番組表

放送内容

#112

パフェ職人 森郁磨

東京都世田谷区上野毛にある、レトロでおしゃれな白い扉が目印のパフェ専門店「ラトリエ・ア・マ・ファソン」。この店で提供されるのは、一般的な「パフェ」というイメージを軽々と覆す、芸術品のようなスイーツ。その全てのメニューをデザインし、作り上げるのが、森郁磨(47)だ。
 
店のメニュー表には、お客に想像力を働かせてもらうため、写真を掲載していない。
たとえば、梅雨限定のパフェ『梅雨の情景、今では主流となってきた 紫陽花を模したグラスデザート』を注文すると、目の前には心弾むような美しいパフェが現れる。
グラスの表層には、紫陽花に見立てた青や紫の淡い彩りのゼリー。紫陽花の上には、メレンゲでできた小さなカタツムリの姿、葉にはケーキの艶出しに使うジュレでできた雨粒と、細部まで梅雨が表現されている。
味も想像を心地よく裏切ってくれる。あまりスイーツには使われない食材を組み合わせるのが森の真骨頂。アジサイの葉は青梅の翡翠煮、周りの葉は大葉のソルベと、夏の始まりを感じる爽やかな味わい。そして、食べ進めると「じゃりじゃり」とした食感が出現する。これは、道明寺。雨の中、お寺の砂利道を歩く情景を音で表現しているのだ。
森の世界観は食器にも息づいている。四角形の器や曲線を描く器など、およそパフェが盛り付けられるとは想像できないようなものが多い。これらの食器はほとんど、陶芸家の伊藤剛俊に特注したものだ。一般的なパフェとはまるで違うため、森は自身の作品を「グラスデザート」と定義する。
そんな美を追究するパフェ職人の仕事に密着した。