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#254

熊谷6人連続殺害 “警察の対応を問う”遺族 控訴審が結審

2015年に埼玉県熊谷市で起きた連続殺人事件、熊谷6人殺害事件で、妻と2人の娘の命を奪われた加藤裕希さんは、当時の警察の対応を問い、裁判を起こしています。その控訴審が結審し、判決は6月27日になりました。2023年3月12日『BS朝日 日曜スクープ』は、最初の殺人事件が起きた際、「連続発生の恐れは認められなかった」とする埼玉県警側の主張を取り上げ、控訴審の争点を特集しました。

3月12日の放送内容は動画でもご覧になっていただけます。

⇒ 【熊谷6人殺害その後】〝警察の対応を問う〟控訴審結審…判決は6月

テレ朝news
ANNnewsCH

裁判を継続する加藤さんへの支援を募るホームページはこちらです。

⇒ 熊谷6人連続殺人事件 国賠訴訟…目指す逆転勝訴

これまでの「熊谷6人殺害その後」の特集は、ページの最後でご案内しています。

■最初の殺人事件で「参考人」手配しても“注意喚起は不十分”

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「まだ次回の判決まであるんですけど、すごい気持ち的にもう苦しい気持ちで、やっぱり気持ちが落ち着かないですね」

加藤さんが当時の埼玉県警の対応を問う裁判の控訴審、第3回口頭弁論が3月10日に行われました。

次女・春花さん(当時6歳 2014年7月)

「暗唱俳句〝古池や 蛙飛び込む 水の音〟松尾芭蕉
〝五月雨を 集めて早し 最上川〟松尾芭蕉
〝菜の花や月は東に日は西に〟 与謝蕪村」

加藤さんの妻・美和子さんが見守る中、リビングで俳句の暗唱に励んでいた次女の春花さん。

自宅を新築してから1年を迎えた2014年の年末、玄関先で加藤さんが撮影した写真には、仲睦まじい家族の姿がありました。

その翌年、2015年9月に埼玉県熊谷市の住宅街で6人が相次ぎ犠牲となった連続殺人事件。

9月13日、民家の敷地に侵入したとして、熊谷警察署で聴取されていたジョナタン受刑者が逃走。その翌日、50歳代の夫婦が殺害され、16日には84歳の女性の遺体が発見。さらに加藤さんの妻と2人の娘が、相次いで犠牲となりました。

ペルー国籍の犯人、ジョナタン受刑者は死刑判決が取り消されて、無期懲役が確定しています。

加藤さんは埼玉県を相手取り裁判を起こしました。最初の殺人事件が起きた際のことです。埼玉県警は熊谷署から逃走中だったジョナタン受刑者を「参考人」として全国に手配していました。しかし、県警はジョナタン受刑者の逃走については、加藤さんの事件が起きるまで明らかにしていません。防災無線などを用いて注意を呼びかけることもありませんでした。

埼玉県警は、「犯罪情報官NEWS」として、メールでの防犯情報を配信しています。しかし、田﨑さん夫婦殺害事件が起きた9月14日から、加藤さんの家族が襲撃される9月16日までの2日間、熊谷市内の防犯情報として配信されたのは、車上ねらいと振り込め詐欺の2件だけでした。殺人事件の発生には、全く言及しておらず、加藤さん側の弁護士は「著しく不自然」と指摘しています。

■“連続発生の可能性は認めることが…”県警側主張の理由

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「やはり私の中では埼玉県警が、やっぱり真実を述べてないというところの結論にしか達しないんですよね」

〝最初の殺人事件が起きた後、埼玉県警の周囲の住民への注意喚起が不十分だった〟とする加藤さんの訴え。去年4月の1審判決は、「埼玉県警の対応には問題がなかった」として、加藤さんの訴えを退けていました。これに対して控訴審で加藤さん側が改めて問題視したのは、〝最初の殺人事件が起きても連続発生の可能性を認めることができなかった〟とする埼玉県警の主張です。

加藤裕希さんの代理人・髙橋正人弁護士

「何を言っているんだと、よく平気でこんなことを言うもんだと思いましたね」

控訴審での加藤さん側の追及に対して埼玉県警側は、「通り魔事件や複数の財産家を狙った計画的強盗殺人事件と目される兆候が認められない限り、連続発生の可能性を認めることはできない」と回答したのです。

加藤裕希さんの代理人・髙橋正人弁護士

「こんな複数の財産家を狙った計画的強盗殺人事件と目される場合しか、屋内で(殺人事件が)1件起きた時は連続発生が予見されないと言うんですよ。こんな経験則なんかないですよ、全然。」

「付近住民に対して防災無線とか『犯罪情報官NEWS』で、ちゃんと通告しなさいと言っているだけのことなのに、この(県警側の)反論は、『そんなことをしたら日本全国の警察官を熊谷の所に集めなきゃいけない』とか、『日本人全員が一歩も外に出られなくなる』なんて反論するんですよ。」

「こんなこと本当に裁判官が認めるのかなと私は思うんですよ」

当時の県警の対応を問う裁判の控訴審は結審となり、判決の言い渡しは6月27日に決まりました。

■事件現場となった自宅に住み続ける意味

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「ごく普通の平凡な家庭ではありましたが、笑ったり、泣いたり、怒ったり、時に褒めたりと、今となっては本当にその平凡な家庭がすごい幸せだったんだなと思える、日々を暮らしていたんだなと今一度そう思いました。」

2014年の年末に、自宅前で加藤さんが撮影した家族の写真。これは加藤さんにとって貴重な写真だと言います。

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「妻が乗っていた車が買い替えということで、ちょうど家族、特に妻の美和子と子供が写っている写真があまりなかったので、車のお別れと同時に1枚写真を撮ろうよということで」

家族との幸せな思い出が残る自宅は、妻と2人の娘が犠牲となった場所でもあります。加藤さんは、今もなお住宅ローンを支払いつつ自宅に住み続けています。

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「確かに今現在もここの自宅に住むということは色々な思い出がよみがえって辛いんですけど、その前にやはり帰ってくる場所が3人にちゃんとあるんだというのを、辛い中でもやっぱりそういう思いを、自分の中で思って今住んでいます」

家族4人での暮らしが一変してしまった事件から8年。加藤さんの願いは…。

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん(50)

「県警にやはり亡くなった3人に対してきちんと向き合って謝ってほしい。でないと、報われないと私は思っているんですよね。」

■「我々も被害者になる可能性…我がこととして裁判を見守りたい」

上山

裁判所は住民の安心と安全にどう向き合うのでしょうか。2015年9月に起きた「熊谷6人殺害事件」のいきさつ、改めて確認します。

菅原

2015年9月13日にペルー人のジョナタン受刑者が埼玉県警の熊谷警察署から逃走したところから事件は始まっています。熊谷市内で14日に田﨑稔さんと美佐枝さん夫妻を殺害。15日から16日にかけて白石和代さんを殺害、さらに、加藤美和子さんと長女の美咲さん、次女の春花さんの3人を殺害した後に、身柄を拘束されたという事件です。

上山

当時の警察の対応を問う裁判の控訴審は結審となり、判決の言い渡しが6月27日と決まりました。10日に行われた裁判後、加藤さんはツイッターで心情を吐露していました。

「今年に入り心身共に疲れ心に余裕が無くなりました。苦しみ悲しみを堪えるのが当たり前になり大丈夫なふりをしていた自分がいました。刑事裁判からですが人を好きになる事も少しずつ出来なくなり 建前、保身の社会にも疲れました。弱音を吐いてごめんなさい。」

加藤さんは精神的な負担から、この2カ月近く休職していて現在、復職を検討しているといいます。木内さんは、この裁判の意義をどのように見ていますか?

木内

加藤さんの心の傷は非常に癒えていないことが分かりますし、それは非常に気の毒だと思います。こういった事件は我々も被害者になる可能性があるので我がこととして、裁判を見守っていく必要もあるのかなと思います。

やはり行政として人の命を守るのが重要な役割なので、裁判を通じていろんな問題点を浮き彫りにさせて、より住民に危険を知らせる、それを通じて命を守る、こういう取り組みが非常に強化されていくことを願っています。

上山

住民に危険を知らせるという中で、埼玉県警側から、あまり危険を知らせすぎると、犯人が捕まるまでに日本国民が一歩も外に出られない状況が近くなるという反論もありましたが、そんなことは国民としては思っていないですよね。

木内

(県警側の主張は)極端で、納得感がないです。

(2023年3月12日放送)