなんですね。

菅原

高山さんは河野さんのご指摘、稼いだ時間を有効活用できていたのかどうか、どうお考えでしょうか?

高山

はい。医療体制の整備に関しては随分、議論をして、病床を倍の感染力であったらというのは、そういう形で議論をしておりましたので、そういう意味での時間稼ぎはできたと思っています。ただ一方で、やはりワクチン接種については、もう少しスムーズに進むような考え方というものを、国からの指示を待つだけでなく、市町村と県とか、よく議論して進めておく必要があったと、少し残念に思っております。

菅原

改めて横の繋がりというところも、しっかりと考えていきたいところだと思います。その上で改めて、高山さんにもう一点伺いたいのが、こうした中で、もちろん感染拡大を警戒しつつも、経済への影響というのも、ここのところ非常に心配されているわけです。この点、どのようにお考えでしょうか?

高山

私の守備範囲を超えるところではあるんですけれども、ただ我々、病院で働いている者は、医療機能を維持して、しっかり国民県民の生命を守ることこそが重要な使命です。一方で経済界の方々からすると、沖縄に出ているような重点措置とか、今後、緊急事態が始まってしまうと、大きな経済的損失を受けるでしょうね。ですから、ここはきちんと、そのあたりの補償も政府の方で検討していただいて、経済界も、しっかり我々が病院を守るために取り組もうとしていることについて、一体的に協力して地域が守られるような、そういう取り組みは是非、お願いしたいと思います。それともう1点、今回これだけ流行が広がっていますけれども、病原性が明らかになって、仮に病原性やっぱり低い、あるいはピークアウトしてきたというときには、早期に経済活動が再開されるように、その判断は迅速かつ合理的に行われるように、我々、医療現場からもきちんとデータを出していくということは責任を感じております。

菅原

舘田さん、やはり今、お話ありましたけれども、オミクロン株への対処法がわかってきたときには、改めてこの経済活動の緩和、こういったところもやっぱり必要になってくるんでしょうかね。

舘田

そうですね。これまで、「第5波」まで経験してくる中で、いろんなことを私達も学んできたわけですから、ダメだダメだダメだと言うだけじゃなくて、こういうふうにすればうまく進められる、経済活動も進められるという、そういうことを考えていく必要がある時期だと思います。

菅原

改めて、正しく恐れるということですね。

館田

そうですね。

菅原

はい。舘田さんと高山さんはここまでのご出演です。どうもありがとうございました。

(2022年1月9日放送)