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#65

日ロ首脳会談の意義 駐日ロシア大使 生出演

安倍総理がモスクワを訪れて行われた、日ロ首脳会談。2019年1月27日のBS朝日『日曜スクープ』は、駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏が生出演し、北方領土問題を含む平和条約締結交渉をロシアはどのようにとらえているか、語りました。ゲストに、国境問題に詳しい山田吉彦・東海大学教授も加わり、交渉のあり方を議論しました。

■「日ロ関係友好的に進めるには…」

山口
先日(2019年1月22日)の日ロ首脳会談について見ていこうと思うんですが、大きな進展はなかったのではないかと見る向きもありますけれども、逆に水面下でいろいろ動いているので、表面化しづらいのではないかという面も大いにあると思います。そこできょうはとっておきのゲストの方々に来ていただいております。ご紹介致します。去年1月から、駐日ロシア大使を務めていらっしゃいます、ミハイル・ガルージン大使です。どうぞよろしくお願い致します。

ガルージン大使
こんばんは、よろしくお願いします。

山口
そしてもうお一人です。国境問題に詳しい東海大学海洋学部教授の山田吉彦さんです。どうぞ、よろしくお願い致します。

山田
よろしくお願いします。

山口
さて、ガルージンさんはまさに知日派を代表するような方です。これまでのガルージンさんの経歴を簡単にご紹介させて頂きます。こちらをご覧ください。まず、外交官だったお父さんに伴って5歳から5年間、日本に滞在していらっしゃいました。そしてモスクワ国立大学で日本語を学ばれて、さらに日本の大学に留学もしていました。外務省に入省した後すぐに日本での勤務になっています。そしてゴルバチョフさんやエリツィンさん、
この両大統領との首脳会談の通訳も務めていらっしゃいました。そして2001年から8年まで駐日ロシア公使。そして去年のちょうど1月、1年前に駐日ロシア大使に着任されました。ガルージンさんと言いますと、なんといっても日本語がとても上手ですよね。

ガルージン大使
どうでしょうかね。

山口
聞いたところによると今でも毎日、日本語の勉強をされていると。

ガルージン大使
そうですね。難しいから毎日勉強しないと働けないでしょ。

山口
今、一番関心のある日本での出来事って何でしょうか?

ガルージン大使
いま大使の立場ですから、日本のみなさんと協力しながら、日ロ関係をまさに隣国として、善隣に友好的な形でどう進めたらいいかということをまず考えています。もちろん日本政府がロシアに対してどういう態度を取っておられるかということは、1番の関心事です。もちろん、日本という国が大変すばらしい国で、日本の文化・芸術等々に大きな関心を持っています。例えば、この間、裏千家流の茶道の初釜の儀式に私はお招きを頂き、大変深い印象を改めて受けました。日本国民の皆さんがいかに大事に自分の文化を守っているか、いかに古い文化的な伝統を維持しているのかということを改めて実感致しまして、深い印象を受けました。

山口
ありがとうございます。
そうやって日本の文化にも関心と理解を頂く方が大使になられているというのは本当にありがたく我々も思うんですよね。そして大木さん、なんといってもガルージンさんは、これまでも日ロ交渉の非常に重要な局面に通訳としても関わっていらっしゃったんですよね。

大木
そうなんですよ。だからVTRがたくさん残っていました。プロフィールにもありましたように、98年の橋本・エリツィン会談、いわゆる川奈会談のときに通訳を務められるなど、日本との外交の非常に重要な局面に携わってきました。

ガルージン大使は1983年 ソ連外務省に入省。
ゴルバチョフ大統領やエリツィン大統領の通訳を務めるなど日ロの外交交渉で重要な役割を果たしてきました。
1998年、橋本龍太郎総理とエリツィン大統領(いずれも当時)による日ロ首脳会談が行われた川奈ホテルでは、たまたま開かれていた結婚披露宴に二人が飛び入り参加した際、祝辞の通訳をしたのも、ガルージン大使でした。
エリツィン大統領を通訳する若き日のガルージン大使は「新郎新婦の方にロシア全国民を代表いたしまして(お二人が)愛し合って暮らせますように希望します」の述べたり、太鼓をたたくエリツィン大統領がハッピを脱ぐのを手伝い、海釣りでは、釣竿の扱い方を丁寧にアドバイス。
1997年のクラスノヤルスク合意でエリツィン大統領と橋本龍太郎総理が力強く握手する場面では、「2000年までに平和条約の問題を解決するという具体的な時期に一緒に到達してきました。
日本、ロシアそして全世界に向けて報道してください、我々は合意したんです、一番大事な事について合意したことを報道してください」と、エリツィン大統領を通訳しました。

山口
ガルージンさんは、ゴルバチョフさんやエリツィンさんをそばで支えていらっしゃったわけですけれども、ぜひ伺いたかったんですが、ゴルバチョフさんやエリツィンさんは人柄としてはどんな方々なんですか?

ガルージン大使
2人ともソ連・ロシアの歴史に大きな役割を果たした方々だと私は思っております。

山口
そのお二人と比較して、プーチンさんはどんな方でしょうか?

ガルージン大使
本当にですね、あの当時、通訳だったでしょう、私。ですから、今おっしゃったご質問はちょっと答えにくいです。というのは自分が通訳として、自分が大使として国のために務めていますから、国の元首を手伝う役割です。ですから対外的に国の元首の事柄をコメントするよりも、手伝う方ですから。手伝う自分の仕事に集中したいと思います。

山口
さすがプロの外交官でいらっしゃいますね、さすがですね。それでは本題に入っていきたいと思います。今回の日ロ首脳会談についてです。まず確認されたことを大木さんお願い致します。

大木
はい、こちらになります。まず安倍総理です。「(北方領土問題を含む平和条約交渉を)さらに前進させるよう(河野外務大臣らに)指示した」そしてプーチン大統領は「(条約締結の)環境を整備するため今後も大変な作業が待っている」と発言しました。そして両首脳は「相互に受け入れ可能な解決策」が必要だということで一致したということを発表しました。

山口
ガルージンさんにお伺いしたいのですけれども、今回の日ロ首脳会談なんですが、合計3時間に及びました。そして50分間は通訳だけを挟んだ1対1の会談でした。プーチン大統領は自分の執務室に安倍総理を案内したということもありましたので、ロシア側としてはかなり力の入った会談だったということが言えると思います。いかかでしょうか?

ガルージン大使
そうです。おっしゃる通りだと思います。つまり、ロシアは日本という国を大変重要な隣国で、大変有望なパートナーとして見なしています。日本という国との関係を双方にとって利益をもたらす形で、互恵的な形で、善隣と友好の精神に基づいて進めていきたいから、まさに、おっしゃったような温かいお出迎えを安倍総理にあげさせて頂きました。

山口
山田さんは今回の日ロ会談をどう見ましたか?

山田
しっかりと時間を割いて直接にお話をされていますね。まずは日ロ平和条約に向けて、解決に向けて動き出す。そして、北方四島の解決に向けて動き出すということは、前提となる、いま日ロ間を包んでいる問題、例えば朝鮮半島の問題、あるいはアメリカのトランプ政権の動き方、1つ1つ確認しておかなければいけないことを十分に話し合う時間があったと。そうなってくると、次に向かっていくステップとして非常に重要な会談だったのではないかと感じています。

■「交渉“加速化”には環境づくり」

山口
川村さんは今回の会談をどう受け止めていらっしゃいますか?

川村
シンガポールでの1956年の日ソ共同宣言に基づいて平和条約交渉を加速させるということで、私の取材では、官邸筋や外務省も加速ができたと思うというふうに言っています。ただ、なぜ加速ができたのか。その中身については、これから何が起きていくのかというのは、お互いの交渉事なので明らかにしていませんけれども、ガルージン大使にぜひお聞きしたいのは、大使が見ていて、今度の交渉で加速があった、非常にスピードが増した、良い成果が得られたというふうにやっぱりお感じですか?

ガルージン大使
まずですね、平和条約問題という大変、両国・両国民にとって敏感な問題を話し合う際に、まず話し合って、そして将来、最終的に解決をするために、まず何が必要であるかと言うと、それは良好な環境ですよ。ですから、プーチン大統領は、安倍総理との会談の後の記者会見で明確に述べましたように「我々はこれから双方にとって受け入れ可能な解決に到達するための環境作りをやるために、それは長期的かつ地道な綿密な作業が控えている」ということをはっきりと言いました。そして今、おっしゃったように、対話、交渉を加速化させるために、まずはその環境作りが必要であるというふうに私どもは思っております。そして、その環境作りを加速させるには、まさに色んな双方の努力が必要であると私は思います。例えば、どういう努力であるかというと、それもプーチン大統領、そして、その1週間前に河野大臣との会談の後、1月14日にラブロフ外務大臣もはっきりと説明していますけれども、どういうことが必要であるかと言うと、まず環境作りのために何が必要であるかと言うと、それは、まず日本側が第二次世界大戦の結果を認めること。そして、第2には、おそらく日米同盟に淵源する、我々の安全保障上の懸念を解消すること。さらに、日ロ関係全体を今よりも大幅に進めること。まさに真のパートナーシップ関係を構築すること。そういう大体3つの分野において、まさしく加速しなければならないと私は思います。

山口
まさにそこのポイントなんですよね。大使が今おっしゃいました、プーチン大統領が共同記者会見でこういうことを話されています。「解決策はロシアと日本両国民にとって受け入れ可能で、両国民の世論によって支持されるものでなくてはならない」。ここがキーになると思うんですね。「両国の国民にとって受け入れ可能な解決策」とはいったい何なのか?そこを探っていきたいと思いますが、実は、今回の首脳会談に先立ちまして、
ロシア国内ではデモが起きていたんですね。領土返還に反対するデモなんですが、参加した人たちは「尊い犠牲を払って得た領土をなぜ返すのか?」と主張していました。大使、領土問題を含む平和条約締結の交渉を進めていくことになると思うんですが、プーチン大統領はこうしたロシアの世論にどう向き向き合おうとしていると考えなのでしょうか?

ガルージン大使
まずですね、いろんな国の政府は国民の声を無視するのではなくて、むしろ、その声を聞いて政策を進めているのは常識であります。我々もそうです。そして、今、皆さんがご覧になった映像からしますと、やっぱりロシア国民にとって日本との平和条約の問題がいかに敏感な問題であるかということを改めて物語っている映像であります。そして、ロシアの指導部は、国民の世論に向き合うというよりも、それを尊敬していますよ。そして、対話を進めています。例えば、安倍総理との会談後の記者会見で、プーチン大統領はとても明確にロシアの国民に会談の成果、そして日ロ関係の見通しについて説明しています。あるいは昨年末の大統領の記者会見でも同じく説明しています。そして、双方にとって受け入れ可能な解決策は、どんなものであるかとお聞きになりましたが、それもまさに交渉次第ですよ。そして、将来的に言えば交渉次第ですけども、今、プーチン大統領が22日の記者会見で明確に言っていますように、これから何が優先課題であるかと言うと、それはまさに環境作りです。両国民にとって納得のいく解決策に到達するには、やっぱり良好な環境作りが必要であるということをプーチン大統領が改めて強調しました。

山口
まさに、そうですよね。これは確か、2012年の、朝日新聞の論説主筆だった若宮さんがプーチンさんにインタビューしたときに、プーチンさんが「引き分けのようなものが必要なんだと。それは両国にとって受け入れ可能な譲歩すべきなんだ」と明確におっしゃっているんです。その上で「それは何かと言えば要は経済中心の相互の協力。これを進めていって、領土問題が二次的な問題になるくらいに経済の相互の協力を進めるべきなんだ」というふうに明確におっしゃっているんですよね。だから、プーチンさんの中では経済の協力をしっかり進めるという強い思いがあって、そこは大使も感じてらっしゃるところあると思うんですが、いかがでしょうか?

ガルージン大使
今、引用されましたプーチン大統領の発言は十分周到な発言でありますし、十分明確な発言であります。そして、22日の記者会見でも、プーチン大統領はまず環境作りについて言いました。その環境作りの概念について言うと、繰り返しになりますけれども、この南クリル諸島に対するロシアの主権の合法性を含めての日本側による第二次世界大戦の結果の承認。そして、この我々の安全保障上の懸念の解消、そして、さらに経済だけでないんですけども、経済協力を含めて、日ロ関係の幅広い発展であると。それは経済もそうですし、そしてもう一つ重要なポイントは、国際問題を解決する上での日ロ間の協力です。そういう協力には良い例もあるんですが、例えば情報安全とか、宇宙における軍拡競争の防止とかあるいは、ナチスイデオロギーとの戦いとか。そういう、ロシアがイニシアチブを出している重要な国際問題についてまだまだ日本との協力が不十分であり、協力する余地があると思います。

山口
そうですね。今、おっしゃったような、いろいろな分野での日本とロシアの協力は、確かに、たくさん必要な面があると思います。共同発表では日本との経済協力が強調されていました。どのような内容で一致したのか、確認します。

大木
はい、こちらになります。
●4島での共同経済活動の早期実現。
●今後数年で日ロ間の貿易を1.5倍にする。
●2023年には両国間の往来者を40万人まで倍増する。
さらに4島での共同経済活動の具体的な内容としては、海産物の養殖、風力発電、ゴミの減量、温室野菜栽培、ツアーの開発などが上げられました。

山口
というような具体的な内容が挙げられているわけですけども、今どうしてもこの焦点になるのが平和条約を締結した後、日ソ共同宣言に基づくと歯舞・色丹を日本に引き渡す、という話が出てきます。そこで色丹島のことを確認しておきたいんですが、色丹島には今もロシアの方が2000人以上住んでいるとされています。川村さん、こうした色丹島に住むロシアの方たちとの共生が大きなテーマになってきますよね。

川村
それが一番大きいですよね。やはり先ほどの引き分け論が出ましたけど、引き分け論というのは日本の今の政府の考え方は平和条約を結ぶっていうことは、そこで国境線、そして、主権そのものがきちっと整理される。それが条約の中で書き込まれるということですから、一緒に、じゃあ歯舞・色丹が日本の主権のもとで帰ってくる、引き渡されたときに、色丹に住んでいる今のロシア人の人たちとどういう風に共生していくのか。いわば、日本の人でそちらに行きたいという人と、どうやって共存して生活していくことができるのか。追い出すわけにはいかないというのは当たり前のことですから。2917人、ロシアの方が住んでいますけど。そうなると、結果的にどういう風な投資をすればいいか、環境を作ればいいか。ロシアの人たちも、こういう形だったら、ここは住んでいられないから、どこかウラジオストクに戻るというような人が出てくると良くないねということで、大使にお聞きしたいのは、一つ、これは、まだ公にはなっていないんですけど、私があえてつかんでいる情報で言えば、将来的に、いま色丹に住んでいるロシア人の人たちは日本に主権が帰ってきた場合、日本の国籍もロシアの国籍も自由に選んでください、二重国籍というようなことが話し合われているのか、その辺はいかがですか?

ガルージン大使
まずですね、今、皆さんのお話を聞いて、皆さん方がとても先走りしておられるんじゃないかという印象がぬぐえないのです。まず出発点から始めましょう。皆さん方は、よくシンガポール合意についておっしゃっているのは、1956年の日ソ共同宣言を基礎にして交渉を加速化させましょうという形で紹介しています。それは正しいです。それがシンガポール合意の中身であります。だが、出発点としたいのは、この日ソ共同宣言の中に、どちらかと言うと、皆さん方は2島に関するこの共同宣言の表現に、どうもこだわってらっしゃるという感じがしますけれども、だが、日ソ共同宣言にはいろんな条項があるんですよ。例えば、第1条を見ますとね、日ソ間には平和が回復され、善隣友好関係が回復されるとなっています。それは第1条です。もしこの日ロ関係の法的基盤である日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速化させるという風になれば、じゃあ第1条はどうしましょうか、と。善隣友好関係の発展ということなんですが、例えばいま残念ながらそう言わざるを得ないんですけど、今、日本は米国が中心になっています対ロ制裁に加担しています。それは第1条にあります善隣友好関係の精神に合致しているのでしょうか?そうではないんじゃないかと思います。ですから、もし日ソ共同宣言を基礎にするならば、その特定の部分ではなくて、文章全体を基礎にしておかないといけないんじゃないかと私は思っております。まず、この歯舞と色丹に関する宣言の表現、明記について具体的な形で議論する前にですね、やっぱり日ロ関係全体がどうなるという観点から環境作りを進めないといけない。

山口
そういうことですね。日本とロシアの善隣関係ですね。そこが根底にないとだめなんだと、大使はおっしゃっているわけですよね。

ガルージン大使
日ロ関係全体がどうなるかという観点から環境作りを進めないといけないと思いますね。

■「ロシア国民の感情にも理解を」

山口
今、大使から日本とロシアの友好関係、善隣関係が根底になきゃダメなんだとお話がありました。その上で伺いたいんですが、山田さんは色丹島にも行っています、ここまでの話、どんなふうに聞いてらっしゃいますか?

山田
実際、確かに日本人はどうしても北方4島の問題に目を向けてしまっています。島だけの問題じゃなくて、北方4島の周辺の海の問題、海洋、漁業の問題を中心に出ていますし、さらに、開発が始まる北極海航路、経済交流の問題も含めて、北方4島は重要で、色丹島というのは日本にとっても、北の海を見ていく中で重要な場所になってこようかと思います、自然も豊かで、私も色丹島に2回行っているんですけど、新しい水産加工工場もできて、若い人たちをだいぶロシアは移住させているようにも感じています。ロシアとしても国境警備庁の拠点が置かれている安全保障上一つのキーポイントになる地域だと感じています。

山口
領土問題について話を進めていこうと思うんですね。ロシア側は国後島や択捉島などを南クリル諸島と呼び、第二次世界大戦で得たロシアの領土としています。日本は北方領土4島を日本固有の領土としています。第二次大戦に関しては、ロシア側はヤルタ協定に基づいて参戦した、という立場ですが、日本は「ソ連が中立条約を破棄して対日参戦」したという立場です。大使からお話が出ていますけども、ロシア側、日本側、開きがあるんですね。隔たりを埋めるべく交渉が必要になると思うんですが、一方で、大使は、日本の様々な方とも交流されていて、根室でも北方4島から帰還された日本の方の通訳もされて、北方領土に住んでいた方の気持ちも理解されている方だと思います、その中で日本の国民が受け入れ可能な線はどのあたりだと思いますか?

ガルージン大使
今のようなやり取りをして、色丹が返ってくるならば、という言い方なんですが、本当に我々としては、こういう形で交渉の結果を先行してしまい、前もって決めつけて相手側に圧力をかけるためのやり方としては、私どもは受けとめていまして、それは交渉の進展に繋がらないというふうに思います。それをハッキリ言っています、日本側に向かって。それがまず一つ。もう一つは、我々は日本側との交渉の中で、主権の問題を議論していないということをまず断っておきたいと思います。話題になっているのは環境作りですよ、まず。そして、今のご質問にいきます。歴史認識の質問なんですが、国民感情につきましてなんですが、それは大変重要な側面だと思います。ロシア側は全体として、4島に関わる元島民をはじめとする日本国民の気持ちや感情を十分尊敬しているというふうに私は言いたいと思います。それはどう言う形で表れているかと言うと、4島における墓参りの訪問に同意していますし、最近元島民の方々お年寄りの方ばかりですから飛行機を使っての、お墓参りにも同意しています。さらに、ビザなし交流にも同意しています。さらに、4島の水域における日本の漁民による伝統的な漁にも同意しています。さらに、随分前の話ですけども、貝殻島周辺の昆布漁にも日本の漁民による昆布漁にも同意しています。つまり、十分、日本国民の4島に関する感情を私どもは尊敬しています。だが他方ですね、日本側にも4島に関わる、南クリルに関わるロシア国民の感情も、もっと認識し理解し尊敬して頂きたいんですよ、本当は。例えば、それはどういう意味かと言うと、けさ、ある他社の政治討論の番組を見ましたが、その中である日本の政治家は、ロシアが歴史を歪めているとおっしゃいましたが、なぜ歪めているかと言うと、あたかもソ連が一方的に中立条約を破って法律に違反して対日参戦したというような言い方だと思いますけど、だが、私はですね、歴史について言えば、どういうことをロシア国民が考えているかということを言いたいと思います。つまり、南クリルが第二次世界大戦の大きな流れの中でソ連、ロシア領になったのですね。しかもそれは連合国の合意に基づくものですし、残念ながら日本では忘れられているのは、あの当時の戦争で、日本はあの当時の最悪の政権であったナチスドイツの同盟国であったことです。

山口
日本とロシアが歩み寄るには日本としてもロシアの方々の感情に配慮するということですね。

ガルージン大使
歴史認識について、一方的じゃなくて包括的に歴史を見ていかなくてはならないと思います。あの当時、日本はナチスドイツの同盟国であって、だからこそ、ソ連、米国、英国連合国が対日参戦について合意したんです。ですから、その点を日本の皆さんは、どちらかというと忘れがちという感じがします。少なくともあまり対外的に言わないですね。ですからナチスドイツに戦って勝利を収めるのに、ソ連国民は2700万人の犠牲者を出したんです。

大木
大使、領土交渉の話に行くまでの環境作りどのぐらい時間かかりそうですか?

ガルージン大使
それは交渉次第です、それは。今の段階で何かの期限を設けても意味がないと思います。

大木
外交官のとしての勘は?

ガルージン大使
着実に仕事をしていかなければならないですね、外交官という人は、そういうような具体的なことは言いませんよ。

山口
どうもありがとうございました。