番組表

放送内容

俺らがつなぐヘルメット ~県立高校で学ぶ南部もぐり~

舞台は岩手県北東部、漁業が盛んな洋野ひろの町にある種市たねいち高校です。ここに日本で唯一、潜水と土木を学ぶことができる海洋開発科があります。各学年の生徒数は定員40人に対し10人前後と定員割れが続いています。しかしダイバーにあこがれる生徒が、全国から入学してきています。種市高校やこの地で潜水を学んだ人たちは「南部もぐり」とよばれ、これまで東京湾アクアラインなどの水中工事や漁などに携わり国内外で活躍しています。
 
生徒たちに潜水の技術を教えているのは、洋野町の隣町の久慈市出身で種市高校のOBでもある教員の大向おおむかいあきらさん(43)です。大向さんは種市高校卒業後、ダイバーとして海洋工事に携わり、年収1000万円を超えることもありました。しかし東日本大震災をきっかけに「海外で油田を作っている場合じゃない」「日本のためにやれることはなんだろう」と考え、南部もぐりを育てる教員になることを決めました。自らの社会人経験をもとに、生徒たちが自分の仕事に責任を持つ潜水士に育っていってほしいと、指導を続けています。
 
学校が特に特に力を入れて指導しているのがヘルメット式潜水と呼ばれる潜水技術です。金属製のヘルメットをかぶる宇宙服のような潜水服の総重量は約65キロ。このスタイルは約130年前に岩手に伝わり、ホヤ漁などの産業と結び付き伝承されてきました。丈夫で潜水技術の基礎が詰まったヘルメット式ですが、より軽量で着脱が楽なフーカー式が今は主流で、漁や工事現場で使われる機会が減ってきています。今では岩手県内で、ヘルメット式で漁を行う漁師も2人だけになってしまいました。大切に受け継がれてきた技術は風前のともし火ですが、それを受け継ごうとする生徒もいます。
 
北海道根室市からやってきて、「ヘルメット一択ですね」と語る佐藤瑳武さむさん。漁師の家に生まれ、幼いころから父の船に乗るヘルメット式の南部もぐりに憧れて育ちました。将来はヘルメット式でウニをとりたい…という夢をもって種市高校で学び、今年卒業しました。
種市高校では入学者を増やすため一般参加の潜水体験会を開いています。そのかいがあってか、今年度は去年より7人多い18人が入学しました。その一人が、庄林しょうばやし幸洋さん。夢は、今は亡き祖父が愛した海に、祖父から譲り受けたヘルメットで潜ること。その思いで、種市高校に入学してきました。
ヘルメット自体が、製造技術者が既に存在しておらず、修理を請け負ってくれるのも、東京都荒川区の東亜潜水機(株)の一社のみ。そんな状況でも、ヘルメットを受け継ぎ、南部もぐりの伝統を守っていこうとする人たちの日々を見つめます。