BS朝日

インタビュー バックナンバー

#139

米中覇権争い 台湾や香港を舞台に激化

米中覇権争いが激しさを増しています。アメリカは断交以来、最高位となるアザー厚生長官を台湾に派遣しました。香港では、国家安全維持法による摘発で緊張が高まっています。2020年8月16日の『BS朝日 日曜スクープ』は、米中対立がどこまでエスカレートするのか、遠藤誉さんとともにひも解きました。

■「米中関係の悪化、覚悟しての台湾訪問」

山口

新冷戦に突入したともされる米中対立のはざまで日本はどう対応すればよいのでしょうか。尖閣諸島をめぐる動きも気になります。今後の展開を分析します。ゲストをご紹介します。中国問題グローバル研究所所長・遠藤誉(えんどう・ほまれ)さんです。宜しくお願いします。

遠藤

よろしくお願いいたします。

山口

そしてもうひと方、アメリカ政治がご専門の笹川平和財団上席研究員・渡部恒雄さんです。宜しくお願いします。

渡部

よろしくお願いいたします。

山口

香港、そして台湾を舞台に緊迫の度合いを増す米中覇権争いを見ていきます。まずは台湾です。

上山

アザー厚生長官は、アメリカと台湾が1979年に国交断交後、アメリカ政府が派遣した最高位の高官です。蔡英文総統との会談で「トランプ大統領の台湾に対する強い支持と友好のメッセージを伝えに来ることができ、光栄に思う。台湾の新型コロナ対応は世界で最も成功した例の1つであり、オープンで透明性が高く民主的な台湾の社会・文化のたまものだ」と、述べました。

上山

改めて、アメリカと台湾の関係を振り返ります。1979年1月 アメリカは中国と国交を結び、台湾と断交しました。その後、アメリカは「1つの中国」と唱える中国に配慮し台湾との間で高官の往来を自粛していました。しかし、トランプ政権になり流れが変わりました。2016年12月、トランプ大統領が蔡英文総統と異例の電話会談をおこない、経済や安全保障面での綿密な関係を確認しました。2018年3月、アメリカと台湾の高官の相互訪問を促す「台湾旅行法」にトランプ大統領が署名し成立しました。今回は、その枠組みの中での動きです。

山口

渡部さんは、アザー厚生長官の、蔡英文総統との会談での「トランプ大統領の台湾に対する強い支持」という発言をどうご覧になりますか?

渡部

かなり踏み込んだ内容ですよね。別に閣僚級の台湾訪問は初めてではないですけども、それにしても、これまで訪問した閣僚の中で最高位ですし、やはりアメリカと中国の間には「一つの中国」の原則で合意していますので、かなり踏み込んで、米中関係が悪くなっても、ある程度いいという、覚悟を持ったようなメッセージですよね。

山口

悪くなってもいいから強いメッセージを出さなきゃということですか?

渡部

これは一つ背景を言ってしまうと、トランプ大統領が次の11月の大統領選挙に向けて、今、ライバルのバイデン候補に負けていて、それの元々の理由というのはコロナウイルスですから。そういう意味で中国に恨みも持っているし、アメリカ人の対中感情も悪いですよね。これに厳しくいくということと、台湾がコロナで成功していると、こういう両方の背景があると思います。

■「中国はどんなことがあっても許せない」

山口

中国は、「核心的利益」と位置付ける台湾とトランプ政権の接近に猛反発しています。

上山

中国の外交部の報道官は12日、「アメリカがどのような形でも台湾と公式な関係を結ぶことには反対する 火遊びをする者はやけどをするだろう」アメリカを非難しました。

上山

さらに13日に、中国の人民解放軍が台湾海峡周辺で軍事演習をしたと発表しました。遠藤さん、アメリカ政府高官の台湾訪問は中国として絶対に認められないところなのでしょうか?

遠藤

そうですね。おっしゃる通りだと思いますね。中国としては台湾というのは中国という国家にとって最大の核心的利益に関わる問題でして、一方、香港というのはフルネームで言いますと、「中華人民共和国香港特別行政区」なんですね。そのことからも分かりますように、香港というのはすでに中国の領土内に行政区分されていますけども、台湾の場合は、あくまでも中国が一つの中国と言い張って、国連に中華人民共和国が中国の代表として加盟しているというだけのことであって、台湾は絶対にそれを認めていない。ひょっとしたら中華民国というものがトランプ政権によって復活するかもしれないという非常に大きな期待を蔡英文さんとしては抱いていて、米台が接近した直接の大きなきっかけになったのはWHOで、WHOが台湾をオブザーバーとしても会議に参加するということを認めないと言ったときとほぼ同時に、トランプさんがWHOを脱退すると言ったわけですね。台湾としては、ひょっとしたら新しい組織を作ってくれるかもしれないと思って、色々なことを譲歩しながらアメリカの方に接近したので、したがって今般、台湾を訪問したのはあくまでも厚生長官であるということで、先ほど渡部さんがコロナと関係しているのと一致するんですけど。別の側面からいうと、これは台湾の独立を先導するものであるということで、中国はどんなことがあっても許せないというので、中国人民解放軍の東部戦区が台湾海峡で実戦に近い訓練を行ったと、意思表示をしたと、こういうことですね。

山口

大二郎さん。米中の対立ますます激しくなっていますがいかがでしょうか?

橋本

このまま激しくなるだろうというか、いい方向にはなかなかいかないだろうというふうに思いますね。と言うのも最初、米中の対立というのは貿易赤字とかファーウェイとかのデジタルテクノロジーをめぐる競い合いという経済対立だったわけですが、香港の問題でわかるように、人権とか自由とか民主主義とか、国のあり方そのものに関わる問題になってきて、アメリカの国民世論も先ほど渡部さんが言われたように、非常に中国に対する感情が悪くなっている。アメリカの議会を見ても、香港に対するある種の制裁を与えるという法案が上院で100対0つまり満場一致で、共和党も民主党もなく賛成で可決をされるとういう状況になっていて、この流れは大統領選挙がどうなろうが変わらないんじゃないかと。一方の中国も2049年に中国建国100年になって、この年に現代的な社会主義の強国になるんだということを言っておりますし、この旗は下げられないだろうということを言えば、その49年まで、あと30年間はこういう対立の基調は続くのではないかという気がしますけどね。

■香港・周庭さん逮捕「日本へのメッセージ」

山口

大変な時代に入ってきたなという実感があるんですが、それでは香港を詳しく見ていきたいと思うんですね。香港では民主活動家が次々と逮捕されているんです。10日、地元紙の創業者、黎智英(れいちえい)氏や民主活動家の周庭(しゅうてい)氏ら10人が香港に導入された国家安全維持法に違反した疑いで逮捕されました。これは大変大きなニュースになりました。

この国家安全維持法なんですが、詳しく見ていきますと、国家分裂、政権転覆、テロ活動、それから外国勢力との結託の4つが処罰の対象になるわけで、こういう中で10人が逮捕されてしまった。今回の逮捕について、遠藤さんはどうご覧になっていますか。

遠藤

そうですね、申し上げたいことは山のようにあるんですが、1つだけの切り口から申し上げますと、民主活動家の中にジョシュア・ウォンさんとそれから周庭さんという、この2人の若い民主活動家が非常に目立って行動しているのですが、この度、私は、なんで周庭さんを逮捕したのかということに注目しています。2人とも裁判中なんですけれども、国安法、国家安全維持法が実施されてからものすごく目立つ形で逮捕したのですが、最初に逮捕したのは周庭さんなんですね。周庭さんの何が違うかってことを考えますと、香港というのはイギリスが統治していましたから当然英語というものが日常会話としてずっと使われてきた。だから英語で発信してきたし、中国には香港の民主化勢力を助けているのはアメリカだという気持ちがあるので、海外の敵対勢力が、ということが国安法に盛り込まれているわけなんですが、この度、周庭さんはなんと日本語で話しかけるわけですね。これは初めてのことなんですよ。

民主活動家が英語以外の言葉で話しかける、世界に向かって、メディアに向かって話しかけるというのは初めてのことで。中国というのは、言葉、言語というものが1つのプロバガンダの強力な手段の1つであると位置づけていますので、だからこそ孔子学院というものが、これは中国語を広める、あるいは中国文化を広めるということではあるんですが、これが中国共産党のプロバガンダの手段の1つとなっている、ということですね。

ポンペオさんがこの間、非常に厳しく監視するとおっしゃいましたけれども、そのように逆から見れば、言葉あるいは言語というものをとても警戒していて、日本語で発信する周庭さんを見せしめのように逮捕することによって、日本に対してあるメッセージを送っている。すなわち、気をつけろよと。国安法の対象は今後日本となる可能性があるんだよというようなことを発信している1つのシグナルかなと私は思っていますね。

山口

遠藤さん、つまり日本人も周庭さんを例えば支援しようとすれば、国家安全維持法の対象になるということですか。

遠藤

そうですね。その支援の仕方ですね、応援の仕方。その応援が国家転覆罪と言いますか、中国共産党に反対するような方向でそれを煽る、それに貢献するというような状況があったら、それは日本人も国家安全法の逮捕の対象になりうるわけです。

山口

なるほど。ちょっとぞっとすると言うか、本当深い裏があるんだなという感じがします。

上山

この香港に導入されました国家安全維持法によって、香港の民主活動家が次々と逮捕されている。渡部さんにも伺いたいんですけれども、この事態をアメリカではどのように見ているんでしょうか。

渡部

アメリカは、こういう民主化の問題は、自分の国が民主主義のリーダーだから、よその国でこういうことが起こっていることも非常に深刻に捉えます。先ほど申し上げた通り、もう中国に対する感情が民主党支持者でも共和党支持者でも、両方で悪いので。共和党がポンペオ国務長官とバー司法長官など4人が対中強硬演説を、6月の終わりから7月までしていまして、中国共産党のイデオロギーはアメリカとは相容れない、民主国家とは相容れないと言っているので、この話がすごく信ぴょう性が出て、先ほど橋本さんがおっしゃった通り、議会、それから民主党のバイデン陣営も中国にどんどん厳しくなる。結局、アメリカを強硬にして、厳しくするという効果があると思いますね。

■「民主化活動をしないと誓わないと・・・」

山口

香港に導入されました国家安全維持法の過酷な内容、これを詳しく見ていきます。

上山

今回、逮捕されました民主活動家なんですが、パスポートも没収されています。今後の捜査では国家安全維持法によって起訴される恐れがあるんですが、遠藤さんによりますと、今後は香港に導入されました国家安全維持法の中でもこの第44条が重要になってくるということなんです。「香港特別行政区行政長官は、全てのレベルの裁判所の裁判官の中から若干名の裁判官を選び、国家安全に危害を及ぼす犯罪の処理にあたらせる」とあります。遠藤さん、この裁判官選びの規定が重要というのはどういうことなんでしょうか。

遠藤

そうですね。1990年に成立して1997年から実行されるようになった香港基本法というのがあるんですね。この香港基本法ではコモン・ローという、英米法ですが、このコモン・ローを使っていいと規定されております。となると、裁判官、司法もコモン・ローに従う。従って、外国籍の人も裁判官として、司法で色々な案件を裁くことができるとなっておりますので、これまでは政治犯的案件でも外国籍裁判官が担当していて、その人たちは非常に民主的な国家の裁判官ですから、罰が非常に軽く、1カ月の懲役とかで釈放されてしまうものですから、民主活動家の人たちは怖くないと思っていました。今回の国安法、国家安全維持法の一番の骨になる部分は何かっていうと、この外国籍の裁判官を排除して、中国の言う通りに動く裁判官を決めて、その人たちに、こういう政治犯の人たちを裁かせる。こういう風にしようというのがこの骨組みの神髄になる部分なんですね。

山口

そうすると今までとガラッと変わってくることになると思うのですが、遠藤さんはさらに国家安全維持法の42条にも注目しているということなのですね。その内容なのですけれども、この「裁判官は容疑者が今後二度と再び継続して国家安全に危害を与えるような行為をしないと確信するに足る充分な理由がない限り保釈を認めてはならない。」とあるわけですね。この規定も遠藤さん、大変気になりますね。

遠藤

そうですね、これはものすごく重要な、我々が注目しなくてはならない話で、やがて周庭さんにしろ、今回、逮捕されて保釈された人たちは、やがて起訴されますから裁判にかかるわけですね。その時に、私は二度と再び民主化運動なんかしませんという誓いを立てない限り、終身刑になる可能性もある。だから保釈されないということなのですね。なので、一生涯牢獄に繋がっているという可能性が出てくるということです。とても怖い話です。

山口

本当にそうですよね。そうすると結局、周庭さんたちが今、保釈されているわけですけれども、今後、起訴されて、終身刑になってしまうかもしれない。裁判官は外国人ではなくて、中国の政府の意向を聞く裁判官が裁く、今までと全く違う様相を呈するということになってくると思うんですが、一方で、ポンペオ国務長官の発言についても見ていきます。ポンペオ国務長官は中国の影響力について12日、「今起きているのは『冷戦2.0』ではない。中国共産党の脅威に対抗するのは、過去の米ソ冷戦当時よりさらに厳しい。中国が(旧ソ連より)すでにアメリカの経済、政治、社会に多く絡まっているためで、これはソ連が決してしなかった方式だ」と語りました。

渡部さん、先ほどお話に出ておりますが、仮にバイデンさんが大統領選に勝ったとしても、アメリカの中国に対する厳しい視線、その姿勢は変わらないっていうことになりますね?

渡部

そうですね、大統領選挙の一つの争点として中国をどう見るか、どう対抗するかというのが争点になって、もうすでにバイデン候補が中国の人権問題で厳しい話をしています。例えば新疆ウイグル自治区で人権問題がありますが、それ(収容所の労働)を使ったような製品はボイコットしろと言っているんです。ですから、これだけ中国とアメリカの間で人の行き来もあって経済の緊密な関係もある、だからこそ何とかしろという動きが高まるんだろうと、そういう風に思います。

山口

大二郎さんはこのあたりの米中対立、どんなこと考えていらっしゃいますか?

橋本

そうですね、先ほども言いましたように、最初はその経済の面の対立というのが目立ってありました。それは今もあるわけですが、その経済の背景にも政治があるということを見ていかなくてはいけないのではないかと思うのですね。例えばファーウェイの問題でも5G、それからAIといったデジタルテクノロジーを巡る争いなのですが、これは中国にとってはこの分野で覇権を取っていくっていうことが中国共産党の統治の正統性である経済発展をずっと続けるということにも繋がるし、軍事や情報技術を握っていく面で政治的な意味合いが強いと。もう一つ、経済の面では一帯一路という形でお金を貸しながら経済発展を手助けしていくというやり方で仲間を作ることをやったのですが、これも政治的には仲間をたくさん作っていくという多数派工作という面があって、そういう面を見ていかなくてはいけなくなっているなと思いますね。

■国家安全維持法 賛成国が多数だった“現実”

山口

そこなんですよね。実際に香港に導入されている国家安全維持法を巡って、実は中国を支持する国も少なくないのですね。上山さんです。

上山

6月30日、国連人権理事会で審議がおこなわれました。日本、イギリス、フランスなどの27カ国は香港の国家安全維持法に反対の声明に参加しました。アメリカは2018年に国連人権理事会を脱退しているため今回はカウントされていません。対して、賛成の声明に参加した国は、その2倍の53カ国でした。賛成の声明に参加した国を見ていきますと、イラン、イラクなどの中東、さらにアフリカが多いことがわかります。ここで、中国が主導するシルクロード経済圏構想「一帯一路」に参加を表明している国を色分けしますと、この赤文字の国なのですが、賛成の声明に参加した53カ国中、47カ国にのぼります。遠藤さん、どうしてこのような状況になったのでしょうか?

遠藤

はい、そうですね、皆さんご存知のように、3月10日に習近平が武漢入りをしまして、これでコロナは終わったということで、コロナの勝利宣言のようなことをしまして、3月11日からいわゆるマスク外交と言われるように様々な国の医療支援を始めたのですが、これがイタリアをはじめとして「一帯一路」に参加している国を中心に、127ヵ国を総なめにしました。

6月になりますと、今度は「一帯一路」とか、それからアフリカ諸国の中でですね、発展途上国、あるいは貧困国に対して、「一帯一路」でいろんな債務、お金を貸してあげているので債務が生じていますね、その債務を減免しましょうということで、おおむね100ヵ国に対して債務を減免してあげるということを言いまして、それはコロナで大変だろうからということで、この「一帯一路」を「健康シルクロ―ド」と称するようになったんです。

そういう状況の中で、先ほどのような香港の国安法に対して賛成するか、あるいは反対するかというような意思表示をする時に、どんなにアメリカのような巨大な国であろうと、あるいは非常に小さな弱小国で貧困国であろうと、一国一票なんですね。1人1票と同じように一国一票であると。だから、その債務の金額なんて大したことないよと、どうせ債務の罠にはめるようなものだとみなす人もいるでしょうけども、決してそうではなくて、その一面はあるかもしれませんが、いわゆる債務の金額の問題ではなくて、どれぐらいのたくさんの数の国がそこに参画しているかということで、債務を免除してもらっているかということで、国の数で全てが決まっていきます。だから、このような声明を出す時にはですね、やはり国の数で国際世論を中国がリードしていくことができるというような、そういう非常にしたたかな、中国がコロナの発祥地で、むしろ皆、その被害を受けているという側面があるわけですけれども、まるで習近平が救世主であるというようなことを相手に言わせて、そして、どんどん中国を支持する国を増やしていこうという戦略で中国は動いています。それがその結果に表れているということです。

■「自由・民主・人権に関わる選択」

山口

米中対立が激化していく中、トランプ政権が世界にアメリカか中国かの二者択一を迫っています。日本はどうすべきなのか、お話を伺います。

上山

アメリカ政府は、中国の通信機器大手ファーウェイなど5社のハイテク製品を使用する企業との取り引きを禁じる法律を13日に施行しました。機密情報を保護するための国防権限法に基づきファーウェイのほか、ZTE監視カメラ大手のハイクビジョンとダーファ・テクノロジー無線機大手のハイテラの5社です。この5社の製品を使用する企業はアメリカの政府機関との間で新たな取引や、今の取引の更新ができなくなり実質的に、アメリカ政府と中国企業のどちらを選ぶか二者択一を迫っていることになります。

山口

サプライチェーンの中に中国が含まれる日本企業は多いと思います。渡部さん。今後、日本企業はどう対応すべきだとお考えですか?

渡部

まず覚悟をしなくちゃならないのは、長期的に米中関係は厳しくなっていくことです。これは変わらないと思いますから、それを前提に戦略を立てることとです。日本が、軍事的にも、ビジネスでも、大事なアメリカのパートナーでもある、そこをうまく利用していくことです。中国とアメリカの経済全く切り離すことを、ディカップリングって言うんですけど、それができるとは多分アメリカ人も考えてない。むしろ、そんなことしたら中国の独自に影響力を与える地域を増やしてしまうことになる。だから、先ほどの話に出たような、ファーウェイのような、アメリカ(の安全保障)にとって危ない会社の選択的な切り離しなんです。日本は、どこを選択的に切り離すかという話をアメリカと協議していくしかないですね。それにより、いち早く、日本の方で、その方向性を決めることになる。その都度その都度アメリカが言ってくるのを待っていて、それから、どうするんだって決めている余裕はないと思います。

山口

なるほど。大きな戦略を持って臨むということですかね。遠藤さんはどうですか、この日本企業どのように動けばいいのかどうお考えですか?

遠藤

やはりサプライチェーンというものをあまり中国に頼りきるということをしないということを、この今般のコロナでも嫌と言うほど、よくわかったと思いますので、他のところに移動させていくっていうことを心がけていかなければならない。一方では、例えばファーウェイ、困りに困って、ただ困っているだけかと言うと、そうではなくてで、ファーウェイのハイシリコンという半導体をデザインするハイレベルの子会社があるんですけれども、ここでデザインされた半導体は台湾のTSMCという、ファンドリーと言って、半導体チップを製造する工場があるんですけども、そういうところで作ってもらっていたのですが、先ほど言いましたように、米台がものすごく接近しましたので、トランプの命令により、このTSMCというファーウェイの半導体を作っている台湾の企業は、アメリカに工場を移転させて、そして今年の9月から一切、ファーウェイの製品を作ってはならないということになりまして、それが約束されている。そうするとファーウェイは、もう本当に形無しですね、じゃあどうするかというと、自分の会社の中に、ファンドリーという、すなわち半導体のチップを製造する工場を設置するように、その方向で動き始めています。ファンドリーというのはものすごく大変なんですけども、それを作ろうということで非常に大きく手を広げて今、人材集めたりしてますね。その意味で、中国のハイテクをさらに高めていくという効果も、大変、残念ながら、もたらすかもしれないということも注意しておいた方がいいでしょうね。

上山

大二郎さんはこの日本に迫られている二者択一、本当に難しいんですがどう対応していったらいいんでしょうか?

橋本

二者択一で言えばですね、今はその経済問題のところは色んな判断がありますけれども、その政治的な意味合い、自由・民主・人権ということに関わってきていますので、曖昧なことはできないだろうな、ということを思います。それはやっぱりはっきりした姿勢を日本として示す必要があるだろうと。中国に対してやりすぎだよということはきちっと言わないといけない。例えば、先ほどの周庭さんの話であれば、香港との間に犯罪人の捜査の共助条約というものを日本は結んでいるんですね。それで周庭さんのことについて捜査をしろと日本が言われた時どうするのかというようなことを、きちんと考えて、その条約は破棄するとかしないとかいうことを明確にしていくことが今、迫られているんじゃないかと思います。

■尖閣周辺「近づくな」指示の意図

山口

中国ではきょうから尖閣諸島周辺での漁が解禁となりました。東シナ海沿岸の地元当局が 「釣魚島(尖閣の中国での呼び方ですが)周辺30カイリ(およそ56キロ)への進入禁止」など尖閣を含む 「敏感海域」に近づかないよう指示していたことがわかりました。中国に日本との過度な摩擦を避ける意向があるとみられています。遠藤さんは、この思惑どのように分析されますか?

遠藤

やはり習近平を国賓として日本に招くということを安倍さんがまだやめますという意思表示をしてないものですから、「あなたは私を国賓として招きたいんでしょう」という気持ちが習近平側にはあるので、日本は中国に舐められているんですね、そもそも。だからこそ連日にわたって尖閣諸島周辺への様々な形での侵犯が続いたわけです。そこから見ると、このたびの指示は異様に見えるかもしれませんが、先ほども中国人民解放軍の東部戦区でお話ししたように、中国にとっての最大の核心的利益は台湾ですから、いま台湾海峡では米中両軍のにらみ合いがあるので、日本を利用しよう、安倍さんを利用しようと思っていますから、あまり刺激しないように、というシグナルを発しているんだと思います。

山口

渡部さんどうですか?中国の対日政策、尖閣の状況について、どのように分析されますか?

渡部

歴史的にみると、米中関係が悪くなると中国は日本との関係を良くしようと動くんですね。ところがコロナになってから、むしろ中国は日本にも厳しい姿勢をとっていて、これはだいぶ前とは変わってきたと思います。多分中国が、あまり冷静に動けない国内状況もあるんだろうと思うんですが、今回(禁漁後の漁船の抑制)は、ちょっと抑えてるっていうのは何となく分かるんですけども、だからといってあんまり安心してはいけないと思います。それに米中の対立の中で、日本の立ち位置を考えると、日本にはいずれにせよ(中国が軟化したとしても)難しいですよね。

山口

そうですよね。大二郎さん、本当に難しい状況にあるかと思うんです。日本がどう動くべきなのかいかがでしょうか?

橋本

いま遠藤さんから国賓として習近平の招待の件についてお話がありましたけれども、天安門事件の後に当時の天皇、上皇さまが訪中をしてお言葉を述べられた。そのことが何か天安門後の中国を正当化したというふうに中国が宣伝材料に使ったということがありますので、同じことをやっぱり繰り返してはいけないのではないかと。繰り返さないための手段は色々あると思いますけど、そういうことを考える必要があると思いますし、中国はサプライチェーンでも自国内でやってこうという体制に切り替えようという長期戦略を持っている。そういう中国の戦略をよく見ていくことも日本として必要だと思いますね。

山口

渡部さん、本当に難しい時代になりましたね。

渡部

でも、歴史を考えればずっと難しいんです。それこそ昔は中国をめぐってアメリカと日本は戦争しているんですから、そうならないように頑張るしかないんです、知恵を絞って。

山口

ありがとうございました。

(2020年8月16日放送)