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#179

“コロナ禍”東京五輪直前に『インド型』主流化の予測

感染力の強い「インド型変異株」、デルタ型への置き換わりが進み、東京五輪直前に、新型コロナ感染の主流になるという予測が専門家から示されました。2021年6月13日の『BS朝日 日曜スクープ』は、インド型への置き換わりを予測する研究者と中継をつなぐとともに、緊急事態宣言中にもかかわらず、東京での新規感染者数が下げ止まりつつあることを特集しました。

■途絶えた「前週同曜日より減少」 感染者数増加の懸念

菅原

緊急事態宣言の期限まで、ちょうどあと一週間ですが、感染力の強いインド型の変異株が来月、7月には主流になるという予測が示されました。きょうはその影響をしっかりと考えていきたいと思います。ではゲストをご紹介致します。おなじみ医学博士で白鴎大学教授の岡田晴恵さんです。宜しくお願い致します。

岡田

お願いします。

菅原

そして、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーで慶応義塾大学教授の小林慶一郎さんです。よろしくお願い致します。

小林

よろしくお願いします。

菅原

全国の感染者を見ていきたいと思います。(6月13日)午後6時時点です。まずは北海道ですけれども、こちらが82人。そして東京が304人、先週の日曜日からは減りました。愛知が102人、大阪が二桁96人。そして沖縄が104人などとなっています。緊急事態宣言の期限があと一週間ということになっていますけれども、対象となっている10の都道府県を7つの指標で見て行きます。ステージ4が赤、そしてステージ3が黄色となっていますけれども、北海道は7つ項目のうち3つでステージ4、そして2つでステージ3となっています。東京は1つがステージ4、その他がステージ3などとなっています。さらに見ていきますと、愛知が赤少し多いんですね、ステージ4が3つ、そして沖縄はステージ4が4つ項目が当てはまっているということになります。

こうした中で、昨日、東京で、気になる数字が入ってきました。カレンダーで見て行きますけれども、新規の感染者数、5月の13日からずっと、前の週の同じ曜日よりも減り続けていたんですが、昨日およそ1ヶ月ぶりに増えました。およそ31人増えたということす。きょうは前の週の日曜日からは減っていますけれども、また感染拡大してしまうんじゃないかという心配がある中で、では主要な東京の繁華街の人出はどうなっているのか。

ちょうどこの赤い点線が、今回の緊急事態宣言が出たあたりです。各時間帯、主要な繁華街、一度はガクッと下がったんですが、ずっと右肩上がりを続けているんですね。そしてつい最近になりまして、その角度がさらに急になってきているように見えます。昼夜の人流、人の流れですけれども、4週連続で増加を続けております。

こうした中、東京都の医学総合研究所、西田センター長は、10日木曜日の時点でこのように話しておりました。「継続的な人類、人の流れの増加の影響で、近く新規感染者数が下げ止まり、再び感染再拡大へと転じていく可能性が高く、強い警戒が必要」であると。木曜日の時点で既にこのように話していたんですが、それが、昨日1日ではありますけれども、現実のものとなっています。岡田さん、昨日は、前の週の同じ曜日に比べて感染者数が増えていました。人流の増加から見ても今後の行方、どう見ていらっしゃいますか。

岡田

やはり人流は上がってきたなっていうことですよね。過去の緊急事態宣言中でも、やはり後期になると人流が戻った。宣言から長くなるほど、やはり人流が戻ってきてしまう。ですから、緊急事態宣言慣れ、効かなくなってる。お店ももうやっていけないから開いている店もある、さらに協力金が遅れているから仕方ないとの現場の声もある。こういう中で、やはりこれから感染者が増えてくる可能性が高くなってきていると。

■「人流抑制以外の対策も包括的に」

菅原

この人の流れのグラフを見ても、緊急事態宣言を出した時とほぼ同じぐらいまで、人の流れが増えてしまっているという状況にはなっています。こうした中で宣言は解除するのか延長するのか、菅総理は、G 7サミットでイギリスに行く前、このように話していました。「20日を期限とする地域の新規の感染者は、減少傾向にある、専門家と相談をしながら最終的には判断したい」。時事通信の情報では、東京や愛知、大阪など8つの都府県について、政府は、宣言解除に傾いていると、さらに1カ月程度のまん延防止等重点措置、こちらに切り替えるんじゃないかということを伝えています。その一方ですが、依然として感染状況が厳しいという北海道と沖縄に関しては、解除に慎重論もということで伝えられております。

ではもし、まん延防止等重点装置になった場合、緊急事態宣言とどう違うのか改めて比較します。大きく違うのは飲食店の対策です。例えば緊急事態宣言の場合は、時短と休業の要請・命令を出すことができますが、まん延防止措置の場合には、時短の要請・命令はできますが、休業要請はできません。そして命令違反への罰則も、緊急事態宣言の場合には30万円以下ですが、まん延防止等の場合には20万円以下ということで罰則も少し緩くなっています。

というわけで小林さん、まん延防止措置になるのか、色んな話が出てきていますけれども、分科会の中では、どういった議論になっているのですか。

小林

これは、前の緊急事態の反省も含めて、感染者がもし下げ止まって、その後、再上昇し始めたりすると、なかなか解除は難しいのかもしれませんが、下げ止まる、あるいはひょっとしたら、また下げ続けるという状況であれば、解除に向かう、まん延防止措置に切り替わるということがあるのではないかなと予想はしています。ただ、人流を抑えていくということは、なかなか限界があるので、少し経済的にももう限界があるので、ある程度、経済活動を認めるということと同時に、人流抑制以外の、例えば、検査を拡充するとか、あるいはワクチンをもっと、青年あるいは壮年層に打っていくとか、あるいは、QR コードを使ったお店の入場のチェックなんかをもっと全国的に広げるとか、そういう人流抑制以外の手段で感染者を抑え込んでいく。こういうことを包括的にやっていくべきだという、そんな議論が出ているところですね。

政府は、沖縄を除く9都道府県について、20日の期限をもって緊急事態宣言を解除しました。このうち北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7都道府県は宣言からまん延防止等重点措置に移行。期間は宣言延長の沖縄も含め7月11日までとしています。重点措置地域での酒類提供は、感染症対策の徹底を条件として午後7時まで認めます。

■解除したときのリバウンド懸念は…

上山

小林先生のお話にもありましたけれども、感染者の推移というのが一つポイントになると思うんです。そういった中で、やはりもう一度振り返っておきたいのが、前回の解除の時に東京で起こったことなんです。前回、緊急事態宣言を解除したのが、3月21日。この時の新規感染者数は256人でした。ところがこの1カ月後、新規感染者数は843人に増加してしまったわけなんです。その4日後に緊急事態宣言を再び出すことになってしまいました。そしてポイントなんですけれども、この解除したタイミング、ご覧の通りですね、実は新規感染者が増え始めていた中、増加傾向があった中での解除でした。反省する声も当時あったということなんです。

こちらはですね、東京の前回と今回の新規感染者数を比較したものなんです。20日に解除するとした場合、昨日が解除8日前ですが前回の解除8日前と比べると、1週間平均の新規感染者数は前回が278.9人、今回が390.9人と100人以上多い状況です。前回も、飲食店への午後9時までの時短要請を残す形で解除したにもかかわらず、1カ月でリバウンドしました。杉田さん、当初は、今回は解除を慎重に判断するいう小林さんのお話でしたが、前回より厳しい状況で解除する可能性が高そうですね

杉田

そうですね、感染状況の数字だけ見ると、素朴な疑問として、なぜ今、解除するのかなっていう問いが湧いてきますよね。小林先生がおっしゃった通り、色んな対策を追加的にやるということだと思うんですけれども、そもそもにおいて緊急事態宣言を再延長するのが一番良いのではないかと思ってしまう。この疑問っていうのが当然、皆さん持っていると思うんですよね。もうひとつは、これから緊急事態宣言解除、“下りまん防”になったとした時に、一つは、まん延防止等重点措置の効果が果たしてどれくらいあるのかと。これまでも、まん延防止措置は適用されたんですけど、その時、果たして実際問題として効果はどうだったのか、感染者を抑えたのか、あるいは、拡大に導いてしまったのか、その辺の検証、数字的なものが、欲しいなという思いがしますね。もう一つは、どうしてもオリンピックに向けた色んな準備が始まって、なんとなく気持ちがオリンピックに向いてきている状況ですので、そういう中でワクチンも接種の数字が増えているということで、人々の気持ちがもう大丈夫だと緩んできているというのが間違ないところだと思うんですよね。そういう様々な状況を考えていきますと、今回、20日で解除した時にその後、やっぱりリバンドの懸念というのは、非常に大きいと思いますね。

上山

小林さん、杉田さんのお話ですと、まん延防止措置の効果というのがイマイチ分からないんじゃないかという指摘がありましたけれども、この辺りはどのように考えていらっしゃいますか。

小林

そこは、ちゃんと検証しなければいけないと思います。まだちゃんと出来ていないので、まん延防止措置の効果どうだったか検証しなきゃいけないと思います。ただ、前回は感染が増えてく局面で解除したと。今回は感染がおそらく増える局面では解除しないんだろうと思いますから、減っていく局面で解除する、そこが一つ違い。それからもう一つ、やはり局面として違うのは、ワクチンが相当、高齢者の中では打たれているので、一つ重要なのは、感染者が増えても重症化する人の割合が減るんじゃないだろうかということが、ひとつ希望的観測ですがあります。もう一つは、東京の医療のキャパシティ、要するに確保病床の数ですが、これも前回に比べると倍くらいに増えているはずですので、特に重症者用病床増えてますから。2つ良いニュースとして、ワクチンで重症者が減るということと、重症者用の病床が増えてるということで、そこで医療の対応能力が上がっているということがありますので、そういう意味で医療が逼迫して大変な状態になるという可能性は少し緩んでくると。ただそれは、インド株でまた全然ひっくり返ってしまう話ですから、リスクは、おっしゃる通り、非常に高い状況であることは間違いないと思いますね。

上山

本当に難しい判断になりそうですよね。

菅原

先ほど、飲食店にも厳しい状況が続けられているという小林さんのお話でしたけれども、こういった状況も飲食店界隈で起きているようです。対策の要である飲食店について、東京都が今回の宣言下でおよそ19万店調査したところ3600店が要請に応じていなかったといいます。そのうち要請に応じない53施設に命令を出したということです。

小林さん、先ほどの「人流抑制」と、この「飲食店」への要請、緊急事態宣言の2つの柱の効果が薄れている。分科会の中でも皆さん、メンバーとして危機感を共有していらっしゃるんでしょうか。

小林

そうですね。やはりなかなか人流、そして飲食店の対策だけは抑えきれないので、そこで先ほどのような検査、あるいはQR コードを使った入場のチェックとか、そういう科学的な手法を使って、そしてデジタル技術を使って、何とか感染者を補足していくと、そういう方向に重心を置けないだろうかという、こういう議論をしているところです。そして飲食店については、協力金などが金額も不十分であるかもしれませんし、また支払いが遅れるということもあります。ですので今、飲食店を支えてるのは要するに借金ですね。金融機関からの無利子無担保融資のようなもので資金繰りをつけてるということなので、それでなんとか経営をつないでもらって、コロナが落ち着いた後、その債務についてきちんと返せる水準まで減免していく、そういう経済政策をしっかり考えていかないといけないと思います。

■「インド型“置き換わり”前に…スピード勝負」

菅原

きちんとした説明と手当、こういったものが必要だと思います。そして今後、さらに懸念されていく材料となっているのが、インド型の変異株です。都内で3例目の「インド型変異株」のクラスターが確認されました。都内の中学生を中心にその家族など14人が感染。これまでで最大の「インド型変異株」のクラスターです。海外渡航歴はありません。つまり市中感染の可能性が高いということです。学校での感染ですが、具体的な状況は、各教室にアルコール、換気、マスク着用、給食の黙食など、ガイドライン通りの対策は行っていたということです。感染した生徒は、部活が一緒、登下校などが一緒。接触があった教諭やクラスメイトでも感染していない生徒もいるといいます。岡田さん、中学校でのクラスターからインド型変異株の特徴、どう捉えていらっしゃいますか。

岡田

今度7月中旬以降ですね、インド株が英国型に替わって、国内流行の主流になるんじゃないかっていう話がもう言われているわけですよね。厚労関係者からは8月には8割9割がインド型ウイルスという話もあります。

菅原

岡田さんも以前からおっしゃってましたよね。

岡田

そうですね。厚労省関係者や分科会の関係者からも、そういう発言が聞こえてくる。インド型ウイルスは英国株より感染力が強い。だから入れ替わると。ですから、感染力が強いってことは、やはりレセプターの結合力も強いんだろうと思うんですね。ですから、やはり若い人でもこういうクラスターが出やすくなると。ですから、やはりこれまでと同じルーティンの感染対策をやっていても、感染が広がっていくんだということをやはり認知しなきゃいけないということと、今後ですね、やはり若い人で病態がどうなっていくかとか、重症化率がどうなのかとか、そういうところをよく注視していくこと。それから大事なのは感染力が強いということは急激に感染者数が増多に転じる可能性が強い。ワクチンは40代50代にまだまだ打てていませんから、そこで患者が増えると医療が逼迫しやすくなる。

菅原

インド型の変異株、国内ではどれほど広がっているんでしょうか。感染状況を見て行きます。現在確認されているのは15の都府県で235件。そして空港の検疫で192件となっています。都道府県別の内訳を見てみますと、東京が63件、そして神奈川が56件ということで、主に首都圏での広がりが現段階では見えてきています。そしてインド型の新規の感染者数の推移を見て行きます。5月12日以降ということになりますけれども、この5月21日ここだけ160人と突出してしまっているのは、過去に遡って人数を数えたということで、ここだけ多くなってしまっているんですけれども、直近で見ていきますと例えば、10日の木曜日には26人、そして一昨日17人、昨日が6人となっていまして直近の一週間で言いますと、インド型変異株の新規の感染者数は83人となっているわけです。

この数字だけ見ると、まだまだインド株の新規の感染者、少なく見えますけれども、上山さん、イギリスではこうした状況から一気に感染者が増えたという例あるんですよね。

上山

そうなんです。イギリスの「インド型変異株」ですが、およそ2か月前の4月22日からの1週間の新規感染者は202人でした。それが1カ月後の5月20日の週には6959人に。さらに2週間後には4万2323人になりました。アメリカ、アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「英国ではデルタ型、インド型変異株が急速に主流になりつつあり、60%以上を占めている」としています。岡田さん、日本は直近1週間の「インド型変異株」の新規感染者が83人ですが、今後、懸念はあるということですか?

岡田

まだ日本ではインド型のL452Rの検査は、全国的に地方衛生研究所で調べられている数は少ないわけです、感染研で試薬を用意して配布の準備段階と聞いています。ですから、厚労省の人に聞いてみると、調査件数は1割ぐらいじゃないかと言われてるのですね。4割目指すが、まだ。そもそも少ない検査件数でその1割しかチェックできていない。それでも、7月中旬以降ですね、やはり英国型ウイルスからインド型ウイルスに反転して、主流になってくるだろう、というお話も出てきています。ですから、やはり今はワクチンの接種率をいかに上げていくかしか現段階は手がない、というところに追い詰められている。このインド型変異ウイルスが置き変わって増える前に、いかに接種率を上げていくかということで、(厚労大臣の)田村さんも職域接種とかですね、そういうことを広げようとしてるんじゃないかと思うんですね。今、もうスピード勝負だと思いますね。

上山

なるほど、実際に厚生労働省でも職域接種を早めましたけれども、それはやっぱりインド型の変異株、この拡大のスピードを意識してということなんでしょうか。

岡田

やはりですね、7月初旬には都議選もあるし、すぐ五輪もある、8月はお盆休み夏休みと人流が動きやすい。それからやはり集団免疫ということを考えますと、夏までにやはり少なくとも4割もしくは半分くらいまで、何が何でも接種率を持っていきたいということがある。インド型ならもっと接種率を上げたいところでしょうけれど。その中で、インド型の変異ウイルスがこういう風に増えつつあると。そういう中でスピード勝負ということで、やはり政府もワクチンだのみになっていると思います。

■インド型「7月中旬に半数超え」の予測

管原

では、なぜそこまでスピードを速めなければいけないのか、という点なんですけれども、やはりインド型の変異株についてはこんな予測、出ているんですね。京都大学の西浦博教授と北海道大学の伊藤公人教授が出した予測です。現在6月、まだ現状はイギリス型が主流となっているわけなんですが、これが7月中旬以降になりますと、一気にインド型の変異株が半数を超えまして主流になる、こういった予測が出されたんです。

しかも、その感染力について、従来株からしますと1.78倍ということで、4月以降、一時猛威を振る舞いましたイギリス型と比べても、さらに感染力が強いということで、今後はこれに置き換わる可能性が高いということなんです。きょうはこの予測を発表した北海道大学の伊藤教授と中継がつながっています。伊藤さん、よろしくお願い致します。

伊藤

よろしくお願いします。

管原

来月にはこのインド型が主流になるという予測ですけれども、現状まだまだ新規の感染者数はそこまで多くないんですが、これがあと1カ月でガラッと変わってしまうということなんでしょうか。

伊藤

我々がアドバイザリーボードで報告した資料の計算では,去年の12月から今年の5月8日までに日本で確認された3万株のウイルスの遺伝子情報を使っています。これを元に、それぞれの株が検出された割合の変化を示したのが、先ほどのパネルの実線となります。このデータから、従来株が1人に感染させる時に、変異株は何人に感染させているか、というものを計算しました。ひとつ強調しなければならないのは,インド株の伝播性が1.78倍高いというのは、去年12月に流行していた従来株と比べて、ということです。現在主流である英国株というのは、12月の株に比べて約1.45倍伝播性が高いので、インド株と英国株を比較した場合は、インド株は英国株よりも1.23倍高いということになります。英国株が1人に感染させる時にインド株は1.23人に感染させているということになって、このペースを考えると7月8日から7月16日の間にインド株による感染が英国株を上回るというような予測になります。

菅原

来月には置き換わるという予想ですけれども、これが実際に起きてしまうと国内の感染者数等はどうなってしまうと見ていますか。

伊藤

感染者数は、その時の対策によるのでなんとも言えませんが、一つ言えることは、今の対策は英国株に有効で確実に感染者の数を減らして来てますが、これが英国株よりも感染性が高いインド株に置き換わった場合には、現在、減少している感染者数というのが横ばい、あるいは再び上昇したりする可能性は高いと考えています。

菅原

今の国内の状況で言いますと、ワクチン接種が進んできていますけれども、それでも、インド型への置き換わりは続いて行くんでしょうか。

伊藤

インド型だけに効く対策というのはありません。なので、どのような対策を行ったとしても、英国株が市中に感染する度にインド株は1.23人に感染しますので、感染者が増えようが下がろうが、国内からコロナウイルスが無くならない限り、インド株に置き換わるペースは一定と考えられて、インド株に主流になるというのはまず間違いないと言えます。

■「インド型“主流化”を前提に五輪対策を」

菅原

このまま予測の通り7月半ばにインド型の変異株が半数を越えるとなりますと、7月23日、ここでオリンピックの開会式、現状控えていて、その直前あたりに変異株がどうやら主流になってくるわけですよね。そうなると伊藤さん、東京オリンピックにも少なからず何かしらの影響与えてくると見ていますか。

伊藤

はい。これは単にタイミングが悪いということしか言いようが無いんですが,ちょうどオリンピックが行われる期間にインド株が主流になるタイミングが重なってしまったということになります。なのでオリンピックに関しては、その時にインド株が主流になっているであろうということを想定した上で、対策を考えておかなければならないかと思います。

菅原

この1カ月の過ごし方、非常に変異株、インド型を意識しなければならないということですね。

伊藤

そうですね。オリンピックのために対策を緩めるということはあってはならないので、インド株の増加に合わせて人との接触を、これは英国株と比較すると約23%程度減らさないと、同等の成果はえられないということになります。

上山

杉田さんは、今までのお話、伺っていて、何か質問とかありますか。

杉田

伊藤先生、共同通信の杉田ですけれども、ありがとうございます。オリンピックがもたらす海外からの人流ですね、これがインド株への置き換わりを加速する、そういう懸念はお持ちですか。

伊藤

いや、既にもうインド株は国内に入っているので、海外から持ち込まれるものよりも国内の方が心配ということと、インド株が流行ってない国に海外の選手が日本から持って帰ってしまうというリスクも、逆にあるということになるかと思います。インド株が流行っている地域からは、ある程度、人が来るでしょうけれども、日本国内で増える量がこれだけあるので、そっちの心配よりも、重要ですけども、国内だけを考えた時もこれぐらいのリスクがあるということを想定しておかなければいけないと思います。

菅原

本当に感染力の強いインド型が、主流に来月にもなるということを我々しっかりと把握しておかなければいけません。伊藤さん、きょうはどうもありがとうございました 。

伊藤

ありがとうございました。

管原

分科会の尾身会長も振り返ってみますと、先月の29日には1カ月半から2カ月でこのインド型に置き換わる可能性があると話していたわけですけれども、小林さん、やはり分科会もこの辺りの感染力の強さ、怖さっていうのよく分かっていたわけですね。

小林

はい。ここは皆さん、危機感を共有していると思います。オリンピックとの関係で2つポイントがあると思うんですが、一つはそのインド株が流行することで医療資源が逼迫してしまったら、それは結局、オリンピックに使える医療資源が少なくなると。要するにオリンピックのために働けるお医者さんや看護師さんの数が少なくなってしまうと、こういう問題が発生する懸念があるということが一つあります。もう一つ、逆の方向で重要なのは、オリンピックを開くことでインド株のまん延、あるいはコロナ全体のまん延がより激しくなるかどうかということについては、別のシミュレーションの結果がありまして、東大の経済学部の藤井さん、仲田さんたちのシミュレーションによると、海外から10万人のオリンピック関係者がやってきてオリンピックを開催したとしても、日本の国内の感染の状況に与える影響は実はそんなに大きくはないという結果が出ています。今、再度新しいシミュレーションをしながら確認中なんですけども、おそらく私もそういう結果になるだろうと思っています。ということは何かと言うと、オリンピックの開催をするかしないかとか、あるいはオリンピックを制限するかどうかということ、それも重要なんですが、それ以上に重要なのは、これからの2、3カ月の間、オリンピックの期間を含めたこの夏の間に、いかに国内の人流対策をしっかりやってインド株の感染を抑えていけるかどうかと。この対策をしっかり早く打ち出すということが一番重要なんだろうと思います。

■コーツ副会長が発言「私は観客を見たい」

管原

この夏、新規の感染者数をどう抑えていくのか。ポイントとなりそうなのがオリンピックです。分科会の尾身会長ですけれども、「開催することによるリスクがあるなら、どのように低減できるかという選択肢も含めて示すことが我々の責務だと思っている」と開催のリスクについて言及していて、観客のリスクを評価し、提言すると見られています。そんな中、IOCジョン・コーツ副会長はこのように話しています。「私は観客を見たいし、選手たちも見たいと思っているだろう」と、このように話しているわけですね。

ちなみにですね、大会を開催した時の東京都内の競技場を訪れる観客について、こういった想定が出されています。大会組織委員会が出しているものなんですけれども、1日およそ22万5000人、こういった試算が出されました。この数が果たして多いのか少ないのか、というところなんですけれども、他にも組織委員会の試算では大会が開催されている時期に観光や出張で東京を訪問する人がおよそ25万人、そして東京の外、都外からの通勤通学が1日およそ194万人。こういった試算を出しまして、これに比べたら少ないでしょうという意味だと思うんですが、岡田さん自身はこの数字どう見ていらっしゃいますか。

岡田

これに比べたら少ないでしょう、ということなんだと思うんですけれども、その時の流行状況だと思います。だからその時に緊急事態宣言が出ているのか?出ていなくとも、例えば国内のスポーツ、プロ野球が観客をどれだけ入れているかとか、そういうところもひとつのメルクマールにはなると思うんですよね。私は思うのはやっぱり、ここで勘所なのは人流を抑えることですね。ワクチンの接種率上げる、そこのスピード問題とになると、そして五輪はコロナの中では自宅で応援すると。そしてPVも中止になったと。それならもう、戦う五輪ならば、自宅で応援しながら選手と共に戦うしかないんだなと。それが一番重要なポイントかなという風に拝見しました。

上山

その辺り、どう人の流れを抑えるのかといったところで、政府からこの1週間でオリンピック期間中の行動について示された事があります。千葉、神奈川などでパブリックビューイングの中止が決まったことを受け、田村厚労大臣は「できれば本当にご自宅で応援頂きたい」と発言しました。さらに武田総務大臣は「東京オリンピック・パラリンピックを安全安心な大会とするため7月19日から9月5日までテレワークの集中的な実施を呼びかけるテレワーク・デイズ2021を行います」と話しました。

管原

このテレワークデイズ、ちょうど7月19日から9月5日ということでオリンピックの開催時期、そしてパラリンピックの開催時期に被っている中、国民の皆さんはなるべくテレワーク自宅に止まってください、こういったものが設定されたわけで、一部の国民の方からは何だこれはという声も上がっているようですけれども、杉田さん。こういった政府の対策等、どうご覧になっているのか、『アンカーの眼』をお願いします。

杉田

私のきょうの『アンカーの眼』はですね、「IOC に負けるな」と、日本主体で日本人が納得できる決定をしましょうということですね。この問題に非常に感情的になってはまずいんですけれども、ただ、例えばパブリックビューイングが中止になったりとか、あるいは自宅でテレビを見て応援しようという、田村大臣がおっしゃっていることなんですけれども、この辺のことはですね、みんな国民が、やっぱり今の状況でオリンピックやるのはちょっとおかしいんじゃないかということで、そういう声が上がったために、そういう方向にだんだん軌道修正されてきたと思うんですよね。

やはり日本人が納得できて、安心を感じられるような大会運営にしなければいけませんから、そのためには例えばIOCのコーツさんが「私は観客を見たい」と言っても、それはコーツさんがIOCの幹部なのでできるだけフルに近い形の五輪を見たいかもしれませんけども、やはり日本人として、果たしてそれでいいのかどうなのかということを納得した形で判断する。IOC と日本と、綱引きというか、せめぎ合いが今、起きているんだと思うんですけども、やっぱりそれが少しずつ少しずつ日本側の主張、日本人が安心できる形での開催に向けた主張をどんどん強めていく、そういう段階だと思います。

管原

ですから、この観客のリスクも、この後、尾身さん評価して発表するんだという話がありましたけれども、このあたりもしっかりと我々説明を受けて、それで納得する数字が出てくれば、今後の考えようによってはと思うんですけれども。

杉田

そうですね。やはり科学をベースにした、納得できる判断を日本人として下したいということですね。

東京オリンピックの観客をめぐっては、大会組織委員会と政府、東京都、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)の5者会談が21日、開かれました。その結果、組織委員会などは、会場の収容定員の50%以内で1万人を上限とすることを原則に観客を入れて開催することを決めました。一方で、期限を超えて、来月12日以降、緊急事態宣言や重点措置が出された場合は、無観客も含めて対応するとしています。また、パブリックビューイングについては、東京都の小池百合子知事が19日、東京オリンピック・パラリンピックの期間中の、都内でのすべての計画を中止すると表明しました。一部の会場はワクチンを接種するための会場に転用するということです。

■今後のために…重症化予測の検査キットも

管原

こうした中で、今後、医療の面で新たな技術が注目されているんですね。おととい、塩野義製薬とシスメックスが共同で感染者の重症化を予測する検査キットが保険適用されることが決定しました。この検査キット、血液中に含まれる「TARC」というたんぱく質の濃度から、陽性となった人が、その後重症化するのか判定できるもので17分で結果がわかるといいます。国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は「患者がすごくたくさん出たときに、誰が入院すべきなんだというのはどうしても問題になる。限られた数のベッドは、中等症以上の方に使うべき。そういうときに入院患者をどう選び出すかということはすごく大事。そのときの手助けになるのではないか」としています。

岡田さん、まさに大阪で大変な状況がありました。感染者が増えて医療現場が逼迫する、そんな時にどなたを入院させるのか、治療に当たるのか、トリアージをしなければいけない中で、こういった技術、非常に有効的ですよね。

岡田

第4波では、大阪などでは医療逼迫、崩壊に近い状況になりました。自宅で酸素、点滴治療という状況も報道されました。自宅で重症化されて、自宅で亡くなられた方もおられたし、そういうような事をまず作り出さないってことが大事なことですね。ですから、まずは流行を大きくしない。さらに、こういう新たなカードが出てきたっていうのはとても喜ばしい事ではあるんですけど、基本中の基本としては、まずワクチンの接種率を上げるということと、やはり感染そのものを抑止していくということと、インド型が増えてくるということは、英国株よりも1.23倍ということは、同じことやっていたら広がりますという数字ですから、やはりここは、五輪だとかお盆休みだとか、非常に辛い面もあるんですけども、より強めていかなきゃいけない対策はあるんだろうなと。ただ、飲食店の辛さというのもよくわかりますので、今までの協力金ですか、その遅れを改善していただきたいというふうに思っております。

管原

小林さん、協力金のお話ありましたけれども、ただ締め付けを行うだけではなくて、その手助け、手当、こういったことも本当に必要ですよね。

小林

そうなんですね。今ちょっと議論がオリンピックの開催とか、あるいは観客を入れるか入れないかということに非常に集中していて、分科会の中でもちょっと議論がそこに集中していることがあって、実は、大事なことは、飲食店を含めた人流対策、パブリックビューイングとかスポーツバーとかは少し自粛してもらうというような、そういう対策を全国でやっていかなきゃいけない。そのための財政的な支援というのもしっかり考えなきゃいけない、ということなんですが、そこがまだちゃんと議論できていないことが問題かなと思います。それから、観客を入れる入れないについては、補足的に言うと、いまシミュレーションを我々、経済学者の仲間がやっておりまして、それもまた政府に提出されると思いますけど、観客も入れても直接的な効果として、感染を広げる効果がそんなに数字的には大きくはないらしいということはわかってます。ただ問題なのは、オリンピックを開催することによって全国で人流が増えてしまうこと。これは尾身先生も強調されてますけれども、その全国で増える人流にどう対処するかということを、まだ十分議論できてない。これは早く対策を打ち出す必要があるという風に思いますね。

菅原

はい。杉田さん、接種が本当に鋭意、進んでいる段階ではありますけれども、今後をどう見ていらっしゃいますか。

杉田

まさに岡田先生と小林先生がおっしゃったことに尽きると思うんですけれども、とにかくワクチン接種のスピードアップをどうするかということで、やっぱり我々の目から見ては納得できないのは、例えば大規模接種会場ですね。非常に接種される方が少ないと。といういうことになると、なぜそれを65歳未満の方にオープンにしないのかな、という疑問が出てくるわけですよね。そこの問題が一つありますよね。それからあと小林先生がおっしゃったように協力金等の支払いの遅れの問題。これはもうあちこちで非常に大きな問題になっていますので、これもなぜなのかなと。今時になってですね、まだ2月3月分の支払いがまだないということで、飲食店の方が非常に苦労してらっしゃる。この辺の問題がですね、これ1年以上続けてて、依然こういった問題が解決できてないというのは、やっぱり納得できない部分ですよね。ですからその辺は早急に対策をしてほしいと思います。

自衛隊が運営する、東京と大阪の大規模接種センターは17日、全国の18歳以上を対象に接種を開始 接種券が必要ですが、これまでの65歳以上の高齢者限定から大幅に範囲を拡大しました。

(2021年6月13日放送)