BS朝日

番組表
NOW ON AIR

    インタビュー バックナンバー

    #74

    追跡!!北朝鮮「瀬取り」 拡大化する実態

    海上で石油精製品などを北朝鮮の船に密輸しているとされる「瀬取り(せどり)」。国連制裁下にある北朝鮮で、核開発を支えているとも言われています。2019年4月7日のBS朝日『日曜スクープ』では、韓国船籍の関与まで浮上し拡大化する「瀬取り」の実態を追跡しました。

    ■最高人民会議で注目を集めた“称号”

    山口

    きょうのゲストの方々をご紹介いたします。まずは、おなじみですね。北朝鮮政治がご専門の慶應義塾大学准教授、礒﨑敦仁さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

    礒﨑

    よろしくお願いします。

    山口

    そして、北朝鮮に対する制裁に詳しい国連安保理北朝鮮制裁パネルの元委員の古川勝久さんです。

    古川

    よろしくお願いしますしくお願いします。

    山口

    古川さんは瀬取りについて、非常に細かく調べていらっしゃって、きょうは、後ほどその情報を詳しく教えていただきます。それでは、物別れに終わりましたハノイでの米朝首脳会談なんですが、沈黙を続けている金正恩委員長に動きがあるかもしれないというところから入っていこうと思います。まず4月11日つまり今から4日後なるわけですが重要な発表があるんではないか。この日にこれは日本の国会に当たる最高人民会議が開かれるんですね。ここでのポイントにつきまして礒﨑さんに指摘していただきました、まず一つ目です。非核化への姿勢を金正恩委員長が表明するかどうか。それからもう一つ金正恩委員長の肩書きが変わるかもしれないということで礒﨑さんそれぞれどういうことでしょうか。

    礒﨑

    先月半ばには、北朝鮮の外務次官がアメリカに対する不満を海外のメディアに向けてぶつけて、そして近々、金正恩委員長の声明なり発言が出てくるかもしれないということを言っていたわけですから、北朝鮮の最高人民会議は一つのそのきっかけにはなりうる。今の時点で対米関係アメリカに対する戦略の練り直しが終わっているのか、まだ進行中なのか分かりませんが。

    山口

    金正恩委員長の肩書が変わるかもしれない件は?

    礒﨑

    金正恩国務委員長というタイトルが3年前に付与されたんですが、今回の最高人民会議で憲法が改正されて、新たな北朝鮮なりの制度を導入するのではないかと言われていますね。

    山口

    どういう肩書が想像されますか。

    礒﨑

    研究者の中で議論されているものとしては、やはり今までチェアマンだったものプレジレントにする可能性もあるということです。名称はわかりません。しかし、今までの国家の統治の機構をシステムを少しいじろう。それによって、新しい時代を演出できる。対外的な代表も金正恩委員長である、という主張が考えられますね。

    (北朝鮮メディアは4月11日の最高人民会議以降、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の動静を報じる際に「朝鮮人民全体の最高代表者」との称号を使い始めました)

    ■潜水艦発射弾道ミサイルの脅威

    山口

    金正恩委員長の気になる動きを確認していこうと思います。聖地を視察していたんですね。三池淵(サムジヨン)という場所を視察しました。この三池淵(サムジヨン)というのは革命の聖地で、金剛山(クムガンサン)の麓にある場所だということです。これまでも金正恩委員長は、重要な決断をする際、その前にこの場所を視察していたんです。例えば、2017年12月三池淵(サムジヨン)を視察した後、1月にはピョンチャンオリンピック参加を表明しました。さらにこんなこともありました。2013年11月に三池淵(サムジヨン)を視察した後、12月に叔父の張成沢氏を処刑しているんですね。ということは今回も何らかの大きな決断が行われる可能性があるということになるわけです。そして、国際社会で今北朝鮮の非核化については悲観的な見方が広がっています。これは日本の防衛省のシンクタンク、防衛研究所なんですが、5日、一昨日になりますけれども、こんな分析を発表しました。核ミサイル開発を継続しつつ経済状況を立て直すための時間稼ぎとして、この米朝首脳会談が利用されている可能性があると。さらに韓国政府高官も、最高指導部が決心すれば、いつでも北はミサイルを発射できる状態にあるというふうに分析していまして。やっぱり国際社会の見る目は非常に厳しい状況にはなっているということなんですね。ここ最近ですね、北朝鮮では不穏な動きも見られているということなんです。こちらをご覧ください。各国が北朝鮮の核開発を警戒している最中なんですが、北朝鮮がSLBMつまり潜水艦発射弾道ミサイルが3、4発搭載可能な新型潜水艦の建造に本格的に着手していると韓国メディアが報じています。この情報につきまして、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは深刻な脅威だと分析しています。これは東倉里(トンチャンリ)などの陸上の発射場よりもはるかに深刻だと。北朝鮮のミサイル技術というのは確実に進歩しているんだということなんです。古川さん、ここ1年ですね、米朝の雪解けもあってこういう緊張が若干和らいだのかなと思っていたんですが、そうした最中に実はこういう新型兵器に着手している、どんな風にご覧になりますか。

    古川

    過去にもアメリカと核軍縮の合意を進めた、いろんな国々がございますけれども、いずれの国も、合意ができる瞬間まで基本的な核ミサイル戦力というものの開発、あるいは、時を止めないというのは一般的なパターンです。北朝鮮もそうなんだろうと思います。中距離弾道ミサイル、あるいは、SLBMの潜水艦の可能性、衛星画像が指摘されていますが他にも、例えばコンピュータシュミレーションによる核弾頭小型化の実験とか、いろんなものがまだ現在進行形で進んでいることを想定すべきだと思います。

    山口

    川村さんいかがですか。SLBMの搭載可能な潜水艦の開発というのは、日本にとっても脅威ではあると思うんですが、いかがでしょうか。

    川村

    すべて、こういう潜水艦発射弾道ミサイルは、核を搭載して行えば潜水艦発射核弾道ミサイルになる。つまり、核がすべてにおける脅威として結びついていくわけですから。それは、核との連動っていうことで考えれば、日本のみならず他の国においても核開発が完全にこういう技術を伴って行われれば、空からも海からも陸からもというような形で、一体、いつそれが実際に完成しているのか。もはや、もうすでに完成しているのかどうかも含めて、脅威となっていることは間違いないですよね。

    ■北朝鮮「瀬取り」大量密輸の恐れ

    山口

    そして今、連日報じられている問題があります。これがきょうの最大のテーマですね、瀬取りです。改めて確認しますが、国連などの制裁をかいくぐるように、海上で石油精製品などを船から船に移し替えて行われる密輸のことです。そして、その輸入量を見て行こうと思います。アメリカ政府がまとめた推計によるものなんですが、ガソリンなどの石油精製品の、北朝鮮の輸入量は去年、378万バレルだった可能性があるとのことです。これがどのくらいの意味を持つのか。国連制裁を強化する前の2016年と比較してみましょう。その時は、450万バレル。つまり、制裁強化前の8割方、瀬取りで石油精製品が北朝鮮に渡っているという実態が浮かび上がるわけです。国連安保理はこのように報告をしているんです。40の船舶と130の企業が石油製品の密輸に関わっているということなんですね。非常に衝撃的な内容なんですけれども、順番に伺っていきます。古川さん、やはり想像以上に規模が大きくなっているとこと言えると思うんですが、いかがでしょうか。

    古川

    378万バレルというアメリカ政府の推計は、あくまで一つの可能性ですけども。相当な規模の不正調達を行っている。元々は国連安保理決議においては北朝鮮は50万バレルしか調達しちゃいけないことになっているのですが、蓋を開けてみれば378万バレルぐらい調達していた可能性が指摘されたぐらい。我々の想像をはるかに超えた密輸という物が展開されているのは間違いないだろうと。

    山口

    そうしますと、北朝鮮の国連の制裁なんですが、効果があったという報道が多かったんですけど。例えばこの石油精製品に関して言えばそうでもないってことなりますよね。

    古川

    アジアプレスネットワークなどいくつかの組織が北朝鮮国内のガソリン油などの価格動向推移をずっと取っていますけど、今年になってから単位あたりの価格は大幅に下落しているんですね。理由がよくわかんないんですけども、もちろん経済制裁を受けていますので成長できませんし、マイナス成長ということは経済そのものに対しては非常に大きなインパクトはありますし困っている人達はいっぱいいるんだけども、金正恩レジームの安定を揺るがす程の打撃与えているのかということに関すると、そういうことを示すデータはないですね。

    山口

    礒﨑さんご専門にあたるわけですけれども、この制裁が行われている。しかし、それをかいくぐって瀬取りが行われている。実際に北朝鮮の経済がどうなのか、どういう風に分析しますか。

    礒﨑

    北朝鮮の経済というのは日本から見ると非常に貧しいですし、当然制裁は効いているという風に読む。制裁を掛けている側からすれば効いてないとおかしいわけですよ。しかし、実態として効いているのであれば、ハノイの会談でもベタ降りしてきてもいいわけです。拉致被害者もとっくに帰ってきてもいいわけですけども、やはり希望的観測をしてはいけない。北朝鮮の経済はもう20年も前に、90年代にどん底の経済危機があったわけです。餓死者が大量に出ていた時期、その時期に比べれば格段にマシになっている。
    日本ですとか韓国ですとか中国、ベトナムから比較しても、ものすごく貧しい国なわけですよね。一人当たりの所得は、おととし北朝鮮側が発表したデータですけどもおととしの一人当たりの所得でラオスの半分。モンゴルの1/3程度しかないわけです。その中で個人崇拝行い、核ミサイル開発をしているわけですから、まだまだ貧しい状況。ただ、それに耐える力は残っているということですね。

    大木

    制裁によって非核化をするしかないという状況には、進んでいないということでしょうか?

    礒﨑

    制裁は解除されたい、解除してもらいたいという思いは非常に強いですけども、北朝鮮が(非核化の)条件を降ろしてアメリカに「ごめんなさい」という風に譲歩してくる段階には至っていないということですね。ただ、徐々に制裁の影響が強まっているのは間違いないですね。

    山口

    私たちの想像以上に大規模に行われている瀬取りなんですが、その実態をこれから詳しく見ていこうと思います。私たちはある船に注目しました。これは瀬取りで摘発された船なんですね。韓国籍です、Pパイオニア号なんですね。この全長110M、幅19M、総トン数が5160トン。原油や重油ではなくてガソリンなどの石油精製品を運ぶタンカーであるということなんです。このPパイオニア号が何をしたかと言いますと2017年9月に北朝鮮のタンカー2隻に対して合計4320トンの軽油を積み替えた疑いが持たれていまして、去年10月韓国の海洋警察に摘発されています。Pパイオニア号なんですが船の位置情報から驚きの情報がわかってきたんですね。神戸大学 大学院海事科学研究科 航海マネジメントグループの若林伸和教授に分析をしていただきました。6回の不自然な航海があるということなんです。摘発される前の半年間だけで6回。そのうちの一つをここで確認して行こうと思います。Pパイオニア号の動きですね。2018年、去年の8月14日シンガポールを出港しました。ずっと進んでいって10月9日に韓国のプサンに到着をしているんですが、この航海にかかった日数が55日もかかっているんです。データ上は、この間どこにも寄港していないということなんですね。通常ですと2週間程度で到着する距離だということですから、つまり40日も多いという話になります。利益を追求する商船では、そんなに長い間、航行に時間をかけるということは、燃料も使いますから、考えられないそうです。じゃあ、一体何なんだということになってくるわけです。詳しく調べると、台湾のやや北側の海域、拡大した図です。このPパイオニアがずっと北上してきて、2回を大きく曲がっていますよね。およそ2日間、この海域にとどまっていたということが新たに分かってきたんです。若林教授がこういう分析をしています。船の往来が多く停泊すると危険であると。それから、碇を降ろすような浅瀬ではない可能性が高くて、この海域にとどまること自体が非常に不自然だと話しています。もう一つです。この海域は、領海や接続水域の外に当たるんですね。中国の権限が及ばないということなんです。領海や接続水域の外側、中国の権限が及ばない海域で2日間停泊していた、非常に怪しい動きなんですが、古川さんはこのPパイオニアの動き、どんな風に分析されていますか。

    古川

    比較的真面目な船ですね。どの船も安全目的のために、自分の位置情報をシグナルとして発信するというのが国際海事機構の規則として定められているんですが、普通、瀬取りなどを行う船の場合は、よくそれを消すんですね。ですけども、この船の場合は消さずにそのままやったと。ただ、ポイントはこのスローで動いている時に、どこかで止まったポイントがあるとすれば、そのタイミングで、例えば、そのシグナルを出していない北朝鮮のタンカーが来て横付けをしていた可能性が憶測されますが、衛星画像で分析しないと正確なとこが言えないかなとは思います。

    山口

    Pパイオニア号は位置情報出しているけども、ここに瀬取りに来た船が位置情報を消していて、この2日の間に、そこで瀬取りをやっていた可能性があるって事ですね。

    古川

    北朝鮮の船舶は基本的には出さない。自分の位置情報を隠すというのはあまり通常では考えられないこと。やはり、位置情報を消すのはやましい事をする時ですので。そういう船がいた可能性を丁寧に検証する必要があると思います。非常に的確な分析をされていると思います。

    ■相次ぐ違反企業「瀬取り」の動機

    山口

    古川さんはPパイオニア号なんですが韓国籍ですよね。韓国といえば当然アメリカの同盟国ですが、韓国の船がこういう瀬取りに絡んでくるという事は結構あることなんですか。

    古川

    韓国では今、北朝鮮と貿易は禁止されていますけども、元々北朝鮮とやはり交易をしていた方々が少なからずおられます。私が聞いている中でも、数年前から韓国の近海とかで堂々と北朝鮮の船と韓国の船が瀬取りしていたようなことも確認されていたようです。この2年間、アメリカがようやくこの最大の圧力キャンペーンということで、北朝鮮の瀬取りの摘発に真剣なったのでこういう実態が色々と浮き出て来ていると推測いたします。

    山口

    韓国の文在寅政権が北との融和政策を強めています。文在寅政権の方針も韓国籍の船が瀬取りに絡んでいることに影響を与えているのでしょうか。

    古川

    間違いないと思います。昨年も石炭の不正輸出。北朝鮮産石炭も国連の禁輸品なんですけども、これを韓国に不正輸入した企業、個人、韓国当局は摘発したわけですけども、司法手続きを理由に実名を公表しないんですね。悪しき慣行でして、これらの韓国の企業は当然、日本含めロシアとか周辺諸国とも、いろんな取引をしている。取引相手先はそういう北朝鮮の非合法ネットワークの関係者である可能性が非常に高いですね。それなのに正式に国際的な捜査ができないですよね。ただ、文在寅政権だけでなくとも、韓国政府にちょっと失礼になりますが、元々韓国政府は自国の企業とか個人が国連制裁違反をしたということを公に、非常にプライドとして、認めないという傾向があります。朴槿恵政権の時にも隠蔽する傾向というのは常に強くありました。言ってみれば、くだらないプライドはやっぱり捨てていただいて、しっかりと他の国連加盟国並みの情報公開でというものを求めたいと思いますね。

    大木

    韓国以外には、どういった国の企業がこの石油製品の提供というのをしていると考えられるんですか。

    古川

    一番大きいのはやはりロシア、中国。ただそれだけでなく国連制裁対象あるいはアメリカの単独制裁の対象に入っている船舶会社に中にはシンガポールも、あれば台湾もあります。ただ単に物のやり取りだけなくて、当然、資金の決済とか船の運航とか、北朝鮮に対して船を売却するネットワークもあるんですね。こういうものを含めると日本もありますし、いろんな国が関わってくるというのが実態です。

    山口

    日本に関しては後ほど詳しく伺っていきます。さらに、古川さんの調査の中で、瀬取りの動機とも取れることが判明したんですね。

    大木

    Pパイオニア号を所有する韓国の船会社なんですが、古川さんが調べたその売り上げの推移です。売り上げは1億ウォン前後で推移し、2016年はおよそ2000万ウォンほどだったんですが、瀬取りを行ったとされる2017年にはおよそ1億9000万ウォンと前の年のおよそ10倍に跳ね上がっているのがわかると思います。やはりこの瀬取りというのは儲かる。このあたりが動機になっている部分が大きいんでしょうか。

    古川

    細かく個々の企業調べないと正確な事は言えませんけど、共通していくつか石炭の密輸とか石油製品の瀬取りに加担した韓国企業の分析をしますと二つの傾向があります。1つは非常に小規模の企業であること。2つ目はなぜか国連制裁が強まった2017年以降に巨額の利益を上げるようになっている。やはり何か突然、非常に大きな収入源を確保したとしか思えないわけですね。残念ながら、瀬取りをしたということで処罰を受けて、莫大なビジネスコストを払ったような事例というのはあんまりないんです。いわば、やったもの勝ちというのが未だに悲しい現実として一つの側面として指摘できると思います。

    山口

    礒﨑さん、結局瀬取りが非常に儲かるビジネスになっている側面が見えてくるんですが、礒﨑さんどのようにお感じになりますか。

    礒﨑

    北朝鮮問題がいかに深刻で解決すべき問題が多いかという問題意識を共有できる国、日本と同じぐらい問題意識共有できる国が少ないことの、現実の反映だと思うんですよね。ほぼ日本だけですよね。対話なんてほとんど必要ないし、とにかく圧力を加えて北朝鮮を変えさせるべきだと、強硬に考えて、ほぼ国民、政府もそういう方向に考えている人たちが大多数なのは日本だけかもしれません。現状を見て、どうやって解決に向かうかという議論が必要ですね。

    山口

    北朝鮮の周辺の国々の流れを考えてみても確かにご指摘のように非常に難しい面があると思うんですが、川村さんは瀬取りの実態どんな風にご覧になりますか。

    川村

    やっぱり礒﨑先生がおっしゃったように、確かに、国連加盟国のうちのすでに160カ国近くが北朝鮮と国交を結んでいるわけですよね。大使館もあるところも多い。イギリスの大使なんかは時折、日本に来た時に私なんかと会って話をするとですね、平壌は非常に安定しているというようなことを言います。それで実際に外貨も一部入ってきているようだったと。ところが、最近の調査でも、実際に報道されていますけれども、北朝鮮の中でいわばハノイ会談以降、朝鮮労働党の幹部やあるいは富裕層の身辺を立ち入り検査をして、隠し持っていた財産、ドルとかそういうもの相当、差し押さえていると。つまり、それだけもう経済危機という意味では、自分たちの仲間の家にまで立ち入っているという事は必死だっていうことなんですね。したがって、瀬取りについても経済制裁は続いていれば続いているほど様々な工夫を出してですね、エネルギーを調達しなければいけない。そういう意味では、リスクを覚悟で相当なある意味、必死さが伺えると。そういうことが例えば文在寅大統領がちょうどこの最高人民会議が行われる11日にアメリカに行ってトランプ大統領と会談するわけですね。そういう所でも韓国はどこまで瀬取りについてもトランプ大統領に対して、いわば朝鮮半島の立場からの発言ができるのか。そういうことも相当北朝鮮は意識していると思いますよ。

    ■各国が終結「瀬取り」取り締まり

    山口

    アメリカが瀬取りが頻繁に行われている海域について公表しているんですね。それを確認しておきます。先ほどのこのPパイオニア号の話に出てきた所からちょっと北側なりますが、台湾のやや北側の海域。それから、ちょっと北の上海の遥か沖合いの海域。それからこの朝鮮半島と中国大陸の間に挟まれました黄海。そしてもう一つがこのやっぱり日本海、北海道の西側の辺りというこの四つの海域で瀬取りが行われているということをアメリカは報告しています。そして瀬取りの手口が徐々に巧妙化しているということもここで確認していきたいんですね。ここで説明するのはアメリカ財務省が瀬取りの疑いがあると指摘している韓国のルニス号という船なんです。この船が中国の大連から釜山まで1000マイルを航行したということなんですけれども、謎の動きが指摘されているんです。1000マイルで行く距離なんですが、このルニス号は6700マイルを航行していたんだと指摘されています。つまり通常なら10日程度で到着できるところを33日間もかけていたということなんですね。実はこの航海、こんな不自然なことも、あったんです。

    神戸大学大学院 若林伸和教授

    位置の記録データを探してみたんですけれども、完全に一か月以上は抜けているところがあった。中国の大連から韓国の釜山までかなりの主要な海上輸送のルートになっていて、割と陸との間、近いところを走る区間が含まれているのに、その間に全くそのAISデータが取れないってことは、これはちょっと不自然。

    山口

    今、若林教授からご指摘があったように、大連を出港して釜山に到着するまで33日間、位置情報が一切記録されていないんです。意図的に位置情報切っていた可能性も考えられるということなんです。古川さん、こうなってくると瀬取りを取り締まるのが非常に難しくなってくると思うんですがいかがでしょう。

    古川

    位置情報が一か月もないというのは(AISの送信を)切っていたということですね。これは典型的な瀬取りに加担する外国船舶の手口の一つです。こういう場合に衛星情報などで追跡して瀬取りの現場を押さえたり、船が北朝鮮に寄港したか、調べていくわけですが。そもそもこのルイス号の運行会社自体がかねてから北朝鮮といろんな取引をしていた企業である可能性ありますので、企業の方の情報を調べるということも非常に有効だろうと思います。

    山口

    拡大が懸念されている北朝鮮の瀬取りなんですが、取り締まりはどうなっているのか。取り締りの壁があるということなんですね。まず世界各国の動きです。アメリカの沿岸警備隊のバーソルフという船。それからイギリスのフリゲート艦。フランスの哨戒機ファルコン200も来まして、国際的なネットワークで瀬取りの取り締まりに各国が力を上げているということなんです。これに対して、北朝鮮の労働新聞は当然反発しますね。緊張緩和の流れに背く行為であると。そして、ようやく形成された緊張緩和の雰囲気を害する軍事的な挑発であり、朝鮮半島の恒久的な平和体制構築のための南北宣言の履行に冷水を浴びせる行為だと指摘しているんです。ここで世界各国が取り締まりに力を入れているということなんですが、古川さんはこの各国が力を入れている背景にどんな動きがあるのか、お願いできますか。

    古川

    これらの多国籍の、アメリカの海岸警備隊とか海軍、あるいは欧米の海軍、さらには日本の自衛隊で、瀬取りの現場の摘発というものがかなり進められている訳ですけども、ただ、今の問題というのは現場を押さえたとしても、その後、関係国の中で瀬取りに加担した協力者。あるいは協力企業これに対する制裁というのがなかなか取られていない。結局、現場押さえて一生懸命写真を撮っても、その結果、逮捕され有罪判決を受けた人があまりにも数少ない、いろんな国でこれが今の課題だと思います。

    大木

    取り締まりの中心にいるのはアメリカなのかと思うんですが、アメリカはこの取り締まりに力を入れ始めたっていうのはいつからですか。

    古川

    トランプ政権になった2017年以降ですね。アメリカに届くICBMの実験を始める、核のインテンシティを北朝鮮が高めてからようやくアメリカ真剣になった。この2年間の流れだと思います。

    (米司法省は5月9日、国連制裁に違反し北朝鮮から石炭を輸出していたとして、北朝鮮船籍の貨物船を差し押さえたと発表しました。この日は、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射していました。国連制裁違反による北朝鮮船舶の差し押さえは初めてです。)

    ■制裁違反の貨物船 日本に61回寄港

    山口

    日本で今、非常にこの問題に絡んで深刻な状態があります。去年の国会での長島昭久議員の質問なんですね。日本の港に、韓国政府が入港を拒否した国連制裁違反の貨物船4隻がいったいどのくらい来ているのかというのを聞きました。2017年8月から18年11月までの間に、韓国政府が入港を拒否した船、それが日本の港にどのくらい来ていたのかという質問に対して、海上保安庁の警備救難部長がこう答えています。61回も来ていたと話しているんですね。こちらを見ていきましょうか。61回のうち24回立ち入り検査をしたものの、船は入港し出港してしまったということなんです。ここの問題点を大木さん確認しましょう。

    大木

    国連安保理決議ではこのようなことを義務づけられています。
    ・国連安保理決議2397号 第9項、
    決議によって禁止されている活動、または、品目の輸送に関与していたと信じる合理的根拠を有する場合には、当該加盟国が自国の港にいるいかなる船舶も押収、検査及び、凍結すること。
    さらに
    ・国連安保理決議2094号 第11項
    船舶を含む制裁違反に貢献しうるあらゆる資源の移転の阻止が全加盟国に義務付けられている。
    ちょっと難しいんですが古川さん、制裁違反の貨物船が日本に来た場合は、この決議に基づいて日本はやっぱり押収さらに留置という措置を取る必要があるということですよね。

    古川

    まず入港を阻止しなきゃいけませんし、港に入った場合にはそれを押さえなければいけないというのは義務です。韓国政府も、私は認識している限り、現時点で少なくとも7隻の貨物船及び石油タンカー合わせて7席は押させているはずなんです。日本国内でそういう風な話は聞いたことはないですね、これまでは。

    大木

    61回入港しているとなると、ここがちゃんと守れているのか、ちょっと疑問符が付く気がするんですよね。

    古川

    日本の場合、現在の法制というのは、船が国連禁輸品を積んで日本に入港したと言う事件があればその船は対処できます。ただ海外で国連制裁違反を犯した貨物船とか企業、これを入港禁止する取引禁止するというような2次的制裁と言われる措置ですね、このための法整備とか行政の体制とは非常に脆弱であると言わざるを得ないと思います。

    山口

    そもそもなんですけど、韓国が入港拒否したまま国連制裁違反に当たっている貨物船ですよね。こういう船がそもそも何のために日本に来ているんですか。

    古川

    この一連の瀬取りとか石炭の密輸に関わった企業の多くが中国企業だったりロシア企業だったり一部、韓国企業ですけれども、その大半が一番主な取引先が日本なんですね。例えば、去年の2月にアメリカ政府が制裁対象にした香港の船舶企業があります。複数隻の貨物船を持っているんですが、日本にしょっちゅう来ているわけですよ。アメリカ政府が単独制裁した企業の貨物船ですら日本政府は入港、出港認めているわけです。それは、入港する時点で国連禁輸品を搭載しているという証拠はないからということでやっています。日本のアプローチとは事件の取り締まりなんです。だけど、国連安保理決議では世界中どこへでも制裁違反をした企業、個人、貨物船これを各国の判断で制裁しようというのが義務なんですが。その為の法整備が日本においては一切、立法活動が行われていない。これが今の問題です。

    山口

    この実態は川村さんどうご覧になりますか?

    川村

    具体的な証拠を持って、まず入港前に差し押さえるという事は、相当情報を持っていればですね、できるかもしれませんけど。実際にその制裁に違反しているということに対して、どこが今、法律的な権限でやるのか。海上保安庁、国土交通省がそういうことを率先して法律を出したとしても、それは他の省庁を含め警察含めてですね、どういう風な法案にすればいいのか。さらに国会で審議をして法律が改正されなきゃいけない。それまでに至る説明を含めて具体的な根拠法というものがですね、極めて誰が作るのかいうことを含めて、法案の具体的な提出、内閣できちっとそれを作るんであれば作る主体がどこなのかと言えば、それぞれの各省庁がきちんとそれを持ち寄った上でないと、なかなか審議にまで入らないってことなんですよね。

    山口

    河野外務大臣の答弁です。入港禁止措置の必要があるという風に判断されればその時にはしっかり対応してまいりたいというふうに思いますと答弁しているんですが、礒崎さん、この日本政府の対応どうご覧になりますか?

    礒﨑

    古川さんから学ぶところ多いんですけども、古川さんがよく主張されるのが日本政府まだまだやるべきことがたくさんあるって主張を展開されていて、まさにその通りなんだと思うんですよね。ただ、北朝鮮を追い詰める一方で、問題の根本的な解決には、やはり首脳間の向き合い方ということですね。米朝首脳会談をやったようにですね、日本も北朝鮮と向き合っていかねばならないと思います。

    ■違反企業の関係先が日本国内にも

    山口

    瀬取りですが、実際にこういうこともありました。実際に、北朝鮮の国連制裁違反をしたA社という会社があるんですが、ここの会社が複数のこの船を所有しています。これが日本に立ち寄っていたということがありました。この船、実は、日本でも保険に加入していたという事実もありましたし、この会社の事実上の支社が日本に存在しているということです。本当にこの実態見ると、古川さん、なんとかしなきゃいけないっていうのはありますよね。

    古川

    これはあくまで1社の事例で、他にも色々あるんです。例えば、韓国が今、係留している石油タンカーのうちの一隻というのは、もともと香港の企業が持っていたんですけど、非常に怪しい、かねてから国連でも注目されていた中国の船舶企業集団です。この関係者って東京都内、今このスタジオから非常に近いところに会社を構えておりまして、そこの経営者なんです。それは、香港の企業を使っておそらく韓国の企業に売却して、それが今、韓国が係留しているタンカーの一つなんです。東京都内の取締役の顔ぶれを見ると、北朝鮮との船舶取引で中核的な企業の中心人物が取締役として就任しています。さすがに、やっぱりこういう状況というのをなぜ放置していると、寛大過ぎると思いますね。あまりにも今の日本国内の取締りの法律というのが既存の法律をベースにしてなんとか拡大適用しようということしか考えてないので、安保理決議が加盟国に要求するようないろんな制裁措置があります。これが全然追いついてない、ギャップがあるというのが現状ですね。

    山口

    礒﨑さんはどうでしょうか。瀬取りの実態があるということは、北朝鮮の非核化が進まないことにもつながってくるかと思うんですが、そのあたりどんな風に考えていますか。

    礒﨑

    米朝でアメリカがビッグディールを仕掛けたわけですから、北朝鮮もそれに乗りなさいよっていうことを後押しする。それについての北朝鮮の不安を取り除くという作業も日本は後押しすべきだと思いますけどもね。

    川村

    ビッグディールだけではなくて、例えば韓国が言っているのは礒﨑先生もご承知のようにイナフディール。今、現状ではイナフじゃないかと。その後に段階的にビッグディールに近づけていくっていう方法も一応提案しているわけですね。その辺は日本がですね、やっぱり積極的に六カ国協議をやるなり、首脳会談をやるなり、そういう方向に持っていく中で日本もやっぱり参加していく。プレイヤーとしては積極的に対応していくことが僕は必要だと思いますね。

    山口

    今日は貴重なお話ありがとうございました。礒﨑さんと古川さんでした。ありがとうございました。

    (2019年4月7日)

    PHOTO

    写真からBS朝日の番組を探そう!